──────ノイズ視点──────
そこからしばらく思い出話にふけているとコンコン、と、ノックする音が聞こえる。めめさんが俺にアイコンタクトで「入れてもいいか」と聞いてきたので、俺は了承する。
「どーぞー。」
めめさんがそう言いながらドアを開けると、そこに居たのは──────八幡さんと呼ばれる人物であった。なぜだか着ているチャイナ服のようなものに興味はあったが、聞くことは無かった。
「どうかしたんですか?」
「…へ〜。」
八幡宮は俺の存在を認めるや否や目を細くし、口元は少し強めに閉じられる。そして、少し考えた素振りをしてから声を発する。
「復活おめでとうございます。勇者様。」
その言い方には煽りと怒り、そして疑念…様々な感情が入り乱れた声音に、敵意を滲ませた視線。…明らかに俺に恨みがあるのではないか、そう思わせるには十分な情報であった。
「…俺は勇者じゃないですけど。」
「それは無理がある。明らかに魔力量と視線、話し方が違う。化け物にそっくりだ。」
「人のことを化け物呼びするのは良くないですよ?」
「事実でしょ?人間のくせに人外を殲滅した化け物。化け物は化け物にしか倒せないんだから。」
酷い言われ方だ。別になんとも思わないが、本当にいえだったらどうしていたのか。そもそも話し方とかでバレるものなのだろうか。そんなもの、時と共に忘れるようなことではないか。疑問は増え続けるばかりだが、とりあえずわかるのが明らかに敵意を放たれている事だ。
「こいつが…こいつのせいで私は…めめを失ったの?」
お前のせいかよ、と思いめめさんの方に視線を向ければめめさんは首を横に振り、違うと否定する。じゃあなぜ龍に敵意を向けられなければならないのか。こういうやつと敵対するのはなかなかに面倒くさい。何とかしたいものだが。
「あの、八幡さん?俺、なんのことかよくわからないですけど。」
「…あぁ、そう。勇者様はそんが細かいことすら気にしてないんですね〜。色んな人を誘惑して騙してきたんじゃないですか?」
「するわけが無い。俺は他人に時間を使うほどの善人じゃない。」
俺がそう言い切れば八幡さんは興味深げに目を細め、改めて俺をまじまじと見る。見たとしても姿はいえのであるのだから別に構わない。それにこの見た目はなかなかに気に入っているし、馴染んでいる。俺に似ているからだろうが。
「ふーん。勇者に似つかない性格してるんだ。そういうのは好きだよ?…めめを奪わなければ、ね。」
「八幡さん。私は別に…八幡さんが覚えている記憶を私は持っていないんですけど…矛盾してませんか?」
めめさんがそう言うと、八幡さんはハハッと乾いた笑いをしてから
「そうだろうね。めめさんは忘れちゃったんだもん。私だけしか覚えていない。ねぇ?なんで忘れたの?」
八幡さんの言葉は口調が安定していない。自身の口調を保っていられないほど精神が不安定であった。しかし、その口調は強い憎しみと愛情が込められている。狂気的なものだった。ここまでの愛が与えられているなら幸せだ、とも俺は考えたが、めめさんはそうでも無いらしい。別に好意なんて貰っておいて損は無いと思うが。
「知らないものは知らないですから。なんなんですか、ほんとに。」
めめさんの口調は八幡さんとは反対に安定し、そして、呆れと怒気を含んでいる。なぜ、俺のいる場でこんなことをやるのか。どうでもいい話に俺を巻き込まないで欲しいものだ。そう、思っているのに。これが本心のはずなのだが、これを止めれるなら止めないと、というよく分からない考えも出てくる。この気持ちは嘘偽りのない気もする。おそらくいえの気持ちが浮き出てきたのだろう。あんなに生気を吸われているのに他人を思いやるなんてどうかしいる。
「俺のいるところで痴話喧嘩やめてくれます?こういうのもういいんで。」
俺がそうはっきりと言えばこれ以上言う気になれないのか、八幡さんは俺を1目見てからガチャりと音を立てて病室から離れていく。俺がいる場所でこんな話をするなんて、意味がわからない。
「…愛されてますね〜。」
俺がそう言えばめめさんは
「こんな厄介な愛され方はごめんです。」
と、言い返す。何を言っているのだ、この死神は。愛を貰っておいてなお、いらないと豪語するのか。仲間という愛に固執しているくせに。八幡さんの愛と何が違うというのか。それとも、この時代ではあまり一般的に愛のカタチが決まっているのだろうか。よく分からない。貰えるだけありがたいものでは無いか。そう思うが、人それぞれなのだろう、と俺の考えを一蹴する思いが込み上げる。またしてもいえの思想だ。なかなかに難儀なものだなーと思いながら俺は少し、一眠りすることにした。
愛って、なんなのだろうか。
ここで切ります!10万ハート達成イラストは次回にさせてもらいます!!ちょっと時間が足りないので…!!今日ギリギリに書いてるので…!!
それでは!おつはる!
コメント
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勇者が普通の人間の心象を理解する日も近いか?