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ここは虎ノ門で最近話題のパン屋「スリーミリオンベーカリー」。
一番人気の商品はカレーパン。小麦の豊かな風味が感じられる生地と、スパイスが効いていながら深みのあるカレーフィリングが絶妙にマッチする逸品である。
我々取材班はその美味しさの秘密に迫った。
「むーしゃむーしゃ……ゆぐぐっっ! ……むーしゃむーしゃ」
ここはカレーフィリング製造部門。
中央の奇妙なテーブルに固定されたそんしが、ゆっくりと一心不乱に原料を頬張っていく。カレーフィリングの素材には玉ねぎ、人参やじゃがいもといった野菜と、10種類のスパイスを独自配合したオリジナルのカレー粉を使うそうだ。
「むーしゃむーしゃ…… ゆげほっ! げほっ!! ぺーろぺーろ……むーしゃむーしゃ……」
スパイスのせいか咳き込んだそんしは、バターを舐めて喉を癒やし再び原料を頬張り続ける。このバターがカレーフィリングにさらなるなめらかさとコクを加えるのだろう。
規定の量の原料をひと通り平らげた後、しばらくするとそんしのむっちりふくよかぼでぃがプルプルと震え出した。それを見た岩村氏(仮名)はすかさずそんしのあにゃるの下にボウルを添えて待機する。
「ゆゆーん!!! うんうんが出りゅ!出りゅよ!! じょうきゅうこくみんであるとおしょくのこうきなあにゃるさんから!! いま!! すーぱーうんうんたいむっ!! はじまるよおおお!!!!
あああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!!(ブリブリブリブリュリュリュリュリュリュ!!!!!!ブツチチブブブチチチチブリリイリブブブブゥゥゥゥッッッ!!!!!!!)」
絶叫するそんしのあにゃるから、粘度の高いカレーフィリングがボドボドとボウルに落ちていく。
折角なので出来立てのカレーフィリングを試食させていただいたが、意外にも苦味やすえた臭いが漂う不思議な味わいであった。
「カレーだけでは少しクセが強いんです。でもあの生地と合わせると、完璧な味わいになるんですよ」
暗室の片隅には、エイナスストッパー10であにゃるに栓をしたひろしがいる。その腹部はあたかもにんっしんっしたように膨れ上がり、ひろしはその腹部を慈しむようにさすっている。まるで出産を控えたにんぷさんのように……。
コーンやニラを丁寧に取り除いた後、ひろしのあにゃるからしゅっさんっ!された生地で、そんしのあにゃるから出りゅ!したカレーフィリングを包んで揚げていく。
こうして出来上がったカレーパンはすぐさま店頭に並んだが、ものの数分で完売してしまった。
ひとつひとつの素材に徹底的にこだわり、製造過程でもあらゆる手間暇を惜しまない。それこそが並んでも食べたくなるパンを生み出す秘訣であるのは間違いないだろう。
オーナーである森氏は「スタッフの育成も大切です」と説く。
事実、森氏は今回の取材中にもスタッフへの教育を怠らなかった。そんしがうんうんをする前に過度な自分語りをしたときは、そんしのほっぺたをすりこぎで執拗に殴る指導を行っていた。
障害者雇用にも熱心で、カレー製造担当のそんしのようなゆっくりでも「しっかり教育すれば問題はない」として別け隔てなく雇用している。
こうした社会貢献にも取り組む姿勢は、森氏の情熱の賜物と言って良いだろう。
常に行列の絶えない人気店ゆえ、気軽に買いに行く、というのは難しいかもしれない。
しかし一口噛みしめれば、並んでいた時間なんてきっと忘れてしまうほどの、至福のひとときを味わえる。
「スリーミリオンベーカリー」はパン好きにもそうでない人にもお勧めできる、まさに「名店」と呼ぶにふさわしいベーカリーであった。