「神様っ、助けて。」
泣いている幽霊少女が僕の神域に訪ねてきた。
中学生の制服を着ているから中学生だろう。
三つ編みの可愛らしい中学生の少女の幽霊だ。
「どうしたんだい?」
「私を生き返らせて!お願いします。なんでもしますから!」
「それは流石にできないよ。」
いくらなんでも死んだ人間を生き返らせることなんて僕にできるわけがない。
「そ、そんな…神様なんでしょ!?お願いします!なんでもしますから!」
「僕は一応ここの山の土地神だけど、無理なものは無理だよ。」
「じゃあ、せめて最後にパパとママ合わせて!お願いします。このままじゃ私どこにも行けないの!」
「まずは話を聞かせて。」
少女が話すには、ある日友達と遊んで帰りが遅くなってしまった。
その時に両親からすごく怒られて、両親と喧嘩をして家を飛び出したそうだ。
行く当てもなく川の近くを歩いていたら、足を滑らせて溺れて死んでしまったらしい。
「私、最後にパパとママに大嫌い!って言って飛び出してきたの。最後にパパとママに言った言葉が大嫌いになるなんて…」
「なるほどね。それはかわいそうに。」
「神様、お願い。私、パパとママともう一度話がしたい!」
「わかった。じゃあ、今から行こう。君の両親はどこにいるんだい?」
「今日は私の葬式をしているの。」
「じゃあ、とりあえずそこに行ってみよう。」
僕と護衛の紫、その幽霊少女はいつもの移動する時の雲のあやかしに乗り、その葬式場に向かった。
「あぁ、あの時追いかけていれば…!」「いや、俺が悪いんだ。あんなに怒ったりしたから。お前は悪くない!」
「パパ!ママ!」
葬式にこの子の両親らしき人達がいた。母親は膝を突き大泣きしていて、父親も母親を慰めてはいるが自分も涙を流し目を腫らしていた。
「君の両親は君の姿や声を聞くことはできないよ。」
ちなみに僕は、土地神の力を使って普通の人には見えないようになっている。
「じゃあ、どうやって!?」
幽霊少女は泣きながら聞いてくる。
「外の世界では君の存在を君の両親に見せてあげることは僕の力ではまだできない。でも、僕の神域の中でなら、君と両親を会わせてあげることができる。」
「じゃあ、もう一度パパとママと話ができるのね!」
「あぁ。君の両親を僕の神域に招待しよう。」
僕たちは葬式が終わり、その幽霊少女の両親が帰るのを待った。
「こんばんわ。」
僕は幽霊少女の家の前で両親を出迎えた。
もちろん、幽霊少女の両親にも見えるようになっているが、白い仮面に白い袴を着て、腰に刀を刺しているので、怪しさマックスだが…
「ど、どちら様で?」
母親がキョトンとした顔でこちらを見る。
「娘さんに頼まれましてね。もう一度両親と話がしたいと。」
「え!?佳奈ともう一度話ができるんですか!?」
この子、佳奈って言うんだ。そういえば名前聞いてなかった。
「誰だお前!ふざけるのもいい加減にしろ!胡散臭い奴め!傷ついている家族から金を取って商売しようとするなんて!帰ってくれ!!」
母親はすんなりと信じたが、父親の方はインチキ霊媒師の霊感商法のだと思ったようで激昂している。
まぁ、こんな見た目じゃ疑われてもしょうがないけど…
「いえいえ、お代はいただきませんよ。ただ娘さんを助けてあげたいだけですから。」
「どう言うことだ。お前はどこの誰なんだ?」
「僕はこの近くの土地の神です。あなたたちがもう一度話すことができる機会を与えます。」
「神だって?」
「はい!」
「証拠はあるのか?お前が神だって証拠は?」
「んー、じゃあ、何か佳奈さんについて質問してください。僕が佳奈さんに聞いて答えますので。」
「わかった、じゃあ、佳奈の好きな料理は?」
「ハンバーグ。チーズが乗ったやつ。」
「チーズが乗ったハンバーグ。」
「じゃあ、この間旅行に行った場所は?そこでなにをした?」
「東京に行ってスカイツリーに登った。パパ顔真っ青にして怖がってたね。」
「東京に行ってスカイツリーに登った。お父さん顔真っ青にして怖がってたんですか?」
「じ、じゃあ、この間俺にくれた誕生日プレゼントは?」
父親の目に涙が溜まっている。母親はすでに泣いてしまっている。
「青と緑と赤色の三つ編みのミサンガ。いつも右足首につけてくれてありがとね。」
「青と緑と赤色の三つ編みのミサンガ。いつも右足首に付けているんですね。いつもつけてくれてありがとうと言っています。」
「本当に。本当に佳奈が近くにいるんですか?」
「はい。僕の隣にいますよ。」
「佳奈!」
母親が膝をついて泣き出した。父親も大泣きしている。
「僕と一緒に来てくれますか?」
「えぇ!佳奈と話ができるなら、俺たちはどこへでも行きます!」
「では、少し眠ってください。紫。」
そう言うと紫に幽霊少女の両親を眠らせるように右手を上げて合図を出す。
「はい。シン様。」
紫は幽霊少女の両親に幻術をかけ、眠らせた。
「パパ!ママ!」
「眠っただけだから大丈夫だよ。」
僕たちは幽霊少女の両親を雲のあやかしに乗せて神域に帰還した。
「んっ、ここは?」
「あ、あなた気がついた?ここってさっき神様が言ってた神域なのかしら?」
そこは立派な社が立っている白い空間だった。なぜか狛犬が普通置いてある所には金魚か鯉の石像が狛犬の代わりに置いてある。
「パパ!ママ!」
「「佳奈!!」」
親子三人で抱きしめ合う。
「まさか本当にもう一度会えるなんて。」「あぁ、佳奈、あなたって子は。」
「パパ、ママごめん!私、足を滑らせて川に落ちて死んじゃったの。泳ごうと思ったけど、焦って水を飲んでしまったりしてうまく泳げなくて、それで…」
「怖かったなぁ、苦しかったなぁ。かわいそうに。」
父親がそう言って強く抱きしめる。
「パパ、ママ。大嫌いなんていってごめんなさい。あの時怒ったのだって私を心配して怒ってくれたのに。本当はパパとママのこと大好きだよ!」
「あぁ、そんなことわかってるさ。」「ええ、そんなことわかってるわ。」
「パパ、ママ。いっぱい愛してくれてありがとう。パパとママより先に死んじゃってごめんね。」
佳奈はそう言うと、光の粒になって消え始める。
「佳奈!待ってくれ!行かないでくれ!」
「佳奈っ!戻ってきてまたママとパパと暮らしましょう!行かないで!佳奈!」
「ありがとう。パパ、ママ。でも、もう行かないと行けないみたい。神様。もう一度パパとママと合わせてくれてありがとうございます。パパ!ママ!大好きだよ!」
そう言うと光の粒となって幽霊少女の佳奈ちゃんは消えていった。
「「佳奈ーー!!!」」
その後、幽霊少女の両親は眠らせて、家の玄関の前に座らせておいた。
夢だったと思わないように、「佳奈ちゃんは無事成仏できましたよ。 神より」と言う置き手紙を置いておいた。
ーとてもいい仕事をしましたねー
うん。でも、ちゃんと神様としてうまくできてるかな?
ー迷えるものに慈悲と救いを。あなたは十分に神としての仕事をしていますよー
そうだといいな。佳奈ちゃんが成仏できてよかったよ。若くして亡くなってしまったのはかわいそうだけど、最後とてもいい顔をして成仏していったね。
ーええ。あなたが助けたんですよ。他でもないあなたが。あなたはもうすでに人を助けることができる力を持っています。これからも頑張ってくださいね。期待していますよー
うん。僕は困っている人みんなを助けたい!
ーえぇ、その気持ちを忘れないでください。…だから私はあなたを選んだのですからー
えっ?霞声が小さくて最後の方聞こえなかったよ。なんでいったの?
ーいえ。なんでもありませんー
えぇ、なんだよー。気になるじゃん。
ーふふっー
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