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桜は落ち、下に絨毯みたいに花びらが溜まっている。昨日は雨だったから、へばりついて地面と一体化しているものもあった。
❤️「片付けめんどくさそ…。」
そんなことをつぶやきながら、向かうのは部活見学。
うちは少し特殊らしく、今日明日の貴重な休日を使って1年は部活見学に行き、月曜に必ず入部届を出す。どこかには絶対所属。
去年まではしっかり平日に時間が設けられたらしいけど…今年は、その週に雨が被りそうなため、外部活と一緒に屋内の部活も雨が降らない休日に体験することになったらしい。
❤️「つっても…俺、見学誘える人いねぇよっ…。究極ボッチすぎる。」
現在、俺は教室のはじっこでボッチ飯状態を入学式の日を含め2日連続キープしている。つまり、高校生活…現在ずっとボッチ飯中。
❤️「そもそもっ、人に話しかけられるやつがおかしいっ陽キャがよぉぉッッ!!」
ムッと頬を膨らませながら、また誰もいない通学路をひとりトボトボと歩いていく。
?「なぁ、お前…新入生?」
❤️「へっ…?」
突然背後から声をかけられ、つい間抜けな声が出る。くるりと後を振り返ってみれば、現れたのは紫髪の男性。
俺よりは少しだけ背が高く、きっと先輩なんだろう。
お洒落に着崩した制服は、特徴的で目を引くオーラがある。
俺はすぐに俺の唯一の天性の才である、『人見知りコミュ障』を発動してしまい、相手の顔を見ることができない。
運動ができそう…運動部だろうか?そんなことを考える。
けれど、なんだか…聞き覚えのがあるような…。
❤️「ぁ…ぇ、ぇっと……そう、ですっ…。」
?「ふ〜ん…?どこいくん部活。」
❤️「き、キメテナクテっ……。」
視線をそらしながら、精一杯応える。…うそだ、本当はどこにいきたいかなんて決まっている。
あのとき見た、奥の部屋の先輩。アコギを抱える姿も、歌っている姿も。目を引く。
あのかっこいい姿に、俺は憧れを抱いている。そう、軽音楽部を見に行く。そう決まっている。俺の中では…。
?「…なら、俺の部活来いよ。」
❤️「ふぇっ…?」
?「うち、部員少なすぎて廃部しそうなんだわ。面貸すだけでいいから、頼む。」
少しだけ目線を上げ、彼の首元までをとらえる。さらに視線を上げ、少し上目遣いのような状態で、相手の顔を恐る恐るのぞき見た。
❤️「っ…ぁっ、軽音楽部のっ……」
💜「…まじ、覚えてくれてんの?笑」
❤️「っ……!!」
嬉しそうに笑う先輩の顔がかっこよくて、ついつい見つめてしまいそうになるのを堪え、顔をそらす。
❤️「み、みてた…とぃうかっ……き、きょうッ…いこうと、おもっててっ……。//」
💜「あれさっき…。笑」
❤️「ぇっと、とっ、咄嗟で……。」
💜「ふ〜ん?笑 …でも、ちょっと嬉しいな。笑」
❤️「ぇっ…?」
意味がよくわからず首を傾げると、先輩は気にしないくていいと首を振った。
💜「軽音楽部、行くんだろ?案内してやるから。来いよ。」
❤️「でも!…おれ、バンド組める自信なくてっ…でもっ一人で、ステージ立つのも嫌で……。」
そう、ブツブツとつぶやくようにこぼす。ネガティブモードに突入し、不安が一気に押し寄せた。
いつも、不安や心配事ができた時に独り言が多くなってしまう。
大体の人には、めんどくさいとか…考えすぎだとか。そんなことを言われて、離れていってしまうのがオチなのだが…。
その言葉の一つ一つを、先輩は丁寧に拾ってくれた。
💜「へいき、サポートしてやっから。」
そう述べては、強引に俺の腕を掴み連れて行かれる。それは、確かに強引だったけれど、優しい手つきで。
先輩の隣は、すっごく安心する。なんだか、自然と表情が緩んでしまうのだ。
…俺はすぐ、この先輩のことが好きになってしまった。
※ ※ ※
ここで待っていてほしいと言われ、少しの間1年の下駄箱の前で待つ。
休日だというのに、早めに登校してきた新しい制服に見を包んだ数人の新入生や、勧誘に全力を注ぐ先輩たちで廊下はあふれかえっていた。
熱気と騒音で、圧倒されてよろめいてしまう。先生たちも注意するどころか、一緒になって騒いだり、一生懸命に新入生を勧誘していたりする。
下駄箱付近だと、特に登校してきた朝イチの1年生を片っ端から誘いまくる先輩や先生がおおく、すぐに囲まれて逃げ出せなくなってしまう。
俺も声をかけられ、周りを大きな先輩やら先生やら大人数で囲まれ固められ、運動部の熱い勧誘を受ける羽目になる。
少し困っていたところを、また先輩が腕を掴み連れ出してくれた。
💜「まさかお前捕まえるとはな、運動できなさそうだろ。笑」
❤️「まぁ、できないっすけどっ……。」
💜「…俺ら軽音楽部が先声かけたんだから、横取りすんなや。」
そう言いながら、軽く頭を撫でてくる。まだ登校している新入生は少ないようで、こちらばかりを見てくる先輩やら先生やらを振り払い、廊下を2人で駆け抜け通り過ぎた。
※ ※ ※
階段を登ったその先。たどり着いたのは、4階の奥の方にある “ 物理室 ” と書かれた部屋だった。
教室の前には、二人の男性が何やら楽しそうに喋りながらたむろしている。片方が四角く大きなリュックのようなものを背負っていて、おそらく自分の楽器なんだろう。
…キーボードか何かだろうか?
❤️(俺、楽器なんもできないし…歌も歌えないけど…いいんかなっ?)
少し、不安に思いながら。俺は、先輩の方に視線を戻した。
どうやら、この教室は軽音楽部として使わせてもらっているらしく。先輩は、どこから取り出したのか…いや、先ほど俺を待たせているときに取りに行っていたのか。
二人の間に割って入り、物理室の鍵をガチャリと開け、なかにスタスタと慣れた様子で入っていった。
❤️「っ……。」
少し緊張したような、不安を感じ取ったような顔で辺りを見渡した。
?「いるまちゃん、遅いよぉ…鍵当番、もしかして忘れてたのぉ?」
💜「チゲぇよ。新人勧誘してたんだよ、ありがたく思えや。」
?「勧誘ってこのコ?…何するの??」
二人がじっとこちらの顔を見てくるので、反射的に先輩の後ろに隠れてしまう。
💜「…しらね。楽器経験ないんじゃね?…あんま見んな。」
?「わかったよぉ、ごめんね?」
❤️「ぇ、ぁっ…は、はぃ…。」
戸惑った様子で、そう答える。どうやら、先ほど教室の前にいた二人は先輩だったようで、仲良さそうに3人でしゃべりだしてしまった。
💜「……ま、いいから。中はいんぞ。…ほら、」
❤️「ぁ…ありがとうございます。」
ペコリと頭を下げながら、中へと入っていく。少し涼しい教室内。オドオドしながら、取り敢えず中へ入ったものの…どこへいけばいいのか分からず、その場に固まってしまう。
後ろからぞろぞろと続き、4人が教室の中へ入ってくる。
邪魔にならないように少しだけ中に入りながら、どうしようかとまた戸惑ってしまった。
💜「…ほら、こっち。」
そう言いながら、先輩がまた俺の腕を引いてくれる。やっぱり、この先輩の隣はなんだか安心する。
入り口から移動し窓際まで移動しては、少し前の方に座らされ、囲むように机を挟んで向こう側に先輩が二人、隣に腕を引く先輩が座る。
姿勢を正し、膝のうえに拳を置いて。相変わらず、緊張した様子でその場所に固まった。
💚「改めて…俺は “ 緑園 須知 ” 、この部活の副部長やってます。この部活は、去年ふたりといっしょにつくったんだよねぇ。笑」
自己紹介する先輩の顔を見てみると、なんだか見覚えがある。
けど、入学式くらいしか学校に来ていないはずなので…一体何処で、この先輩の顔を見たんだろう…。
❤️「…?ぁれ、たしか入学式のとき…」
💜「嗚呼。こいつ、生徒会長だからな。」
❤️「えぇっ!?」
💚「そんなに、すごいものじゃないよ?笑」
?「普通にすごいだろ、2年なのに生徒会長とか。」
💜「まぁ、この学校の3年やる気ねぇからな。受験が忙しいのもわかるけど…めんどいこと全部こっちに渡してくるだろ?」
💚「まぁまぁ、おかげで好き勝手やらせてもらってるし。笑」
なんだか、俺とは次元の違う話のようで…混乱しながらも、一応話に耳を傾けておく。
どうやら、この軽音楽部に所属しているたった3人の先輩たちは、
💚「ぇっと、部活来る前からピアノやってた…かな。よろしくね。じゃ、次らんらん。」
軽く自己紹介を終えると、隣の方を見る。隣にいたのは、前髪のピンクが印象的な先輩だった。
🩷「はじめまして、 “ 櫻庭 藍 ” です。一応、ここの部長してて…生徒会の方は、副会長。まぁ、ほぼすちに任せてるから仕事してねぇけど。あとは、4年くらいギターやってる。」
❤️「副会長…。」
💜「ほんと、次元チゲぇ奴らばっかだよな。」
そう言いながら、先輩が俺の方に腕を回し肩を組んでくる。少しだけ体重をかけられ、温もりがこちらにも伝わってくる。
俺が言うのも何だが、やっぱりこの先輩たちはみんな距離感がバグってる。
なんだか、少しドキドキしてしまうのが。よくわからず、俺は首を傾げた。
💚「ちょっと、後輩を肘掛けにしないでよ。…最後、いるまちゃんだよ?」
💜「へぇーへぇー、俺は “ 紫垣 いるま ” 。普通にここの部員。ん~…ちょっとだけギターさわれる。くらい?」
🩷「初めて知った。お前、作ったくせにほとんどこの部活に顔出してなかっただろ。」
💜「練習すんのに、家で十分だろ。」
💚「うん、元も子もないねぇ…?笑」
そんなことを言い合う先輩たちを、交互に見比べる。なんだか似てるな…なんて、ぼんやりと考えた。
💚「はいはい、すぐ二人ともいちゃつくんだから…。」
🩷「あ、そういうの大丈夫です。はい。」
💜「普通に◯すよ?」
❤️「ぇ、ぇっと……。」
止めたほうがいいのか、そのまま放置していいのか。
お互い冷たい…というか、雑な扱いをしている。そういうところが、このすち先輩のいう中の良いイチャイチャしてるところ…なのかな?なんて、思う。
俺はそんな空気に慣れておらず、どうしていいか分からないまま少しだけ戸惑った。
困った様子で挟まれていると、緑髪の…すち先輩のほうが俺に話しかけてくれる。こういう状況の対処に、慣れている様子だ。
💚「気にしなくていいよ。君も、やけどしちゃうからね。笑」
❤️「あ、はい。」
💜「変なこと吹き込むなや。」
💚「君、名前は?」
いるま先輩が話に入ってくるのも無視して、すち先輩は俺に問いかける。
❤️「ぇっと… “ 暇 奈津 ” です。楽器、何もやってなくて…ボイトレとかも……。バンドとか、そういう曲もあんまり聴かないんですけど…ぇっとっ。興味でっ……。」
💚「うんうんっ、興味持ってくれて嬉しいよ。笑 ありがと~ね?笑」
💜「やっぱ、俺の部活紹介が良かったんだな。」
🩷「お前は、反省しろ。まじで、何やってくれてんの…。人いないし。」
💜「俺の練習場所がなくなるだろ?」
🩷「こっちで練習してねぇだろ!!」
2人で教室の後の方で言い合いを始めてしまったので、こちらとしては苦笑いするしかない。
💚「ひまちゃんは、なにがしたいの…?」
❤️「ぇっ…。」
💚「ん~…楽器というか、分野というか?今、ここ部員俺たちしかいなくて。3人しかいなから、よかったら俺らといっしょにやらない?」
🩷「あ、それあり。ちょうど人足りてなかったしな。」
💚「そのせいで、ずっとちゃんと活動できてなかったしねぇ~?笑」
💜「ん、いいんじゃね?」
❤️「でもっ……足、引っ張っちゃいますしっ…。」
少し不安で、下を向く。また、荷物になるのはなんだか気が引ける。努力しないといけないという、プレッシャーが乗っかってくるのも嫌だ…。
けれど、そんな我儘。言ってられない。なぜなら…俺は、人に話しかけられない。
つまり、ここで入れてもらえないと俺は活動するできなくなる可能性があるのだ。つまり、幽霊部員。この4人の部活で。
❤️「………。」
そんな考えがよぎってしまえば、この提案は俺にとって救いの一手だと思えてくる。けど、やっぱり俺のせいで迷惑は…それに……迷惑以前に、俺は……。
💜「…やりたいこと、やれよ。」
❤️「ぇっ…?」
💜「会ったばっかだけどよ、お前。ずっと我慢してんだろ…?」
💚「そうだね。…やりたいことやればいいよ?それが、俺らと一緒にできることなら…よかったら、一緒にやらない?」
🩷「歓迎するよ?笑」
らん先輩が俺の頭に手を乗せ、ワシャワシャと撫でてくる。いるま先輩は、それを横目で見てはふいっと顔をそらす。すち先輩は、ニヤニヤといるま先輩の方を見ていた。
俺は首を傾げ、不思議そうにしながらも、また自分のことに精一杯でずっと思考を巡らす。
❤️「…おれ、ギターやりたいですっ……。」
🩷「っ!いいじゃん、教えるよ?笑」
❤️「でも…もう、先輩がた二人ともギターで……。」
いるま先輩と、らん先輩の方をゆっくりと見た。
らん先輩は、ぁっ…と今気がついたかのような反応をしいて、いるま先輩はムッとした顔のまま視線をそらしていた。
💚「確かに…どうしよっか?」
🩷「ん~…俺はなるべく離れたくないな…。ギター以外できんし。」
❤️「そう、ですよねっ…でも!先輩と違って、俺何も持ってないんで。別ののほうがいいなら…」
そう、俺が喋っていたとき。いるま先輩が、隣で口を開いた。
💜「…俺、ギターやんねぇよ?」
❤️🩷💚「えっ…」
3人が鳩が豆鉄砲を食らったかのような顔をしている。目を点にし、口をぽかんと空けた表情だ。
いるま先輩は相変わらずすんとしていて、平然としている。
てっきり、ギターをやると思っていた。あんなに歌声きれいだし…あんなにギターも上手いのに…。
🩷「ぇっおまえ、何する気なの?」
💜「ベース。」
💚「なんでまた…ぃや、いるまちゃんがやるっていうならそうなんだろうけど。」
🩷「機材は!持ってんの!?」
💜「そもそも、去年1年練習してたのギターじゃねぇし。去年買った。」
🩷「なんでそれを、俺らに言わないのさ!」
こちら側までらん先輩が回り込んで来ては、いるま先輩の肩を掴んで思いっきり揺すり始めた。
いるま先輩が気持ち悪そうに、ぅっ…と声を漏らす。
💚「はいはい、らんらんストップ。いるまちゃん死んじゃうから。笑」
❤️「ぁ、ぁの……俺のためなら…」
💜「いや、そもそも去年練習してたのはマジだし。うまくない初心者の状態で誰かの前で練習すんの嫌で家出やってただけ。」
そう言いながら、らん先輩の拘束から抜け出したいるま先輩が、俺の頭を軽く撫でてくる。
💜「ほら、やりたいことやれよ。やってみるもんだろ?笑」
❤️「っ…!!//」
かっこいい笑顔。また、先輩の顔に見惚れそうになる。ふいっと顔を背け、小さく頷いた。
いるま先輩は嬉しそうに後ろで笑っているようだ。
💚「じゃあ決まり。あとは…」
🩷「ボーカルと、ドラム欲しいな。」
❤️「ぇっ……先輩たち歌わないんですか?」
💜「すちとらんは、歌上手いけど。バンドで歌いたくないらしい。」
💚「だって、声上げる歌い方しないし…恥ずかしいから?笑」
🩷「うまいのに腹立つこいつ…。」
💜「お前もだろ。」
俺は首を傾げる。
❤️「いるま先輩は…?」
💚「いるまちゃんは、ラップ以外歌ってるところ見たことないなぁ…。」
🩷「それも、入学式のとき。部下紹介の時まで、お前が歌うたうことすら知らなかったしな。笑」
💜「うるせ。」
先輩たちは、どうやらいるま先輩が一人で奥の部屋へいき、弾き語りをしていたことを知らない様子だった。
そっか、俺だけが知ってるんだ…。なんだか、少し嬉しくなってニマニマと表情が緩んだ。
💚「…??とにかく、ボーカルとドラム。集めないとね。」
🩷「ん~…なつ、新入生でいないの。」
❤️「ぇっと…俺の地域からっ、ここ来てる人…そんないなくてっ……ほとんど知らないっ…。」
唯一、知ってる奴とすれば…。
❤️「一人だけ、歌上手いやつ。知ってます、けど……」
確かに、小学生の頃から仲のいい奴が一人いる。それも、たしか同じクラスに。けど、入学式から今まで張り切りすぎて体調不良らしく来ていない。
せっかく、俺の席の近くなのに…うるさい彼奴としゃべれないのが少しさみしい。
❤️「小学生のときから、ずっと俺の傍にいてくれたやつで…変なやつなんですけど、いいやつで。」
💚「へぇ、いいじゃん。笑」
❤️「でも、入学式から学校きてなくて…」
🩷「不登校のコなの?」
❤️「いや。なんか、入学式前に張り切りすぎて普通に熱出してるらしくて。」
💜「そいつ、バカなんか?」
💚「こら、そういうこと言わないよ。笑」
❤️「ぁ…バカなやつです。」
🩷「バカなんだ。笑」
ふっと笑いながら、そいつのおかげで先輩ちと楽しく会話することができた。
次あったとき、お礼言ってやらんでもない。と、少し上から目線なことを思いながら、その日の体験は雑談で終わらせた。
※ ※ ※
🩷「ふ~ん、LINEじゃその歌が上手い子。明日から行くって言ってんだ。」
❤️「なんか、インスタで仲良くなったうちのクラスの子も連れていくって…。」
携帯をみながら、駅の方面へゆっくりと歩いていく。話し込みすぎて、周りには人がいない。帰るのが、ずいぶん遅くなってしまった。先生にも少しだけ怒られた。
💚「学校来れてないのに、仲のいい子ができるって、できるってすごいねぇ…。笑」
💜「めっちゃ、うるさくなりそうじゃね?」
❤️「否定できないです。」
🩷「おもろ。笑」
ふっと笑いながら話していたら、すぐに駅に着いてしまう。十数分の道は、一瞬で終わってしまう。
きっと、こっち方面の先輩なんて居ないはずだから…ここでお別れかな、なんて考える。
挨拶をして別れようとしていたのに、いるま先輩はこちらについてくる。
❤️「ぇっ…?いるま先輩??」
💜「ん?」
❤️「先輩、あっちの方面じゃ…」
💜「ああ、俺こっち方面だから。笑」
❤️「めずらいしっすね。」
💜「うちの学校だと、そうだな。笑 って言うお前も、こっち方面だろ?」
❤️「まぁ……。」
先輩と二人きり、隣に座って十分後の電車を待っている。
向かいのホームのアナウンスが響く。向こう側では、電車で隠れるギリギリまでらん先輩とすち先輩が手を振っていて、小さく振り返すと電車が間を割り、風を巻き上げる。
電車の中でも、先輩たちはこっちに手を振り続けた。
見えなくなるまで、俺も手を振り替えしていた。
💜「ふっ、かわい。笑」
❤️「ぇ…はっ!?」
顔を赤らめては、驚いた表情を浮かべる。いきなり何を言い出すのかと思えば、やっぱりこの人は誑しだな…なんて、考える。
❤️「も…、からかわないでください。」
💜「…別に、後輩に可愛いはからかってねぇだろ?笑」
❤️「むっ………。」
そんなことを話していたら、電車がゆっくりとやってくる。先ほどの先輩たちとは逆方向の電車。
いるま先輩と乗り込み、少し空いている休日のお昼の電車を見渡した。
空いている席に2人で並んで座り、二駅分だけ揺られていく。何だか心地良い。隣が、すごく落ち着く。そう感じた。
部活のこと、学校のこと、先輩たちのこと、勉強のこと、これまでのこと。なんだか、色々なことを喋った気がする。
どれも楽しくてあっという間だった。
アナウンスが流れてきては、電車がゆっくりと止まっていく。数人がパラパラと電車を降りては、階段を下って改札を通っていく。
いるま先輩と同じ駅で降り、一緒に駅を出た。
❤️「先輩、引っ越してきたんすか?」
💜「そ、中学は北海道。」
❤️「へぇ〜…さむそう……。」
そんな他愛もない話をしながら、帰路をたどっていく。先輩と家の方面が同じで、一緒に帰宅した。
何だか、いつも一人で歩くさみしい一本道が、温かく感じられた。
❤️「じゃあ、俺ここなんで。」
💜「んっ、…明日は部活くんの?」
❤️「ぇ…えっと……。」
💜「…ここなんだよな、お前の家。」
❤️「あ、はい。」
💜「迎えに来てやるから、明日行こうぜ。」
❤️「ぇっ…?」
先輩から、そんなうれしい提案をされた。いるま先輩は、来た道を戻っていく。きっと、俺を家に送ってくれたんだ。そう、都合よく勝手に解釈する。
こんなに長い時間初対面の人と話したことがなくて。疲れ切っていた。
家に入り、すぐにソファーにもたれかかる。
なんだか、今日一日満たされたような気がして…明日の部活体験が、またすごくたのしみになった。
黙々と夕食を食べ、一人でお風呂に入って部屋に戻る。そうして、新たな出会いに頬を緩ませながら、布団に顔を埋めた。
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