「…………まただ」
「………………」
目が覚めると、阿部ちゃんの長い手足が、すっぽりと俺を包み込んでいて、身じろぎすらできない。寝る前は、二人して、仰向けに寝ておやすみを言ったはずなのに、抱き枕みたいにされて、目が覚めると動けないのは珍しいことではなかった。
「うう…苦しい」
腕にはまあまあ力が入っていて、振りほどくこともできず。
阿部ちゃんは、といえば、規則的に寝息を立てていて、起きる兆しすら感じられない。
朝の仕事じゃない日は、いつもこんなだ。
寝起きが良くて、ぱっちり起きると全国的に思われているこの男は、案外寝起きが悪く、起きてもしばらくぽやぽやとしている。
ぎゅうううう。
「うっ」
さらに抱きしめる腕に力がこもり、身体を押し付けてきた。息が止まりそうだ。しかも。お尻のあたりに、あたる。アレが。
朝から主張かましてんじゃねーよ、阿部ちゃん。て、ことはそろそろ目、覚ますのか?
振り返り、良い夢でも見てるのか、上がった口角を見てつい、つられて笑ってしまう。朝勃ちバレるほど近距離で抱き合って眠るくせに、俺たちはまだそういう関係じゃない。
なぜなら俺が拒んでるからだ。
悪いと思ってる。
悪いとは思ってるよ。
でも、コワイじゃん。
付き合うってなった時、阿部ちゃんが言ったんだ。
『翔太の初めては俺が全部もらうね♡』
語尾にハートマークが付いてそうなそんな口調で阿部ちゃんはそう言うと、俺をぎゅっと抱きしめた。告白された日だ。正直、ビビった。
でもその誘うような顔が今まで見た中で一番の史上最高のかっこよさで、思わずぽーっとしてしまった俺が、抗議してこないと見るや、阿部ちゃんは『楽しみだな。うふふ』と笑って、そのまま触れるだけのキスをしてきた。
阿部ちゃんが俺を好きだなんて、夢みたいだった。
俺の方こそずっと阿部ちゃんのことが好きで、この想いがバレないように必死こいてたというのに、阿部ちゃんと目が合う回数が、ある時から一気に増えた気がして、そこから怒涛の阿部ちゃん側からの攻撃?が始まり、二人で会うようになって、たった三回目で俺は阿部ちゃんに告白された。
「んー?しょうたぁ?起きてるのぉ??」
「ひゃあっ!!」
耳に急に息がかかったもんだから、寝床とはいえ飛び上がりそうになる。
今日は二人とも朝は遅めで、でも、行く場所はバラバラで。阿部ちゃんは特番でクイズ番組の収録があるらしい。グループが売れてから、個々の仕事も増え、バラバラの仕事が増えたのは嬉しいような、寂しいような…。
「しょうただぁ〜」
阿部ちゃんはまだ寝惚け頭で、俺の頬に頬擦りしてくる。くすぐったいし、胸がむずむずするし、何より恥ずかしい。お尻にあたったまんまのアレはちっとも衰えないし…。
「あっ、あのさ…」
「んー?」
「離して?///」
「やだ。あったかいんだもん」
「だもんじゃなくてさ///」
ゴソゴソ動く俺に、阿部ちゃんは、耳にわざとふぅっと息を吹きかけると、いきなり体勢を変えて、俺に馬乗りになった。
「ちかっ!!///」
「おはよう翔太。今日もよろしくね♡」
そう言われておはようのキスをされた。
いや、今度は、腹にあたってんだよ。
わざとだろこんなの、もう。
「トイレ行ってこいよもう///」
「え?マジ?やだ、いつから???」
阿部ちゃんは気づいてなかったらしく、下半身を確認して真っ赤になり、俺から離れると、いそいそとトイレに向かった。前傾でトイレに行くその姿がカッコ悪くて笑ってしまう。しっかり男らしいくせに、ところどころ抜けてるところが可愛い…と言えなくもない。
その後、落ち着いた阿部ちゃんは、朝ごはんを食べながら、『でも、俺はいつだって準備万端だからね』とか抜かしたので、腹に重めのパンチをお見舞いしといた。
コメント
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かわいいーーーーー確かにみちるさんとかkinoさんのやつ読んでたら🖤💚で💚は右なんだけどまきぴよさんのとこ来たら絶対💚💙で💚が左に見えてくるんだよねこの現象はなにーー🙃 あ、3人がただただ天才なのか😎😎
かわいいかわいいかわいいかあいい…🫠
