俺たちは宿を出てギルドへと向かう。
宿主さんは悲しそうに見送ってくれた。
ーー頑張れ、いつか良い人がくるさ。
そんなことを考えている中、一つ大事なことを忘れていた。
……ギルドの場所聞くの忘れた。
「なぁ…ギルドの場所知ってるか?」
レオたちに聞く、不安しかないが……。
「うん!俺知ってるぞ!」
「では俺が護衛しよう。レオも手伝え」
「イエッサー!」
やはり始まった、護衛地獄。
ロウは俺の目の前に立ち、全身を囲むように腕を広げる。
「湊待て!!石がある!!
このままでは躓いてしまう!」
(ただの石ころよ?)
「なんだって!?
俺が蹴ってどかす!」
「危ないからやめなさい!」
ーーその後。
ロウは周りを見渡して警戒しまくり……。
「お前ら、湊を見るな!」
………あなたのせいで余計に注目されてるのよ。
「そうだ!!湊を見ちゃダメだ!!」
俺は呪いか何かか…?
こうして俺たちは無事、数時間かけてギルドへと到着。
もふもふに囲まれて、
石一つで大騒ぎ、
ついでに呪い扱い、
ーー本当に大丈夫そ?
ヘトヘトの腕で、ギルドのドアを開ける。
向こうから元気な声で挨拶してくる。
「おっ!いらっしゃーい!!」
人間だ……よかった…。
ギルドの中には、鎧姿の戦士や魔法使いがずらり。
ざわざわと視線が集まる。
(なんでだよ……レオとロウが目立ってるのか?
いや、俺だな。絶対俺だな。)
「受付はこっちだよー!」
元気な声の方向を見ると、
明らかに冒険者を見慣れてる雰囲気の女性が大きく手を振っていた。
笑顔。元気。…人間。救い。
「職業は何かなー?戦士?魔法使い?」
俺は震える声で答える。
「あの……召喚術師です。多分。」
するとその瞬間!
「「違う、湊は俺たち専属だ」」
レオとロウが両側から腕を掴む。
(また始まった……。)
受付嬢は目をぱちぱちさせたあと、
「…え、えっと。じゃあまずは“怪しくないかチェック”ね!」
…怪しいのはこいつらの方なんですよ。
受付嬢は大きな水晶を持ち出し、俺の前にそっと置いた。
ロウは目を細め、尻尾をピンッと立てて警戒する。
「これはなんだ?爆弾か? 湊を傷つける奴は断じて許さん!!」
「なにがあっても俺が守るからね!!」
……いやこれ水晶。知ってますよね?水晶です水晶。
そう心の中で突っ込む俺をよそに、受付嬢は苦笑いを浮かべた。
「あはは……ま、まぁ! 早速測定しますよ!
では、手をかざしてください!」
俺はそっと手を水晶に近づけた。
その瞬間、ロウが俺の手首をガシッと掴む。
そして、いきなり匂いを嗅ぎ始めた。
「な、なにしてるんだバカっ!?」
「……怪しい魔法がついてないかチェックだ……」
嘘つけ。尻尾ぶんぶん振ってるの丸見えだからな。
「ずるい!俺も俺も!!」
レオまで参戦してきて、俺の腕を引っ張ってくる。
その様子を見て受付嬢が引きつった笑顔で言う。
「あの……できれば、手だけ……」
(すいません、無理です………)
コメント
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レオやっぱかわいいな