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すごく悔しかった。
夢まで罪みたいに扱われる理由が、どうしても分からなかった。
「ギタリストになりたい」
それだけで笑われるなら、もう何も言わない方が楽だった。
放課後、誰もいない音楽室で、俺はギターを触っていた。
音を出すのが怖くて、弦を押さえるだけで止まっていた。
「やめるの?」
突然聞こえた声に、肩が跳ねた。
振り返ると、クラスメイトの元貴が立っていた。
俺の手と、ギターを見て、何も言わずに近づいてくる。
「親のこととかさ、関係なくない?」
その言葉が、胸の奥に引っかかった。
「夢は、お前のだろ」
否定じゃなかった。
押しつけでもなかった。
ただ、信じるみたいに言った。
「弾いてみなよ」
震える指で鳴らした音は、綺麗とは言えなかった。
それでも元貴は笑わなかった。
「いい音じゃん」
「続けなよ。俺は信じるから」
その瞬間、閉じていた何かが、静かにほどけた。
俺はまだ弱い。
でももう、ひとりじゃない。
ギタリストになる夢は、ここからまた動き出した。