都内のあるビルの一室、ネオンが灯るカラオケボックスのドアが開く。
「おーい、早く入ろうぜ〜!」
滉斗がテンション高く部屋へ飛び込む。
「ちょっと!飲み物持ってるの俺だけなんだけど!」
涼ちゃんが笑いながらドリンク3人分を持って後に続き、最後に元貴がドアを閉める。
「うわっ、この部屋めっちゃ広いじゃん!」
「ステージみたいなスペースあるし、ライティングまで完璧なんだけど…」
3人だけのはずなのに、やたら豪華な部屋に思わず笑い合う。
「まず誰から歌う?俺、今日絶好調だよ?」
滉斗がリモコンを握りしめると、
「じゃあ滉斗からでいいよ。俺はそのあとね〜」
と涼ちゃん。
「俺はラストでいいや」
元貴はソファにゆったり座って、静かに笑った。
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時間が過ぎるにつれて、懐かしい曲や、ふざけた替え歌で盛り上がる3人。
涼ちゃんが突然クラシックを全力で歌ったり、滉斗がアニソンを熱唱したり、
元貴が笑い転げながら合いの手を入れる。
「…なんか、こうして3人でいるとさ、時間忘れるよな」
ふと、滉斗が呟く。
「うん…なんか、昔に戻ったみたい」
涼ちゃんが少し寂しそうに笑う。
その言葉に、元貴は少し視線を落とした。
この数年、それぞれがいろんな葛藤や苦悩を乗り越えてきた。
活動休止、再始動、変化と挑戦――
でも、こうして集まると、あの“原点”が、すぐそこにあるような気がする。
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「じゃあ、最後…俺、歌っていい?」
元貴が立ち上がり、リモコンを操作する。
「もちろん!」
「待ってました〜」と涼ちゃんと滉斗。
画面に表示されたのは――
『BFF』の文字。
イントロが流れる。
「…懐かしいね、この曲」
涼ちゃんがぽつりと呟く。
「いや、今でも心のど真ん中にあるよ」
滉斗の声が、少し震えていた。
元貴はマイクを持ち、目を閉じる。
“縁に帰る匂いがした 覚えているかな?”
一語一語を大切に紡ぐように、静かに、でも力強く。
この曲は、3人だけで作った。
誰にも渡せない、大切な想いを込めた曲。
“バカみたいな僕の夢を
バカみたいに信じてくれて”
そのフレーズを歌った瞬間、
涼ちゃんの目に涙が浮かぶ。
滉斗は目を伏せ、唇を噛みしめていた。
“やるせないそんな今日でも
僕には君が居る”
元貴の声は、最後の一音まで、真っ直ぐに響いていた。
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曲が終わったあと、一瞬、静寂が落ちた。
でも、それを破ったのは涼ちゃんのすすり泣き。
「…ほんと、ズルいよ、元貴」
「泣かせに来てるよな、完全に」
滉斗も、目を潤ませながら笑っていた。
元貴は何も言わずに、2人の肩を抱き寄せた。
3人でぎゅっと、くっつくように。
「俺たちさ、これからも変わっていくかもしれないけど」
「でも、変わらないものもあるよね」
「俺たちは――ずっと、一緒だよ」
その言葉に、2人は深くうなずいた。
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帰り道、夜の風が少し冷たかった。
でも、心はとてもあたたかかった。
ミセスの3人。
どんな道を歩んでも、きっとまたこうして、笑い合える。
君たちと、ずっと。
コメント
2件
こんなん泣くに決まってるじゃないですか… 突然藤澤さんがクラシック熱唱し出したって見えた時はビビったけど…笑 僕には君がいる、って歌詞良すぎますよねえ…はぁぁぁ…朝からありがとうございます…