六年生長屋では 、
決まって猫がよく訪れていた 。
仙蔵や長次にはよく甘えて
伊作のことは弄び
小平太や文次郎を恐れ
留三郎にいつも叱られてばかりだった
そんな猫を 、六年生は酷く愛で 。
手出しするものが現れるなら
きっと 、そこら一帯が炎に囲まれ 、
槍だの毒だの物騒なものが飛び交うだろう__
でも 、そんな強い想いは 。
普段の不器用さから上手く猫には届かず
猫は勘違いをしていく一方で 、
今回もまた 、大きく拗れていった______
朝からだろうか
なにやら 、学園中が騒がしく感じたのは 。
「喜八郎」
『….滝夜叉丸』
「……喜八郎」
『…何があったの?』
ふと 、疑問を口にしてみれば
滝はバツの悪そうな顔をみせて 、
僕は手にしていた箸を一度置いた 。
「……なんと 、」
『なんと?』
「昨日から土井先生が 、姿を消したとの事 。」
『…….そう』
別に 、驚かなかったわけじゃない
でも驚いたからって 、
土井先生が帰ってくる訳でも無いでしょう?
そう思って味噌汁を手にした
そしたら 、同時に滝が口を開いた 。
「だから昨夜 、山田先生と六年生が
探しに行ったそうだ 。」
「そしたら……」
『…..っ 、なに…はっきりしてよ』
「……先輩方は 、土井先生によって
今現在 、医務室だそうだ 。」
『…..は 、』
ボタボタ_______
「って..お前ッ!!こぼしてるっ…!!!!」
『….え 、あぁ本当だ』
「まったく、、お前は_______」
そう言って 、台所から布巾を貰いに行ってくれた
滝だって 、今すぐに医務室に駆け出したいくせに
今すぐ 、七松先輩に駆け出したいくせに
どうして 、僕にそれを伝えるために来たのさ
僕は 、いてもたってもいられなくて
残りのご飯は滝にあげようと思って 、
重い足を走らせた 。
大きな音を立てて 、僕は医務室を開けた
すれば 、目の前に広がるのは
つんとくる強い血の匂い
『….う 、』
「喜八郎ッ…..」
そんな僕に近づいてきたのは 、
学級委員長委員会、五年ろ組 鉢屋三郎先輩 。
戸の目の前で 、大きく立ちはだかり
僕に後ろは見せまいとする鉢屋先輩で
そんな先輩を押しのければ 、
壁に寄りかかるのは
中在家先輩 、食満先輩 、潮江先輩 、立花先輩
そして 、尾浜先輩と久々知先輩が抑えて
伊作先輩が必死に誰かにを何かしようとしている
それは 、七松先輩に包帯やら布やらを当てていた
『…..先輩方…』
僕が 、再びそういえばそこにいる全員が僕を見た
そして 、なにか苦虫でも噛み潰したような顔で
再び僕から目線を逸らした 。
「…..喜八郎 、心配する気持ちはわかる 。」
「あぁ、だけど…今は僕達に任してよ 。」
そう言って、僕の肩手を置いたり頭を撫でるのは
五年ろ組の竹谷八左ヱ門先輩 、不破雷蔵先輩 。
先輩が言った 、心配という言葉が
いまいちピンと来なかった
別に 、心配をしてきたわけじゃないんだもん
僕は 、怒っているんだ 。
「…..喜八郎 、?」
僕の名前を呼んだのは 、立花先輩だった
「どうしたんだ 、授業の筈だろう?」
「ほら 、見ての通り私達は無事だ ….だから__
『なんで、』
「……え?」
『なんで 、黙って出てったんですか 。』
『なんで 、滝には言って僕には内緒なの!?』
『僕はそんなに頼りないですかッ……』
「喜八郎 、違くて…」
『何が違うって言うんですかっ….!』
『六年長屋へ行ったら誰も居なくて 、』
『誰も穴に落ちてやくれなくて….
誰も…..穴を埋めてくれなかった!!』
『…….僕 、淋しかった…..不安だったのに 。』
「え 、喜八郎….??」
『…..ぅっ…ひっぐ 、… 』
『もういいです……もうしらないっ….』
「あっ喜八郎…!!」
涙なんか目もくれずに 、僕はがむしゃらに走った
でも 、外に出るのもまた違くて
僕は自分で作ったターコちゃんの中に入った 。
そこは 、六年長屋の深い深い穴
うんと綺麗で美しいターコちゃんが居て
流石の六年生でも落ちてくれるんじゃないかって
食満先輩だって褒めてくれるかも
なんて考えてたのに 。
グズグズと泣く 、年相応の声が穴に響き渡る
泣いている理由は二つ三つ程度だった
ひとつは 、
先輩方が僕に心配させまいと
何も言わずに出て行ったこと 。
ふたつは 、
怪我をして帰ってきたこと
三つ目なんかはもう 、よく覚えていない
とにかくつらつらと垂れる涙を拭う
そんな作業を繰り返していくうちに
僕はいつの間にか眠りに入っていた 。
____くん
___べくん?
おーい___くん?
そろそろ 、襲っちゃうよ?
『…..変なこと言わないでください 。』
『雑渡昆奈門…..せんせー』
「いいね 、先生呼び 。グッとくる」
『……』
「そんな引かないでよ」
『先生は何しに来たんですか』
「えぇ 、喜八郎くんを迎えに来たんだよ」
『…..何故』
「今日の授業は私が担当だからね」
『…….今日やすみます』
「どうして」
『体調が悪いです』
「それは困った 、伊作くんの所に行こうか」
『…..やです』
さっきから 、ジロジロとこちらを見る目を
どうも見返すことが出来なくて 、
目線を下に土いじりをしてた 。
すると 、ガシッと右腕を捕まれて
壁に押さえつけられた 。
『っ……..生徒に手出ていいと思ってるんですか』
「別に 、期間限定の生徒なんだよ」
「ちょっとくらい平気でしょ」
『…..はぁ、?』
「まぁ….でもこれは手強いね」
そう言って 、雑渡昆奈門…せんせいは
僕の首にひとつ口を付けてすぐ穴から出て行った
『…….チクってやる』
「いいの?サボってること言っちゃうよ」
『………』
「まぁいいや 、またね喜八郎くん」
そう言ってあのいやーな気配は消えてった 。
それと同時に 、鐘の音が鳴って
また少し時間が経ったら 、今度は滝が迎えに来た
「またお前はっ…___って」
「はぁあぁぁあああ!?!?!」
ご飯を食べながら 、授業をサボったことを
まだグチグチ言う滝が 、急にピタッと止まって
次の瞬間 、大きく叫び出した 。
その声で 、周りにいた全員が視線を向けた 。
『…..滝うるさい、』
「うううるさいだと!?よく言え!!」
「おまっ…おまえ、、首!!」
『…..首ぃ?…..あぁ 、』
『なんかなってる?』
「なってるどころじゃないッ!!!」
「誰だ 、誰なのだ!!」
グシグシと布巾で僕の肩を拭いても
それは消えることがなかった
『もう、滝は大袈裟』
『二、三日で消えるよどう__』
僕が喋り切る前に 、ぐわんっと宙に浮いた
理解が追いつかなかったけど 、
逆さになった世界で滝が七松先輩!!と
叫んでいたのは見えたかな 。
ようやく理解できたころには 、
僕は六年長屋のい組のお部屋に居た 。
ちょこんと座る僕を囲うように
ドン!と皆さんが腕をくんでこちらを見下ろした
『…..なんですかぁ、』
僕はまだ怒ってるんだ 、
少し拗ねたように言ってみれば
ガシッと肩を七松先輩に掴まれた 。
「誰だその気配の正体は!!!」
『……はい、?』
「その印をつけた輩はどこのどいつだ」
再び釘を刺したのは中在家先輩で
普段の優しい先輩とは程遠くて少し怖い
『….いえません』
「はっ言えないだと?またどうしてだよ」
『それは…..』
「まさか 、そいつが好きと?」
『まさかぁ、、』
『あの人は少々怖すぎますよぉ』
「ボロが出た!!いま!!」
『あーー』
仕方ないから 、白状をしてやれば
先輩方が次第にオロオロしだした 。
「まて 、雑渡昆奈門だと!?」
「不味いぞ 、不味いッ…..」
「あんな奴に私の喜八郎が___」
「….やっぱ毒とか盛っとけばよかったかな」
「……っ、」
『どうしてそこまで….』
ふと 、愚痴をこぼした
すると 、それを聞いていたであろう
食満先輩が片眉をあげて話した
「どうしてだと思う?」
『分からないから聞いてるんですよっ』
「くははっ…それはなぁ」
「_____________」
『…おやまぁ、!』
二、三日で消えると思ってた印は
より増えていく一方で 、又 。
腰痛というオプションまで着いてしまった
周りの人間たちは 、そんな喜八郎を見て
肩をすぼめたり悔やんだり
それでも尚 、挑もうとするものを哀れんだ 。
「どわぁああッ!?」
「クッソ…..喜八郎だなぁっ!?」
「….だぁいせいこ〜….笑」
「土加減は如何ですかぁ?土井せんせー」
「あわわ…..あんな深い穴 、
僕ってばよく落ちなかった…..!!」
「安心してる場合か、、っ
はぁ 、また喜八郎と埋めるのかァ….笑」
「なっ…自慢か留三郎ッ!!!
私だって髪を溶かしあったり___」
「私だって夜中に塹壕を堀に行くぞー!」
「寝る前に 、読み聞かせをする 。」
「 「長次のが一番羨ましいッ!!」 」
「ずるいよみんなっ!!!
僕は….うーん、、身体検査できるくらいしか…」
「覚悟しろ 、伊作」
「同室のよしみだ 、すぐ楽にさせる」
「共に作った薬の試薬といこう」
「いさっくん覚悟しろ!」
「….あは、あははは…ッ」
「ちょっとーー!!!やめてやめて!!」
「助けて喜八郎ーーー!!!」
「おやまぁ」
駄作すいません🥲
竹綾の続きは色んな作品を書いてる途中から
途中から割り込めさせときます……(?)
コメント
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主様の小説マジっっっっっっっっっで神作すぎますよおおおお!
あの!!いつも観てます!!ホントに主さんが書く綾部総受けは大好きです!!それで地雷じゃなかったらなんですけどよければピュアピュアだけど押し倒おす浜といつもガツガツいくけどいざとなったら照れる綾がみたいなとか短く言えば浜綾がみたいです!!