エピローグ:未来へ繋ぐ物語
それから数年後、若井と涼架は結婚した。
若井は、変わらずバンドのギタリストとして、そして、涼架は、音楽大学の講師として、それぞれの場所で輝いていた。
二人の住む家のリビングには、いつでも音楽が流れていた。
二人の間に生まれた男の子が、リビングの真ん中で眠そうに目をこすっていた。
「パパ、あのね、またお話聞かせて」
若井は、息子を膝に乗せ、優しく微笑んだ。
「どれがいい?鹿と群れと、湖のお話か?」
「うん!」
涼架は、キッチンでココアを温めながら、そんな二人の様子を微笑ましく見つめていた。
若井が語り始める。
「昔々、湖を走る、鹿の群れがいたんだ。その湖の底には、世界で一番綺麗なオーロラが眠っていて…」
その話は、若井の祖父が、若井に聞かせてくれた話だった。
そして、その話は、若井と涼架を繋いだかけがえのないお話しだった。
「そのオーロラはね、運命の女神さまが、人と人を繋ぐために、この世界に置いてった、大切な光なんだって」
若井がそう言うと、息子は、目をキラキラさせて、若井の顔を見つめた。
「ねぇ、ママもお話知ってるの?」
息子が涼架にそう尋ねると、涼架はココアを二人の前に置き、優しい声で答えた。
「もちろん。ママとパパはね、このお話のおかげで出会えたんだよ」
涼架の言葉に、息子は不思議そうに首を傾げた
「どうして?」
若井は、涼架に顔を見合わせ、微笑んだ。
「それはね、さよならには、意味があるからだよ」
若井がそう言うと、息子はさらに首を傾げた。
「さよならって、寂しなことじゃないの?」
涼架は、息子の頭を優しく撫でた。
「そうだよ。でもね、寂しいだけじゃないの。さよならは、また会うための始まり。離れていても、心は繋がっているんだよ」
息子は、まだその言葉の意味を全て理解できたわけではないようだったが、涼架の言葉に、安心したように微笑んだ。
「ねぇ、ママとパパ。お空に、オーロラ、見えたらいいね」
涼架は、息子の言葉に頷き、若井と顔を見合わせた。
二人の目には、お互いの顔が映っている。
それは、たくさんの時間を経て、お互いの人生に寄り添い、そして、一つの家族になった二人の、温かい光だった。
暖炉に日を灯して、揺れる椅子でうたた寝。
あの頃、俺たちが見た夢に見た情景は、今、現実になった。
そして、俺たちは、この温かい気持ちを、次の世代へと繋いでいく。
運命の女神さま…
どうかこれからも、ささやかに、この家族を導いてください。
ここまで読んでいただきありがとうございました♪
次回予告
番外編
[似ているのは、誰?]
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コメント
2件
これからもこのお話がりょつぱの子孫に受け繋がれてたらいいな、😭 結婚した2人も最高です!! 番外編も楽しみーっ!🥰💕
完結、おめでとうございます!!こうやってこの童話?が、未来にもずっと語り継がれるものであるといいなって思いました!