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「三ッ塚さん、お車の運転は大変じゃないですか?」
そんな風にも思っていた矢先に、あかりさんからそう話が振られて、
「いえ、大変だと思ったようなことは」
答えると、自分には運転の話題しかないのが、ますます寂しくてたまらなくなった。
せっかく華さんが作ってくれた美味しい手料理も、味があんまりしなくてじゃりじゃりとした砂を噛んでいるようにも感じられる。
見かねた秀司さんが、「父さんも、話した方がいいことがあるんじゃないですか?」と、さりげなく水を向けるけれど、
「うん、まぁな……」と、蓮水さんはあまり煮え切らない感じで、さして状況が好転することもなかった。
「……こういう場でなら、父ももしかしたらとも思っていたのですが、すいません」
帰り際に秀司さんが、声をひそめて伝えてきて、
「いいえ、そんなこと……」と、首を振って答えた。
いくら周りの後押しがあったとしても、彼の本心が知れない限りは、どうにもしようがないということを思い知らされたような気分だった。
秀司さんはあかりさんと帰って行き、華さんは後片付けに立ち働いていて、広いテーブルに彼と二人になる──。
気持ちがやや沈みがちなこともあり、なんだか気まずい空気が流れるようで、
「……私も、そろそろ帰りますね」
蓮水さんに声をかけて席を立とうとすると、
「待ってくれ」
と、彼に引き止められた。
「……。……その、まだ華さんが、お茶を淹れてくれているはずだから」
「お茶ですか……」と、また腰を下ろして椅子に座り直すと、「……おいしいですよね。華さんが淹れてくれたのは」半ば上の空でぼんやりと呟いた。
「……ああ、おいしいよな」
「ええ、おいしいですね……」
ぎこちないだけの会話が続いて、再び場は気まずいムードに包まれた……。