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僕たちは自由なんだよ。
人を好きになるのも、その人の全てが欲しくなるのも。
ただ思うだけなんだから
それくらい許してよ。
触りたいんだ。触れたいんだ。会いたいんだ。
そんな事誰にも言わないから。
ねぇ、神様。
貴方はどうして、男と女を造ったの?
「響!」
いつもの通学路、聞き慣れた声で呼ばれる。
「奏ちゃん…おはよ」
俺は、まだ寝ぼけた頭で奏ちゃんの方を振り返る。
「ちょっと!奏ちゃん、その髪の毛どうしたの?」
奏ちゃんの新ビジュ解禁で、俺はすっかり目が覚めた。
「金髪にしてみた…似合うかなぁ?」
屈託ない笑顔で、奏ちゃんが言う。
「似合ってるけど…何故急に金髪?」
「今度の合唱コンクールで、僕ピアノの伴奏するでしょ?」
「うん」
それと金髪と何の関係が…?
「皆に分かりやすいように金髪にした!」
相変わらず意味がわからない。
奏ちゃんはちょっと変わり者だ。
「伴奏してたら、黒髪だろうが嫌でも目立つよ」
「響!今日の合唱部の練習頑張ろうね!」
「へぇい…」
俺、沢尻響と藤村奏は合唱部の先輩後輩だ。
奏ちゃんは、高校2年。
俺の一個上。
だけど先輩と言う感じがしない。
童顔で天然で、いつもニコニコしている。
タメ口で気も使わないし、一緒にいて楽だ。
奏ちゃんの天然ゆえに、話が噛み合わないことも多々あるけれども…。
「あっちょっと!」
俺は奏ちゃんの横顔を見上げて言う。
女の子みたいに綺麗な顔立ち。
鼻が高くて綺麗な形。
「奏ちゃん、また背が伸びた?」
「え、どうだろ…この間測ったときは178cmだったかな?」
「マジかよ、俺やっと170cmになったのに…」
背も高くてカッコいい。
ピアノ男子。
絶対モテるんだろうな。
「響はこれからまだ伸びるでしょ〜」
と、奏ちゃんが俺の頭を優しくポンポンとする。
「奏ちゃん、女の子にモテるでしょう?」
「え〜全然そんなことないよ!」
あるんです。貴方が鈍感なだけ。
うちのクラスの女子も「合唱部の藤村先輩カッコいい!」って騒いでる奴らがチラホラいる。
金髪にしたら余計目立っちゃうじゃん…。
俺は奏ちゃんの腕を組み、ボソッと言う。
「守りたい、その笑顔…」
「えっ、何それ?」
聞こえたか。
「藤村先輩の笑顔を守りたいプロジェクトのスローガンです」
「あははっ、響が守ってくれるの?何から」
「奏ちゃんを傷付ける害虫、その他もろもろからです…」
「あ〜僕、虫は苦手だから助かる〜」
そうじゃないんだ、わかってくれ。
いや、分からなくて良いか…。
「変な女につかまらないでくださいね」
「だから、モテないってば笑」
一番悪い虫なのは俺か。
学校に着くと、「じゃあ、放課後部活でね!」と奏ちゃんとバイバイする。
奏ちゃんと同じクラスだったら良かったのにな。
もう寂しくなって、俺はひとり自分のクラスへ向かう。
奏ちゃんに会うまでは、俺の人生はひたすら虚無だった。
クラスの青春ごっこについていけない。
窓際の席で、イヤホンをして休み時間を過ごした。
そうゆう奴、どこの学校にもいない?
孤独を紛らわしてんだ。
興味ないフリをしてカッコつけてたんだ。
本当は青春を謳歌している奴らが羨ましかったのかも知れない。
席に着くと、イヤホンをして爆音で好きな曲を聴く。
早く放課後にならないかな。
なんて考えていたら、
不意に片方のイヤホンを隣から外される。
「お前っ…やめろって!」
「何この曲?あっ、あたしもこれ好き!てゆーか音大っきすぎ!耳悪くなるよ?」
このうるさい女は山中あさ美。
最近席替えで隣になり、話すようになった。
「返せよ」
「ねぇ、それより今日も藤村先輩と仲良く学校来てたね〜」
ニヤニヤしながら、あさ美が言う。
「腕組んでなかった?」
「ダメなの?」
「いや、仲良くてうらやましい」
「お前も先輩のファンか?」
「私は好きなタイプが違うから」
「ふうん。じゃあ、害虫駆除から外してやるよ」
「害虫?相変わらず失礼っ!」
うるさいけど、あさ美と話すのは意外と楽しかった。
「それより、響のがモテてるんじゃない?」
「俺が?まさか。誰も話しかけてこねーし」
「だって、話しかけないでオーラめっちゃ出してるじゃん!笑」
周りからはそう見えているのか。
「響、イケメンだし。そのサラサラ黒髪と〜綺麗な二重と〜。あっ、目は冷たそうだけど。クラスの子でもカッコいいって言ってる子多いよ?」
「へぇ」
悪いが、それは少し自覚がある。
今までも何人かに告白されたことはある。
「お前も俺のこと好きなの?」
「ねえ〜そうゆうとこ!」
「は?」
「たぶらかし罪で全女子を敵に回すよ?」
たぶらかし罪…
それなら、無意識にやってる奏ちゃんの方が重罪じゃない?
「放課後になったら起こして」
「これから1時間目!笑」
とあさ美が笑う。
俺は放課後、奏ちゃんに会えるまでの時間を何して潰そうかと考えていた。