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最後のチャイムが鳴ると、俺は急いで奏(そう)ちゃんのクラスに向かう。
2年B組。
教室を覗くと、奏ちゃんは友達と話していた。
やっぱ金髪目立つ。
もともと少し天然パーマらしきカールがあるのと、襟足まである長髪が一層際立たせてしまっている。
まぁ、金髪じゃなくても奏ちゃんを一番に探すのは俺の特技だったけど。
「奏ちゃん!」
俺は構わず大声で奏ちゃんを呼ぶ。
「響!ちょっと待ってて」
奏ちゃんが笑う。
慌てて準備をする奏ちゃんが面白くて、俺もニヤけて笑ってしまう。
「藤村。お前、奏ちゃんって呼ばれてるの?あの子1年生だろ?」
と奏ちゃんの友達がからかったように言う。
何か嫌な感じ。
教室のドアの所まで奏ちゃんの友達が来た。
「1年A組の沢尻響です」
奏ちゃんの友達だから、一応挨拶はしておこう。
「沢尻くんも、藤村の彼女候補?」
彼女候補?
何言ってんだ。
「冗談はいいから!」
奏ちゃんが友達を押しのけて、俺の元に来る。
「響、お待たせ!音楽室行こ」
「うん…」
「藤村、沢尻くん、またな!」
゛お友達゛が言う。
奏ちゃんは手をひらひらとさせてバイバイしていたが、その笑顔は少し濁っているように見えた。
「今の人、奏ちゃんの友達?」
「ただのクラスメイトだよ」
奏ちゃんが冷たく言い放つ。
「奏ちゃん、意外と辛辣なんだね…。人類皆友達なのかと思ってた」
「それは、響が僕のこと全然知らないからだね」
言われてゾクッとした。
奏ちゃんの知らない部分…
知りたい。
心の奥底が知りたい。
少しは知っていたつもりになってたのに。
「ミステリアス…」
と一言、俺が言う。
「そんな素敵なもんじゃないよ」
奏ちゃんが言う。
「奏ちゃん、俺は?奏ちゃんの友達?」
「可愛い後輩…かな」
奏ちゃんが笑う。いつもの笑顔。
この言葉は嘘じゃないんだ。
「俺って可愛いの?」
ついつい奏ちゃんに甘えたくなって、腕を組んでしまう。
「じゃあ、彼女にしてくれる?」
俺はふざけて言う。奏ちゃんが笑う。
「そういえば、さっきあのお友達…じゃないや、クラスメイトが言ってた彼女候補ってどうゆうこと?」
「あぁ…僕って、女の子みたいな顔立ちじゃん?」
「うん、まぁ。可愛いイケメンって感じではあるけど」
「その…男子にもたまに告白されたりするんだよね」
「マジで!?」
「中学時代は特に…多かったかな、男子校だったし」
初めて知った。
ホントだ、俺、奏ちゃんのこと何にも知らない。
「それをあの゛クラスメイトさん゛がからかってくるわけ?」
「まぁそんな感じ。」
「へぇー」
何だか胸の奥がモヤモヤとする。
「奏ちゃんは、男から告白されて嫌じゃないの?」
「好きになってくれるのは嬉しいよ、受け入れはできなかったけど」
「それは、奏ちゃんが男だから?」
「難しい話するね、響」
「女の子だったら受け入れるの?」
質問攻めにし過ぎただろうか。
奏ちゃんが黙り込む。
「そもそも、僕…」
奏ちゃんの話の途中で音楽室の近くまで来ると、合唱部の連中から話し掛けられた。
「響、おっそ!藤村先輩も〜」
ちっ。
思わず舌打ちした。
「ごめんね、遅くなって」
いつもの奏ちゃんだ。
何だよ、めっちゃ気になる話の終わり方。
「そもそも僕…」
奏ちゃんは何を言おうとしたのだろう?
とりあえず、あの゛クラスメイト゛が奏ちゃんの笑顔守るプロジェクトの害虫対象になったのは決定事項。
奏ちゃんの笑顔は全力で守るよ。
俺のつまらないアオハルLIFEに一筋の光を見出せたから。
奏ちゃんのおかげだから。
男まで告白するって…奏ちゃん、どれだけモテるんだよ。
俺は、奏ちゃんのことどう思ってるんだろう?
一緒に居ると楽しくて甘えられる存在。
寂しさも吹き飛ばしてくれる。
依存してるのかな…。
一人が好きなくせに俺は寂しがり屋だ。
こんな面倒な俺に優しくしてくれる奏ちゃん。
出会った日のことが思い出される。