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「つーことで、期末テスト成績悪かった奴夏休み返上して補習受けてもらうから。夏休み登校したくなかったら死ぬ気で頑張れよ」
担任が教卓に手をついて淡々と話す。
雪乃はその言葉を上の空で聞き流す。
夏休み補習とか別にどうでもいい。
そんな事より風紀を辞めなきゃいけなくなるかもしれない。
はぁ、とため息をついていると、
「まぁ不安な奴は今週末に勉強合宿あるから参加すれば良いんじゃないか。以上HR終わり。解散」
最後に他人事のようにそう言い残し、HRは終わった。
勉強合宿か…。
頬杖をつきながらそう考えていると、
「あんた大丈夫なの?」
と美希がやってくる。
「…大丈夫だと思う?」
「大丈夫な人はそんな顔しないわ」
どんな顔してるんだろう、私。
とまたため息をつく。
「そんなやばいの?」
「やばい」
「…まぁ補習くらい仕方ないわよ。受け入れなさい。どうせ夏休み暇でしょ」
「いやその通りなんですが、私が恐れてるのは補習じゃなくて…」
美希が首を傾げる。
雪乃は事の経緯を説明することにした。
「チーノくんと勝負??風紀の席を賭けて??」
「はい…」
「馬鹿なの??」
「すみません…」
顔を両手で覆い隠す雪乃。
ほんとその通りすぎて言葉もない。
「何でそんな事になったの?」
呆れながらも聞いてくれる美希。
「いや、その、女には引き下がれない時ってのがあって…」
「つまりただの意地ってわけね」
「はい…」
ただの意地の張り合いです。
まったく、とため息をつく美希。
「まぁ約束してしまったことは仕方ないでしょ。やるしかないわ」
「そうなんですけど、自信がなくて…」
「合宿は?参加するの?」
そう言われ、うーんと唸る。
「参加するのとしないのとじゃ違うかなぁ…」
「結構真面目にカッチリやるらしいわよ。まぁ私は参加したことないけど」
「流石です…」
横髪をサラッと払う美希。
「てかあんた、お兄さんは?」
ピクリとその言葉に体が跳ねる。
「お兄さんに教えて貰えばいいじゃない」
「………」
「どうしたの?喧嘩でもした?」
黙りこくる雪乃の顔を覗き込む美希。
雪乃は俯いたまま無表情で一点を見つめていた。
その表情は、どこか冷たい。
「…兄は忙しいから」
雪乃から出た言葉は、それだけ。
感情のない、冷え切った声音。
何かあったのだろうか、と心配そうに美希が見つめていると、
「よし、合宿参加する!」
雪乃が突然立ち上がり元気よく宣言した。
びっくりして仰反る美希。
「びっくりした、どうしたの急に」
「いや、あいつに勝つ確率が少しでも上がるなら参加するしかないでしょ!」
「ま、まぁそうね」
「…美希は、参加しないよね?」
表情を伺うように雪乃が横目で美希を見る。
頭のいい人間はそもそも参加する必要なんてない。
「…今私は忙しいの」
美希の言葉に肩を落とす。
分かってはいたが、一緒に参加した方が楽しいだろうなと思ったのだ。
けどまぁ仕方ない。
「…あんたの世話焼くのでね」
えっ、と雪乃が驚いて美希を見る。
美希は恥ずかしそうにそっぽを向いていた。
え、つまり…?
「つまりどういうこと…?」
「だからぁ、一緒に行ってあげるって言ってるの!」
分かりなさいよ馬鹿、と言いながら顔を逸らす美希。
「………すき」
雪乃の口からポロッと溢れた一言。
これがツンデレってやつですか?
雪乃は感動して、そのまま美希に抱きつく。
美希は少し鬱陶しそうにしながらも、
「あんたねぇ、誰にでもそんなこと言ってるんじゃないでしょうね…」
呆れながら「気をつけなさいよ」と言われる。
でも満更でもなさそうだった。
誰にでも言うわけないじゃん、と心の中で呟きながら、これから始まる勉強地獄に不安を募らせるのだった。