「妖尾姉さん、艶尾兄さん、“主人様”の御出でだ。多分、“遊郭”に呼ばれるから用意したほうがいいと思うよ。」
「…わかった。ありがとう、洸。」
花街にある見世[玉藻]で、俺と彩月は“花魁”として客をとっている。
全てはこの養護院の子供達を身綺麗なまま警察に保護してもらうため…
また、見世の子たちもまだ幼い。十代だ。だからこれ以上傷つけさせないためにも二人で守ろうと誓ったのだ。
「化粧するか。」
「そうだね。だけど、聖と仁になんて言おうか…」
「いいよ。モモちゃんの相手してもらおう。懐いたみたいだし。ほら、そこ…」
見れば、モモちゃんと聖、仁が追いかけっこして遊んでいるのが見える。
この数日で仲良くなったなあと思う。
「聖!ちょっと出掛けるから、子供達お願いね。」
「了解、気をつけてなぁ!」
「タッチ!いろにいちゃんつかまえた!」
「…お前たち…喰ってやる〜!」
「キャ〜!」
仲良くやってそうでいいな。
「…行こう、彩月。」
「…うん」
私は準備の時間が一番嫌いだ。
客をとれば即刻襲われるから関係ない。
自分を偽るような化粧をして豪勢な派手すぎる着物を着て“奉仕”する。
それがわかっているから、この時間が嫌いだった。
「…き?さ…き…彩月?大丈夫か?顔面蒼白だけど。」
「…それは化粧してるから…(ヤバい、頭痛い)」
「大丈夫…大丈夫だから…」
樹月に頭を撫でられる。
「私、そんな子供じゃないw」
「よし!笑え!その顔が一番好きだ!」
ありがと、樹月。
貴方が好きと言った笑顔を私は守るよ。だから、君も、笑顔でいてよ。
なんて、死んでも言わないけどね。
{藍玉花魁と紅玉花魁のお見えです}
禿が声を出す。
「待っていたよ、藍玉。」
「ええ、わっちも(此奴キモいんだよなあ)。」
今宵も私/俺の身体には紅い花が咲く。
枯らしたいほどに憎い紅い花が。
そして、今宵も身を汚すんだ。
甘い声を“演じて”出す。そして煽るように熱を持った眼で客を見ればそいつはすぐに獣になる。
早く終われ…そう願って“奉仕”するんだ。
これは仕事じゃない。子供たちを守るための“戦い”なんだ。
「今日はありがとう。またお願いね♡」
「ええ、また」
下品な笑みを浮かべてじじ…客は帰って行った。
「さて、着替えるか…」
待機室に戻り着替えていると、樹月が戻ってきた。
「おかえり、樹月。だいじょ…」
倒れた。
え…?
「樹月!しっかりしろ!大丈夫か?」
脈はある。ってことは思ったより激しかったってこと?
でも簡単に意識なくなるような人じゃないんだけど…
「…う…だいじょーぶだよ…」
「いや、焦点あってないけど…」
仕方ない。着替えさせて裏口から出るか…なんて思っていると視界が天井になる。
「…え…?っと?なんで押し倒してるんですかね樹月さん?」
「えへへ…さつきだぁ//」
あ、此奴、眠いんだな。思考回路が幼児化してる。
「ふ〜、樹月〜早く家戻ろっか。聖たち待ってるよ〜」
「うん//ねるぅ…」
「まず着替えろ!」
面倒だな、全く…!
「ただいま」
「おかえり!彩月って…どうゆう状況ですかね…?」
見た感じ樹月が彩月に抱きついてる感パナいんだか…
「えーっとですね、樹月、眠くなると思考回路が幼児化するんよ。」
「あ〜なるほど!とはならんからな!手伝うよ、運べないだろ。」
「お〜ありがとう!」
「や〜ぁだ/さつきとねるぅ/」
「わぁったから早よ寝ろ」
ーそのやり取りをしている間、二人からずっと甘い香の香りがしていたのに僕は気づいていた。
「さつき?まだぁ?//」
「今行く。じゃあ聖、おやすみ。仁は…」
「もう寝てるよ。子供相手に疲れたらしい。」
「なるほど。ありがとう。ごめん、運んでもらえない?」
「了解!心友の頼みだしな!」
「頼もしい限りだよ!」
なあ彩月、樹月。
君らは何を隠してる?
教えてよ、僕はそんなにもう弱くない。
深 夜、誰かの叫び声で起きた。
横を見ると彩月が顔面蒼白で叫んでいる。
「殺される…死ぬ…嫌、嫌だ…!助けて…嫌…!来ないで…ごめんなさい、だから…だから!」
「彩月…大丈夫、大丈夫だ…落ち着け…」
たまに彩月は発狂する。
恐怖で頭がいっぱいになってしまうのだ。聖と仁が攫われてきてから頻繁になった。
彩月が言うには俺もそうなっている事が多いらしい。
彩月の細い身体を抱きしめひたすら安心させる言葉をかける。
「大丈夫、死なない、俺が守るから…大丈夫だ…君は簡単に死ぬようなタマじゃないだろ?大丈夫…」
「…私、死なない?生きてる…?」
「彩月は、生きてるよ…!」
「よか…った…」
彩月は叫び疲れて気絶した。
俺も安心したのか眠った。
夜、彩月が発狂したのを見てしまった。
樹月が彩月を抱きしめて落ち着かせてたけど、あれが日常なのか…?
今日も中途半端な時間に出かけて行った。
絶対、何か隠してる。
あの時間にお前ら、“遊郭”に行ったんじゃないのか?
だから、樹月は気絶寸前で帰ってきて、彩月は発狂したんじゃないのか?
僕はピアスに触れて通信機のスイッチを入れた。
「…あっ本部長!今大丈夫ですか?実は_…」
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