頑張って話しかけてみた。
でもダメだった。
顔をしかめるでもなく、無表情な彼は私の知らない方向へと去っていった。
友達になりたかっただけなのに。
ま、でも。
まだ始まったばかりですし!
ゆっくり友達になればいい。
それに、涼風くんに拘る必要もないじゃないか。
クラスには、まだ友達になってない人だっているんだから。
こんなとき、自分の
ポジティブ思考に助けられる。
「帰るかぁ」
踵を返して自分の家の方へ歩き始める。
時刻は16時3分。
少し日が暮れてきた頃の出来事だった。
・:・・・・・
ガチャッ。
あれ、家の鍵が開いてる。
いつも帰ったら私1人なのにな。
「ただいま〜」
ドアノブを引いて家の中へと声をかける。
鞄を置き、靴を脱いでいると、
「お姉ちゃん、おかえり!」
そう笑顔で迎えてくるのはピンクのパーカーにデニムのミニスカートを履いている私の妹。
名前は柚菜。
小学2年生で、私よりも随分身長が低い。
「あれ?柚菜!今日は家にいるの?お母さんは?」
柚「う〜ん。今日は、大人のかいぎ?っていうのがあるって言ってた!」
「そうなの?じゃあ家にいるのね?」
柚「うん!いま晩ごはんつくってる!」
「それで今日は学童は休みだったんだね」
ぽんぽん、と柚菜の頭を撫でてリビングへ向かう。
後ろから柚菜がついてくる。
私の家は母子家庭。
母は働きながら女手一つで私たち2人を育ててくれた。
そのため、柚菜は普段、小学校が終わると学童に預けられているのだ。
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