不破目線でお送りします。
今回甲斐田出てこん。
「不破さん、大丈夫ですか?」
前触れも無く、いきなり社長にそんなことを聞かれた。
事務所の休憩所の自販機の前。
缶コーヒーを買っていたところに、社長と遭遇。聞かれたと同時ににカコンと開けたコーヒーを一口飲んで、
「何がです?」
って言ったんやけど、表情創れへんかった。もしかしたら、創れてたとしてもバレてるんやろな。
「…」
社長、そんな心配そうな目ェで見んといて下さい。気ィ緩んでしまう。
涙が、出てきてしまう。
「そうですか、私の杞憂でしたかね」
そう言って、社長は水買って一口飲んだ。俺は残りのコーヒーを一気に飲み干した。
そんなところに、
「あの」
あぁ、今日厄日なんやろか。
「─お疲れ様です、もちさん」
やって来たのは、あの日一番最初に帰ったもちさん。
いや、別に一番最初に帰ったからなんか悪いとかは無い。むしろ一緒に巻き込まれんくて良かった。
…よし、今度は笑えた気ィする。
「…目が笑ってないですけど?」
無理やな、終わったわ。
社長、右に同じって表情せんといてください。
…で、聞かれることはあの事やろなぁ。
社長に全部投げて逃げたい。ホンマに。
頭回らん、言い訳が思いつかん。
「一昨日、何があったんですか。僕が先帰った後に」
そう、あの魔の空間に巻き込まれたのは、一昨日の夜。
昨日は丸一日、なんも出来んかった。
…何もしたくなかった。
自覚した反面、無力さを嘆くことしか出来んくて。
「…」
あ、マズイ泣く。
「? 不破く」
「不破さん、この後予定あるんでしたよね? 私から話しとくので行ってください」
「ハイ、ありがとうございます。…じゃ」
社長ホンマにありがとうございます。
勿論予定なんて無い。今日はマネさんから今後の話されただけやし。
誰とも会いたくあらへんかったからすぐ帰ろうとしたのにな。
休憩所来たのがまずかったんか。
まぁ、そんな事、今後悔しても遅いだけやわ。
ゴミ箱に投げるように缶を捨て、休憩所を出る。そして 出た途端に早歩きで離れる。
人が居ないところに着いた。
壁に背中を預け座り込む。
よし、涙出てない。
てかなんか右手痛いんやけど何で…あ
「…血ィ出とる」
早歩きしながら、無意識で拳握りしめてたんか…爪くい込んでる。
ここならええか? …泣いたって。
いや、いくら人の居ないとこ居たってここは事務所。誰かに見つかったら…
「…晴」
…ダメや、一度緩んだら戻せへん。
「─ッ──うぅ───ぅぁ…」
コツ、
あ、マズイ。足音した。けど…止められるわけないわ、涙腺。あーあ、すんません見かけた人。
お見苦しいとこ見せてまs
「おふわ? 何してん?」
…え?
「大丈夫か? 泣いとるん? どないしたんよ、話なら聞くで?」
「…とこ、さん…?」
伏せてた顔を上げたら、しゃがんで俺の顔を覗き込んでる先輩が─戌亥とこさんがいた。
「…よし」
「?」
「おふわ、この後なんかある?」
「…ぃぇ、何も」
「じゃぁ、ええな、着いてきて」
「え、いや、どこに」
ゆっくりと立ち上がった俺に、とこさんはにっこりと笑って、
「アタシの勤め先の喫茶店。おふわを特別招待したげる!」
「…………へ?」
なんでですか? と言う前に、腕を引かれて聞く間もなく歩き始めてしまった。
不破さんがコーヒー飲まん人やったら申し訳ない。
コメント
1件