テラーノベル
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その日のタクヤは、楽屋に入った瞬間から「予報」が出ていた。
普段のツンとした空気はどこへやら、ふにゃふにゃと心許ない笑顔を浮かべ、視線はずっと一人の男を追いかけている。
ターゲットは、ソファで台本をチェックしているリョウガだ。
「……リョウガ」
甘ったるい声が楽屋に響く。リョウガが顔を上げるより先に、タクヤは彼の膝の間に割り込むようにして座り込んだ。
「おわっ、……なんだよタクヤ。珍しいな、自分から来るなんて」
口では驚いて見せるリョウガだが、その手はすでに自然とタクヤの腰を抱き寄せている。タクヤは満足げに鼻を鳴らすと、リョウガの胸板に頬を擦り寄せた。
「……今日、ずっとこうしてていい?」
「いいけど……。俺、台本読めなくなっちゃうよ?」
「いいの。リョウガは俺のことだけ見てて」
タクヤはリョウガの首に腕を回すと、至近距離でじっと見つめる。その瞳は潤んでいて、完全に「甘やかされたい」という熱を帯びていた。
周りではメンバーたちが騒がしく動いている。
ユーキが振付の確認で叫び、アロハとハルが動画を撮って騒ぎ、カイとタカシが今日の弁当について議論している。いつもなら賑やかなはずの楽屋。
だが、二人の周りだけは、まるで透明なドームで覆われたかのように静寂が流れていた。
「ねぇ、リョウガ。……こっち向いて」
「向いてるだろ(笑)」
「もっと」
タクヤはリョウガの頬を両手で包み込み、自分の額をコツンとぶつけた。
リョウガの独特な体温、落ち着く香りが、タクヤの脳を甘く痺れさせる。
「……タクヤ。そんなに可愛い顔してると、メンバーの前だってこと忘れるぞ」
リョウガの声が一段と低くなる。それはリーダーとしての声ではなく、一人の男が愛しい恋人に向ける独占欲の混じったトーンだった。
「忘れていいよ……。俺、今、リョウガ以外いらないもん」
タクヤがトロンとした目で囁き、リョウガのシャツの襟元をぎゅっと掴む。
リョウガは観念したように息をつくと、台本を机に放り出した。そして、タクヤの細い背中を包み込むように抱きしめ、首筋に深く顔を埋める。
「……あーあ。これ、後で絶対メンバーにイジられるわ……」
「いいよ、聞こえないから」
タクヤはリョウガの腕の中で、幸せそうに目を閉じた。
本当に、何も聞こえなかった。ユーキの笑い声も、スタッフの呼ぶ声も。
聞こえるのは、自分を抱きしめるリョウガの速まった鼓動と、「大好きだよ」と耳元で繰り返される甘い吐息だけ。
「……なぁ、あれ」
16,999
ふと、ユーキが指を差した。
ソファの上で、リョウガの中にタクヤが完全に埋まっている。
タクヤはリョウガの膝の上に乗ったまま、時折首筋にキスをねだるように顔を擦り寄せ、リョウガはそれを当然のように受け止めては、愛おしそうにタクヤの髪を撫で続けている。
「……もう、ガヤ入れる隙すらないね」
カイが苦笑いしながらスマホを向けるのをやめた。
「なんか……見てるこっちが照れるわ」
アロハが頬を赤くし、ハルも
「あんなタクヤ君、初めて見た……」
と呆然としている。
「完全に二人の世界やな……。声かけても絶対気づかへんで」
タカシがため息をつきながら、そっと二人に背を向けた。
誰が何を言おうと、二人は動かない。
タクヤはリョウガの体温に溶けるように身を委ね、リョウガはタクヤという宝物を守るように腕を強める。
ミルクチョコよりも甘く、熱く。
楽屋の喧騒を置き去りにして、二人の愛は静かに、けれど激しく燃え上がっていた。
𝐹𝑖𝑛.
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𝑶𝒉 𝑴𝒚 𝑮𝒐𝒐𝒅𝒏𝒆𝒔𝒔〜𝐬𝐰𝐞𝐞𝐭 Love