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距離感
緑は、赤と一緒に歩いていた。
レッスン終わり、事務所の廊下。夕方の陽が差し込んで、床に二人分の影を落としている。
「あー、疲れた~。緑ちゃんさ、思ってたより踊れるじゃん」
そう言って、赤がぽん、と緑の背中を叩く。
「…っ! あ、ありがとうございます……!」
近い。
さっきから、ずっと近い。
喋るたびに腕が当たる。
ちょっと前までは画面の中の人だったのに、今は真横にいて、触れられている。
緑の心臓は、練習より激しく跳ねていた。
「ね、今日時間ある? ご飯行こ。新入り歓迎会しよ?」
「っ、行きます!!」
秒で返事をしてしまった自分を、緑は内心で殴りたいくらい恥ずかしくなる。
――どうしよう。
このままだと、絶対に変な目で見られる。
でも、もう目も心も、赤から離れられそうになかった。
食事中も、赤はマイペースだった。
箸をくるくる回しながら、自分の昔の失敗談を笑って話してくれる。
「デビュー前、緊張しすぎてステージでコケたんだよなぁ~……痛かったけど、笑われるの、ちょっとだけ嬉しかった」
「……なんで、嬉しかったんですか?」
「んー……気づいてもらえたって思ったのかも」
その言葉が、ふいに緑の胸に刺さる。
ずっと憧れてた人は、そんな風に思ってたんだ。
自分が“見つけた”つもりだったけど、もしかして、赤も誰かに見つけられたかったのかもしれない。
――その「誰か」に、なりたい。
気づけば、緑の箸が止まっていた。
顔を上げると、赤が不思議そうに首を傾げている。
「ん? どしたの?」
「……俺、赤さんのこと、もっと知りたいです」
赤の目が一瞬ぱちりと瞬き、すぐにふわっと笑った。
「……ふふ、変なやつ。でも、ありがと」
その笑顔が、また緑を狂わせる。
――お願いだから、そんな顔しないで。
俺、本気でおかしくなっちゃいそうなんだから。
コメント
1件
第2話もとってもよかった、ありがとう😭💕 緑ちゃんの「近い」「心臓が跳ねる」っていう描写にドキドキが詰まってて、読んでるこっちまで照れたよ! 特に「気づいてもらえた」っていう赤さんの言葉から、緑が“見つけたい側”から“見つける側”に変わるところ、すごく切なくてエモかった… 「お願いだからそんな顔しないで」って緑の本気がにじみ出てて、次の展開が待ちきれないよ〜!🌸🔥