or視点
俺は昔から、誰かを守るヒーローになりたい。そう思っていた。
でも、俺は大切な人を守れなかった。
幼少期
俺には、親友と呼べるほど仲の良い幼馴染がいた。
名前は優(ゆう)。
いつも俺に優しくしてくれて、可愛らしくふわりと笑う女の子。
俺の、初恋の子。
優「ほら〜、はやくおいでよ〜!」
or「まってってばー!w」
優は足が速くて、いつも追いかけっこをして遊んでいた。
といっても、俺は割と遅い方だったからいつも負けていたけど。
or「…っわ!」
優「…!だいじょーぶ?ほら、立てる?」(手伸
or「う、うん…!」
優「おてあてしないとね!こっちおいで!」
or「…、」(頷
優は名前の通り優しくて、俺をたくさん愛してくれた。
だから、同じように俺も優を愛した。
優「ねぇ、or。orはおとなになったら、なにになりたいの?」
or「ぼく?ぼくはね〜、優をまもるヒーローになりたい!」
優「ヒーローかぁ、かっこいいね!」
or「えへへ、そうでしょ?優がこまってたら、すぐかけつけて、たすけるの!」
優「…!じゃあ、わたしだけのヒーロー?」
or「うん!優せんぞくのヒーロー!」
優「やったぁ!やくそくだよ?or!」
or「もちろん!」
優と約束をした。一生優を守ると約束した。
その日からよく優は、俺の夢を確かめてくるようになった。
『まだ優をまもってくれる?』と。
優に頼られることが何よりも嬉しくて、優のふわりとした笑顔を見るたびに心が弾んだ。
そんな楽しい日々。
僕は幸せだった。
だけど、悲劇は突然くる。
優「ふふ、orー!まってよー!」
or「やだねー!w 優がんばれー!」
それはいつものように追いかけっこで遊んでいる時だった。
その時は俺が逃げるターンで、一生懸命走って逃げていた。
前が見えないほどに。
優「……!?or!危ないっ…!!」
or「…っへ?」
優が指差した方を見ると、とても速いスピードでトラックが突っ込んできた。
大きな衝撃を覚悟して目を瞑り、身体中に力を入れる。
その瞬間、大きな衝突音と、体に衝撃が走る。
痛みを覚悟していたが、なぜか1ミリも痛みがない。
はっ、として辺りを見渡すと、
トラックの前に頭から血を流して倒れている優がいた。
or「…っ優!優!!」
優「…ぁ、よかった、ぶじで…、」
or「優…っ、優!しっかりして!しんだらあかん…!」
優「…ごめん、」
or「…っ、!」
そう、優はつぶやくと、綺麗な瞳から一筋涙が溢れた。
段々と優の体の力が抜けていく。
そして優はその綺麗な瞳で俺を捉え、優しく微笑んだ。
大人「…!大丈夫か!?今すぐ救急車呼ぶからな!」
or「…っ、ゆうッ、…ゆう…っ」
大人「もしもし、はい。はい、救急です。ここの通りで事故が…。はい。幼稚園くらいの子供が轢かれて…。はい、お願いします。」
or「ね、ねぇ…、ゆうは、だいじょうぶなの…?」
大人「…きっと大丈夫だ。もうちょっと待っててな。」
or「…っふ、うぅ…。」
そばを通りかかった男が救急車を呼んでくれた。
でも、俺の不安が消えることはなかった。
次々に涙が溢れてくる。
大人「…大丈夫だから、な?泣き止めって…。」
or「ぅ、で、でもぉ…っ、!」
男が頭を撫でてくれたが、それでも涙は溢れてくる。
やがて、救急車のサイレンが聞こえてきた。
救急隊「…!通報してくれたのはあなたですか?」
大人「…はい、そうです。」
救急隊「ありがとうございます、ではすぐに病院へ行きますね。」
大人「はい。ねぇ、僕。」
or「…っ?」
大人「一緒に救急車乗るか?」
or「…っう、うん、!のる…、!」
大人「わかった。じゃあこっちにおいで。」
男に言われるがまま着いていく。
それからのことはあまり覚えていない。
泣き疲れて、救急車の中で寝てしまったようだ。
次に目覚めたのは、病院の待合室のソファの上だった。
大人「…ぁ、目覚めたか。おはよう。」
or「…ぉはよぅ…、。優は…?」
大人「…まだだ。もうちょっと待ってろよ。」
or「…うん、」
その時、奥の扉が開いて、暗い顔をしたお医者さんが出てきた。
医者「…優さんのお連れの方ですか?」
大人「…えぇ、まぁ。」
or「…!おいしゃさん、優は…?」
医者「…すみません…。最善は尽くしたのですが…。」
大人「……!…そぅ、ですか…。」
or「…?」
まだ幼かった俺にはその言葉の意味がわからなかった。
その後、優のお母さんが来て、お医者さんはまた同じことを言っていた。
その瞬間、優のお母さんが泣いて膝から崩れた。
優母「…っそんな、…。なん、で…っ!優が…優が…ッ!」
or「…おばちゃん…、なんでないてるの…?」
優母「…!or…。落ち着いて、聞いてね。」
or「…う、うん、」
優母「…優はね、お空に行ったの。」
or「…おそら?」
優母「…うん、そう。お空。」
or「飛行機に乗ったら会える?」
優母「…っ、ううん、もう会えないの。」
or「…!」
その言葉とおばちゃんの表情で、優が死んだことを幼い俺も理解することができた。
しばらくは寂しい、悲しい、という気持ちで過ごしていたが、小学生になって人の命の重さを知っていくほど、俺の心は罪悪感に蝕まれていった。
優の眩しい笑顔と、耳をつんざくようなトラックとの衝突音。
それがずっと俺の頭から離れない。
あの時、俺がしっかり立ち止まっていれば。
あの時、もっと早く気づいていれば。
あの時、一生優を守ると約束したのに。
あぁ、そうだ。
俺のせいで、優が死んだんだ。
気づけば俺は中学生。
それも、2年生。
クラス替えの時期。
クラス発表の紙を眺める。
or「…今年、喋れそうな人おらなさそうやなぁ…。」
そう考えながら教室に入る。
座席表を見て、自分の席に着くと、もう隣の席になる人が座っていた。
とりあえず、挨拶してみる。
or「ねぇ、そこの君!初めまして、俺はor!君は?」
なるべく笑顔を意識して話しかける。
qn「…qn。」
or「qnっていうんか!qn、よろしくな!席隣やし!俺も、あんま喋れる人おらんかったんよね〜。」
急に話しかけた俺を警戒しているのか、不安そうな瞳でこちらを見つめてくる。
qn「…or、関西の人なの?」
or「え?あぁ、うん。そうなんよ〜。てか、なんでわかったん?」
qn「方言。」
or「え!まじ?方言でとった?隠しとるつもりやったんに〜…。」
「…ふふ、全然隠れてないよ、w」
少し冗談を言うと、qnがくすり、と笑った。
その笑顔が、記憶の中の優と重なった。
その笑顔に俺は救われたのかもしれない。
すぐ俺たちは友達になった。
優しく、ふわりと笑うqnに、段々と愛情が芽生えてくる。
ある日、俺はqnの腕に小さな傷跡があるのに気づいた。
それは気のせいではなかった。なぜなら、段々と傷の跡が増えていくから。
ある日は、小さな切り傷ができていたり、
ある日は、大きな痣ができていたり。
qnを守りたい。
守らないと、あの笑顔が亡くなっちゃう。
or「…俺、子供の頃ヒーローになるのが夢だったんよね。」
qn「ヒーロー?いいじゃん、かっこいい!」
『かっこいい。』そう言ってにこっと笑う君に、俺は恋をした。
or「ふふ、そう言ってくれるなら、俺はqnだけのヒーローになるわ、w」
qn「ほんと?守ってくれるの?w」
or「おん、もちろんや。任せときぃ!」
qn「ふ、ありがとw」
守りたい。
今度こそ、守りたい。
今度は絶対に失いたくない。
この幸せを。
この笑顔を。
ゆっくりとqnに俺の愛を伝えていった。
最初は戸惑っていたが、段々とその愛に笑顔を見せるようになった。
この笑顔を守るために。
この笑顔を壊さないために。
この笑顔を、亡くさないように。
俺は絶対この手を離さない。
たとえ、君に嫌われたとしても。
f i n .
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