テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
第一章:時を越えるクリック
生徒達が登校してくる前の静かな教室。専門学校の臨時講師として働きながら、配信活動も続けているキヨは、仕事の合間にそっとパソコンを立ち上げた。
「さてと…今日の動画、サムネどうしようかな〜」
いつものノリで Google を開いた。だが、検索窓に現れた”急上昇ワード”を見た瞬間、キヨは眉を潜める。
「江戸時代 紅月 燈華 儀式」
「…は?なんだこのワード」
心当たりは、もちろんない。でも──なんとなく胸がざわついた。
指が勝手にマウスを動かし、その候補をクリックする。
画面が一瞬、黒くノイズを走らせた。
「ん?」
次の瞬間、視界が白い光に包まれ──
――ドンッ!
「いってぇ!!」
気づけば石畳の上に倒れ込んでいて、周りは和装の人々が行き交う賑やかな町並み。空気も建物も、どう見ても現代じゃない。
「何これ!?え?俺寝落ちした??」
パニック状態のキヨの前に、ひらりと赤い着物が揺れた。
「大丈夫ですか?」
透き通る声。振り向けば、落ち着いた瞳に、夜の灯火のような優しい光を宿した少女。
──紅月 燈華。
「え、あ、うん。ありがとう」
キヨは衝動的に口が動いてしまう。
「俺、ゲーム実況者なんだけど──」
「げーむ……じっきょうしゃ…?」
燈華は首をかしげた。その仕草が、可愛い。
「えっと…ゲーム実況者っていうのは…つまり、こう…みんなを笑わせたり、叫んだり、叫んだり…叫んだりする職業?みたいな?」
自分でも何を言っているのか分からない。焦れば焦るほど、説明が雑になる。
燈華は困ったように微笑んだ。
「よくは分かりませんが……あなたの声、とても楽しそうです」
心臓が一拍跳ねた。
「……俺の、声?」
「はい。その声が好きだと、そう思いました」
初対面なのに。なのに、懐かしい──そんな感覚が胸に刺さる。
キヨは息を呑んだ。
燈華は優しく手を伸ばす。
「さあ、立てますか?ここは危ないので。私がご案内します」
その手に触れた瞬間、知らないはずの温もりなのにずっと知っていた気がして。
キヨははっきりと理解した。
──この出会いは、偶然なんかじゃない。