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53
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551
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ユーカ
201
廃工場――。
冷たい風が鉄骨の隙間を吹き抜ける。
唯我は地面に押さえつけた男を見下ろしていた。
その瞳には、これまで見せたことのないほど鋭い光が宿っている。
「はい……ゼノスに指示されて、ここで仕掛けろと……」
男は怯えた様子で言葉を続ける。
「俺たちも、なんでこんなことに巻き込まれたのか分からねぇんです……」
唯我の表情は変わらない。
だが、その周囲の空気だけが張り詰めていた。
「ゼノスが……なぜお前たちを使った」
低く響く声。
男たちは顔を見合わせる。
「住む場所もなく、さまよってた俺たちの前に突然現れたんです。仕事を与えるって言われて……気づいた時には、全部あいつの指示通りに動いてました」
「……」
「俺たちも利用されてただけなんです!」
唯我はさらに一歩踏み出した。
「どこにいる」
男は震えながら工場の奥を指差す。
「お、奥です……廃工場のさらに奥に……」
その瞬間――。
唯我の中で何かが決壊した。
忘れようとしても忘れられない過去。
失った故郷。
守れなかった人々。
そして――ゼノス。
唯我は何も言わず立ち上がった。
その背中から放たれる気迫に、男たちは思わず後ずさる。
美鈴もまた、その異変を感じ取っていた。
「……唯我」
唯我は振り返らない。
ただ工場の奥を見据えている。
「私も行く」
美鈴は強く言った。
唯我がゆっくりと振り返る。
その瞳には怒りと悲しみが入り混じっていた。
「ダメだ」
「どうして?」
「来るな」
「ゼノスって誰なの? あなたに何をしたの?」
美鈴の問いに、唯我は一瞬だけ目を伏せる。
だが次の瞬間には、再び冷たい表情へ戻っていた。
「……お前には関係ない」
その言葉が胸に突き刺さる。
美鈴は唇を噛んだ。
だが同時に確信していた。
(違う……)
(唯我は何かを隠してる)
(ゼノスという男は、唯我の過去と繋がっている)
唯我はもう何も語らない。
ただ静かに歩き出す。
工場の奥へ。
復讐の影が待つ場所へ。
「私も行く」
再び美鈴が言った。
「来るな」
「私はもう昔の私じゃない」
唯我の足が止まる。
しかし振り返らない。
「……これは俺の戦いだ」
それだけ言い残し、歩き続ける。
美鈴はその背中を見つめた。
遠く離れていた年月。
再会したばかりの幼なじみ。
なのに、その背中はどこか遠い。
だからこそ――。
(私は知る)
(唯我が背負っているものを)
(唯我の過去も、戦いも、痛みも)
雪混じりの風が吹く。
美鈴は小さく息を吸い込み、静かに歩き出した。
唯我の後を追うように。
そして二人は知らない。
工場の最深部で待つ男が、この再会の運命を大きく変えることになることを――。
コメント
1件
唯我の「お前には関係ない」、あれ痛かったな……。でも美鈴がそれでもついて行こうとするのがすごく伝わってきた。昔とは違うって言い切るところ、ちゃんと成長してるんだなって思った。工場の奥で待ってるゼノスとの対決、どうなるんだろう……目が離せないよ。