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まぁ
145
#憑依
成瀬りん
633
#家族
たつ
53
工場の奥。
月明かりが差し込む鉄骨の隙間から、一人の男がゆっくりと姿を現した。
黒衣。
長い外套。
そして、氷のような瞳。
唯我の呼吸が止まる。
忘れるはずがなかった。
何度も夢に見た男。
憎しみの果てに立つ存在。
「……ゼノス」
男は静かに笑った。
「久しぶりだな、唯我」
その瞬間――
唯我の全身から殺気が溢れ出した。
龍焉刀の柄を握る手が軋む。
「今度こそ終わらせる」
「終わらせる?」
ゼノスは小さく笑う。
「なら、まずは教えてやろう」
静寂。
雪混じりの風が吹き込む。
そしてゼノスは告げた。
「あの日、お前の村を襲った部隊を率いていたのは俺だ」
唯我の瞳が揺れる。
ゼノスは続けた。
「そして――」
その声はあまりにも冷たかった。
「お前の父親を殺したのも、この俺だ」
世界から音が消えた。
唯我の脳裏に、血に染まった父の姿が蘇る。
守ろうとしてくれた背中。
最後まで剣を離さなかった男。
「……貴様」
震える声。
怒り。
悲しみ。
後悔。
あらゆる感情が胸の奥で渦を巻く。
しかしその時――
唯我の中で何かが変わった。
憎しみに呑まれるのではない。
乗り越える。
父の教えを胸に。
自分の意志で。
龍焉刀を構える。
その眼差しはかつてないほど鋭かった。
「ありがとう、ゼノス」
ゼノスが眉を動かす。
「何?」
唯我は静かに言った。
「お前のおかげで迷いが消えた」
刀身が月光を反射する。
「ここで終わらせる」
工場の空気が張り詰める。
宿命の再戦。
復讐ではなく――
覚悟を賭けた戦いが、今始まろうとしていた。
コメント
1件
おお…、ついに来ましたね、ゼノス。第38話、ここまで伏線を丁寧に貼ってきたからこそ、唯我の「ありがとう」がすごく深く響きました。憎しみに飲まれるんじゃなくて、父の教えを胸に覚悟を決める——その成長がかっこよすぎます。次が気になって仕方ない…!