これは、夢だろうか。
視界の端には所々乳白色の薄霧が漂っており、意識や体が妙にふわふわとして安定しない。そして、目の前には何故か昔付き合っていた男がこちらを睨みつけていた。
「オマエ、重いんだよ」
突き放すような口調で吐き捨てられたその言葉に、ピシリと自身の体が凍り付いた。
鼻の奥がツンと痺れるように痛みはじめ、冷たい言葉の針がぐさりと胸を突き刺す。相変わらずこちらを睨みつけ、私の愚痴を垂れ流す男の姿に深い絶望的な気分に襲われた。
愛が重いというか、面倒くさいという自覚はあった。
今まで付き合ってきた人との関係はあまり長く続かなかったし、1年を過ぎる前に別れを告げられたり浮気されたりするということが多かった。
だって好きな人の全部は知っていたいし、好きな人の全部が私であってほしいし、知らないところには行ってほしくない。私以外見ないでほしい。嫌な思い出も良い思い出も全部私であってほしい。世界で私だけを愛してほしい。
そんなドロドロとした思いを堪えきれず、ついつい愛情表現の仕方を間違えてしまう。
治さないとだめということは当然分かっている。だが、どうしても体や言葉がそんな思いに着いてきてくれず、結局何一つ変われない。
「別れよう」
今まで告げられ続けたその言葉をイザナにいわれたら─…
『…は、っ』
ナイフで胸を貫かれたような息苦しさにわたしは目が覚めた。
外はまだ暗い。時計を見るとまだ起きるにはずっと早い時間だった。
そんな時間に起きてしまった私の体中には冷や汗がじっとりと沁みこんでおり、寝起きでぼんやりとしている脳の隙間に不快感が生まれる。
胸をちりちりと熱いなにかで焼かれるような思いが走った。それは決していいものではなくて身体が変に硬直する。
─…久しぶりに嫌な夢を見てしまった。
目が僅かに濡れている。息が浅く、荒い。
ぼんやりとしていつもよりずっと重い頭を働かして、イザナを探す。
探すと言っても彼は私のすぐそばで寝ていて、長く白い睫毛が伏せられた無防備な寝顔が暗い視界に映る。規則正しい健康的な寝息に焦りが泡のように頭から消え、安堵の息を零す。
イザナ。
ちゃんと居る。
傍に居てくれている。
溶けるような安堵感の中に落ちていきいくらか頭の中がすっきりとなってきた途端、喉の渇きを呼び起こされる。
相変わらず体や額には汗が帯のように広がっている。これだけ大量の汗をかいてしまっているのだから水分が限界なのも当然だろう。心の中でそう苦い笑みを零しながらすぐ横で眠っているイザナをゆっくりと避け、リビングへと足を進ませたその瞬間。
「…おい」
どこか掠れ気味の低い声にぐいっと腕を引っ張られ元の場所へと引き戻される。
『あれ…ごめん、起こしちゃった?』
驚きで叫びだしそうになる気持ちをグッと飲み込んで急いで声の下方向を振り向くと、閉じられていたはずのイザナの瞳がまだ眠気は籠っているもののしっかりと開いており、わたしをジッと見つめていた。
「……どこいく気」
私の腕を掴んだまま不機嫌そうな鋭い視線を向けてくる彼の姿につい可愛いなと頬が緩んでしまい、胸が弾みだす。
『水飲みたいなぁって』
「ンなもん気合でなんとかしろ」
言うと思ったと頭の端で笑みを零しながら引っ張られる腕の力に素直に従い、彼の腕の中に体を預ける。その瞬間、頭上で聞こえてくる心臓の鼓動のように規則正しいイザナの吐息とは逆にわたしの心臓はドキドキと限界まで高まっていく。強い緊張感と幸福感が大きな波となってこみ上げてきた。
もう先ほどの夢の余韻すらも消え去り、恍惚感だけが残る。
嫌われているかもなんて考えたくない。
いつか振られるかもなんて妄想したくない。
胸が早鐘を打つこの甘いものだけを感じていたい。
そんな温かさに包まれていると、不意に煙のように意識が薄まっていき、暗闇に慣れた視界は霧がかかったようにぼんやりとしてくる。
あ、寝る。と本能が察知した。
『…だいすき、イザナ』
そう呟いた私の声に返してくれる返事はなかったけど、私を抱きしめる力が強くなったこととちょっとだけ早くなった心臓の音を私は知っている。
続きます→♡1000
ちょっとお知らせ🙇♀️ ̖́-
あたしは春から中学生になりました。
楽しいかと言われれば全力で否定するくらい楽しくないです。
部活は少し前にもちらっと言ったんですけど放送部なんです。正直帰宅部がよかったんですけど担任の先生の圧が怖かったのと先輩方のクセが強すぎて面白かったから放送部にしました✌️
放送部はその名の通り朝、給食、掃除、下校のときに放送する部活で内容自体はそんなに忙しくないんですけど、何を隠そう帰るのは5時半過ぎ。
それから飯食って風呂入って課題して、それに加えて夢小説も書いていたらそれなりに時間が進むんです。たぶん10時は過ぎると思う( ඉ-ඉ )
だから前よりも更新がすっっっっごい遅くなります👉👈
今でもバカみたいに遅いのにごめんね。。。
たぶん土曜日だけになると思う。日曜日もできたら。
できるだけ用事を増やさないようにして更新時間が安定するように頑張ります՞ඉ ̫ඉ՞
てかめっちゃ今更なんですけどあたしプリ小説はじめました❕
テラーと同じ名前なんでぜひぜひ探してみてください
以上です。
コメント
2件
コメントありがとう🙇🏻♀️💟 愛の重い子なんです。。。そういう子だいすきなの👉👈 把握感謝*(„σ̴̶̷̤ . σ̴̶̷̤„) 🎀
1話に続いてまたまた最高です😽 夢主チャン重いのネ。👉🏻👈🏻💗 把握です👍🏻‼️ 体調に合わせて投稿してもらったら それだけで充分です😖💞💞