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キャットタウンの一角には、古びたビルの二階にひっそりと佇む探偵事務所があった。
窓から差し込む柔らかな朝日が、埃っぽい空気の中に金色の光を投げかけている。
その事務所の中には、いつものようにフェリックスとワトリーがいた。
フェリックスは大きな肘掛け椅子に座り、足を組んで新聞を読んでいた。
彼の鋭い目は紙面の隅々まで逃さず、まるで次の事件を見つけ出そうとしているかのようだった。
一方、ワトリーはデスクの向こう側に座り、手に持ったマグカップから立ち上る
ココアの香りを楽しんでいた。ワトリーはフェリックスの友人であり、
探偵の助手として日々彼を支えている。
彼がフェリックスを「フェリス」と親しみを込めて呼ぶのも、長年の信頼関係があってこそだ。
「フェリス、キャットタウンにサーカスが来てるのだ」と、ワトリーが楽しげに言った。
新聞から顔を上げたフェリックスは、微笑みながら頷いた。「そうだね、一度見に行ってみようか」
ワトリーの顔がぱっと明るくなった。「やったあ!」
その瞬間、事務所のドアがコンコンとノックされた。2匹が一斉に振り向くと、
ワトリーが立ち上がり、ドアへ向かった。「お客さんなのだ」
扉を開けると、そこにはキャットタウンの警察官、ジョセフが立っていた。
彼は少し緊張した様子で、帽子を手に握りしめている。
「よ、よう」とジョセフはぎこちなく挨拶した。
ワトリーは眉をひそめた。「どうしたのだ?」
ジョセフは一瞬ためらった後、「じ、実は...
キャットタウンにサーカスが来ているのを知ってるか?」
ワトリーは頷いて答えた。「知ってるのだ、見に行く予定なのだ」
ジョセフは深刻な表情を浮かべた。「それがな、今朝、事故があってな...」
ワトリーは驚きの声を上げた。「事故?」
「ああ、サーカスの看板であるメス猫がリハーサル中に転落して亡くなったんだ」とジョセフは重々しく言った。
ワトリーの顔が曇った。「そうなのか、かわいそうに」
「そうなんだ」とジョセフはうなずいた。
少しの沈黙の後、ワトリーは尋ねた。「で、何か用なのか?」
ジョセフは言いにくそうに言葉を続けた。「これから現場検証なんだ」
ワトリーは理解してうなずいた。「そうか、仕事頑張ってなのだ」と言ってドアを締めようとした。
その瞬間、ジョセフが慌てて言った。「...きて...」
ワトリーは聞き返した。「ん?なに?」
ジョセフは目を逸らしながら言った。「一緒にきてくれ!」
ワトリーは眉をひそめた。「事故なんでしょ?」
ジョセフは困った顔で説明した。
「そうだけど…普通じゃない気がするんだ。」
ワトリーは事態の深刻さを感じ取って尋ねた。「調査してほしいってこと?」
ジョセフは深くうなずいた。「そ、そうだ...」
ワトリーはフェリックスの方を振り返り、問いかけた。「フェリス、どうするのだ?」
フェリックスは一瞬考え、くすっと笑った。「まあいいでしょう、いつも助けてもらってますから」
ジョセフはほっとした表情で言った。「お!そうだそうだ!恩を返してもらうぞ」
こうして、フェリックス、ワトリー、そしてジョセフの三匹は、
何か異変が起きたのではないかと疑いながら、サーカスの現場へと向かった。
サーカスの現場に到着すると、そこにはすでに警察猫のポテトが待っていた。
ポテトは腕を組んで不満げに「先輩、遅いですよ!」と言った。
ジョセフは頭をポンポンしながら「すまんすまん」と答えた。
ポテトはジョセフの後ろに立つワトリーとフェリックスに目を向けると、
「あれ、そちらの方たちは?」と尋ねた。
「ああ、おれの友人でね、探偵なんだ。
見学したいというから連れてきた」とジョセフが説明した。
ポテトは眉をひそめた。
「そうですか、猫が亡くなっているというのに見学とはお気楽な猫たちですね。」
ワトリーは不満を露わにし、
「何を言っているのだ、ジョセフが来て欲しいって…」と言いかけた。
ジョセフは慌ててワトリーの口を押さえ、
「さ、さあ仕事しなくちゃね。ワトリーくんは大人しく見ていてね」と言ってごまかした。
ポテトはため息をついて報告を続けた。
「はい、亡くなったのは、ここのスターだったメスのセリアさんです。
今朝のリハーサル中にロープが切れて転落し、亡くなりました」
フェリックスは疑問を抱いて尋ねた。「ロープが切れた?」
「ええ、宙づりになって演技をする演目がありまして、
そのリハーサルだったようです」
「そのロープは?」
ポテトはロープを取り出して見せた。「これですね」
ジョセフはロープを見て眉をひそめた。「ロープが切れたんだ、これは事故だろう」
ポテトは同意した。「そうですね、管理が悪かったんですね」
しかし、フェリックスはそのロープをじっと見つめて何かに気づいた様子だった。
彼の目は鋭く、何か異常を見つけたように輝いた。
これはただの事故ではないかもしれない、と。
その瞬間、サーカス団に隠された陰謀が、徐々にその姿を現そうとしていた。