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フェリックスはロープを手に取り、じっと見つめながら言った。
「リハーサル中にロープが切れて転落したのであれば、
このロープがこんな切れ方をするはずがありません。」
ジョセフは驚いた表情で問い返した。「な、なに?」
フェリックスはロープを指し示しながら続けた。
「このロープを見てください。もし重さに耐えきれずに切れたのであれば、
繊維がバラバラにほつれているはずです。しかし、これは何か鋭利な刃物で一気に切断されたように見えます。
ジョセフは目を見開き、「ということは、誰かが切ったのか?」と尋ねた。
フェリックスは静かに頷いた。「その可能性はあります。」
フェリックスはロープを調べながら問いかけた。「ロープでどのように吊るされていたんですか?」
ポテトが答えた。「天井に滑車があって、そこに繋いでいたそうです。」
フェリックスは天井を見ながらふと気づいた。2階に部屋がある。「あの部屋は?」
ポテトは首をかしげた。「さぁ?」
フェリックスは2階の部屋へ向かった。
扉をコンコンとノックすると、中から「どうぞ」という声が聞こえた。
部屋に入ると、大道具係のゲンがいた。「警察の方?」
フェリックスは名刺を差し出しながら「私はフェリックスと申します。探偵です。」
ワトリーも続けて自己紹介した。「助手のワトリーなのだ。」
ゲンは少し驚いた様子で「探偵さんが何か?」
フェリックスは穏やかに答えた。「今回は警察官のお手伝いをしています。」
ゲンは肩をすくめ「そうですか。でも、これは事故なんでしょう?」
フェリックスの目はテーブルに置かれた2つの缶コーヒーに止まり
1つを手に取りながら「只今、調査中でして。」
缶コーヒーを戻し、フェリックスは問いかけた。「ここは何の部屋なんですか?」
ゲンは工具箱を持ちながら「ああ、ここは音響や舞台の仕掛けを操作する部屋だ。
猫手が足りないんでね、照明も、音響も全部自分たちで分担してやってるんだ。」
フェリックスはさらに質問を続けた。「事故があった時間もここに?」
ゲンは頷きながら「ああ、いたよ。落ちた瞬間は見てないけどな。」
フェリックスは眉をひそめ「見てない?」
ゲンは少し困ったように「他の仕事もしてるんでね、小道具の整理をこのソファでやっていた。」
フェリックスは頷いた。「そうですか。他に誰かと一緒でした?」
ゲンは首を振り。「いや、オレだけだ。」
フェリックスの視線は再び缶コーヒーに向かい
「では、缶コーヒーが2個あるのはなぜですか?」
ゲンは少し笑いながら答えた。「ああ、それはリハーサル前にエマと打ち合わせで飲んだのさ。」
フェリックスは興味深そうに尋ねた。「エマさん?」
ゲンは頷き「ああ、猛獣使いのエマだ。エマは照明をやっていたはずだ。」
フェリックスは静かに言った。「そうですか。」
その時、団員がが現場に入ってきた。ジョセフが下からフェリックスを呼ぶ
「フェリックス、ワトリー、下に来てくれ、団長と団長が来たぞ」
団長のグレイ、団員のロイズ、マリーナ、エマ、大道具担当のゲンが集まった。
フェリックスは確認した。「これで全員ですか?」
ポテトがメモを見ながら「他の団員たちはサポート要員であり、
今日は来ていません。ここにいるメンバーが主にサーカス団を運営しているそうです」
ロイズはためらいながら答えた。「あともう一匹いるけど…」
マリーナが苛立ちながら言った。「使い猫みたいな者よ。エマ、連れてきて。」
エマは「はい」と言って舞台を出て行った。
マリーナは苛立ちを隠そうともせず、「ねえ!これは事故なんでしょ?もう迷惑だわ!」と声を荒げた。
団長のグレイも同様に、「開園が近いというのに全く!!」と、不満を漏らした。
フェリックスは冷静に答えた。「いえ、まだ事故だとは言えません。」
団長は目を丸くし「なんだと?」
フェリックスは再びロープを見せ「このロープを見てください。何かの刃物でスッパリ切れています。
リハーサル中にロープを切った猫がいるんです。」
マリーナはすぐに反応した。「だったら、ロイズね」
ロイズは驚いき「ボクが?」
マリーナは冷たく言い放った。「知ってるのよ。セリアの束縛がひどいって言ってたでょう」
ロイズは顔を真っ赤にして否定した。「何をいってるんだ!そんな事で殺すかよ!」
どうやら、団員のロイズとセリアは恋猫同士だったが、ロイズはセリアの束縛に嫌気がさしていたらしい
ロイズは目を見開き、声を荒げた。「マリーナ、君だってセリアがサーカスの看板スターになって、
その座を取られて悔しがっていただろう!奪い返そうとして殺したんじゃないのか?」
マリーナは憤然と返した。「座を取られたですって?冗談じゃない!
こんなちっぽけなサーカス団のナンバー1なんていらないわ。」
団長がマリーナの言葉に驚き、声を荒げた。「マリーナ!なんて言い方だ!」
その瞬間、ジョセフが間に割って入った。「ま、まあまあ…1匹ずつ話を聞きますから。」
その時、エマが使い猫を連れて入ってきた。その姿を見たジョセフとポテトは息をのんだ。
顔に鉄の仮面をつけ、手足には包帯でぐるぐる巻きにされているメイド姿の猫(?)だった。
マリーナが冷笑を浮かべて言った。「来たわ、不気味な蛇女が…」
ジョセフは驚きの声を上げた。「蛇女?」
団長は深いため息をつき、説明した。「ええ、こいつはサーカスの中で見世物として使ってる蛇女です。
他に使いどころがないので、普段は雑用係にしてるんですよ。」
ポテトは小声でつぶやいた。「先輩…やばいのが来ましたね。」
蛇女は無言でポテトとジョセフの方を見つめた。ポテトは恐怖に震え、「ひぃ!!」と叫んだ。
その時、フェリックスが冷静に口を開いた。「では、事件発生時刻の皆さんの行動を教えてください。」