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寒い〜〜〜凍え死んでしまいそうだ、
なんて言っていた頃が嘘に思えるほ
ど、暖かい春が探偵社にやってきた。
今日もいつも通り国木田くんが背筋
を伸ばしてデスクの上のパソコンに
向かっている。
国「太宰、今日の任務だが、敦と共に行ってもらう。敦を困らせたりするなよ」
デスクに座る敦くんが苦笑して、
敦「大丈夫ですよ、いつもの事ですから」
と話す。
…、はて、なんのことやら。
太「さぁ敦くん!行こうではないか!」
私よりも圧倒的に細身の体に手を
回してグイグイと探偵社の外へ追い
やった。
敦「な、なにするんですか?!」
太「なにって、今から任務なのだけど?」
敦「はぁ、急に連れ出されてびっくりですよ…そうならそうと言ってください!」
敦くんが少し怒って口をへの字に曲
げたのが可愛くて、もう少しおちょ
くろうと思ったが辞めた。
2人で歩く道は、大変綺麗な桜の道で、
敦くんは私の隣で目を輝かせながら桜
を見つめていた。それが飽きると、次
は落ちてきた桜花をひょいと捕まえて
私に見せる。
敦「見てください太宰さん、桜の花びらですよ、綺麗ですね」
無邪気にそう言って微笑む敦くんの
髪に桜の花びらがついているのを私
もひょいと取り上げて、
太「こんなところにも桜が咲いていたよ」
と敦くんに見せた。
私の顔も、今は敦くんのような
優しい笑顔に変わっているのだろう。
柄じゃないけど、たまにはそんなのも
いいと思えた。
柔らかい風が吹いたところで花びら
を手放すと、それは軽やかにゆらゆら
と揺れ、水面に静かな波を立てて落
ちていった。あとからやってきた
敦くんの花びらも、ゆらゆらと、
私の花びらの近くに静かに落ちた。
太「さぁ、いこうか」