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多分、いや、絶対。俺は死ぬ。
冷たく、湿ったコンクリートからはぴちゃ、ぴちゃと水滴が垂れ続けている。
硬く、決して寝心地が良いとは言えない布の一枚敷かれただけの布団に横たわり、最小限の言動を繰り返している。
今日の天気は晴れだろうか。曇りだろうか。雨だろうか。
天井を見上げても、見えるのはコンクリートだけ。松明の灯りで過労時で見える牢屋ないは質素なもので、人間用とは言えないトイレに、机と言っても良いのか考えるほどに適当に作られた石の机。
貰った紙とペンで日付はわかるものの、窓もなにもない地下牢では日付け以外を確認する術などゼロに近しい。
確か、自分が捕まった日付から一ヶ月ほどの間があり、処刑だったと思う。体内時計で言えば後三週間ほどか。
昔よりも筋肉が落ち、白くなった手を見る。足も痩せ細り、生気などまるでない。
「……みんななにやってんだろ」
たらこや焼きパンがここに来ることはなかった。
最後に人と話したのは、牢屋に入れられた初日あたりの緑くんとの会話だけ。
カビだらけのパンをよこす男とは話したことなどない。
孤独な時間が、流れ続ける。
この無音な牢屋に、1人だけ。
それがどれほど殺人を犯した人間の精神に鋭い攻撃を与えるのか、わかっていてここに入れているのだろうか。
遠くから聞こえる足音は、近づくこともあれば遠ざかる時もある。
誰かの話し声が遠くで聞こえることもあれば、すぐ真横で何かを言っているのが聞き取れることもある。
それが酷く怖くて、せめて話し相手が欲しかった。
『人殺し』
その言葉が、俺の原動力を粉々にしていく。
「ね つ ぼ」
アイツの声で名前を呼ばれる。
「さ し ?」
雑音がその言葉を遮る。
「が ば っ」
段々と声は近づいて、耳元に囁かれた声は、その言葉を拾った。
「ごめんね。ぐちつぼ」
「寂しい?」
「がんばって」
無責任なその言葉を、無視し始めたのはもうずっと前だ。
――――
地下室は驚くほどに静かで、寒かった。
三月下旬は、もう桜が咲いているが寒いのに変わりはなく、地下牢の壁からはひんやりとした寒気が肌に伝わる。
ひた、ひた、とコンクリートを歩く足音が地下牢に静かに鳴る。緑くんは何も言わずに、無言で俺の後をついてくる。
とある牢屋の前で足を止めた。
松明の鈍い灯りがあたりを薄暗い橙に染めている。
牢屋の中には、死んでいるのか、生きているのか、わからない人影が薄い布に横たわっているのが見えた。
――ぐちつぼ。
いつぶりだろうか。三ヶ月は見ていない。話してもいない。
もしや本当に死んでいるのでは?とも思ったが、よく見れば寝ているのか体が小さく上下しているのがわかる。
「ぐちつぼ」
起きる気配はない。
その後も何度か呼びかけるも、全く起きなかった。
「牢屋の鍵、ないもんなぁ……」
「モってくル?」
「いや、…ちょっといい?」
ぺいんとさんはそう言い、金属の細長い棒を取り出した。
「ピッキング?」
「うん。前少しやったことあるんだ」
どうやらそれは本当のことのようで、しばらくして「カチャリ」と言う音が静かな地下に響いた。
開いた牢屋に入れば、それは酷い環境だと言うことがわかる。
酷く、寒い。まるで人ということさえもバカらしくなるようなそんな牢屋だ。
ぐちつぼは質素な服に、裸足。うずくまり寝ているぐちつぼの肩を叩く。
――起きない。
どれほど疲れているのだろう。起きる気配がない。もしや、本当に……。
「……とにかく、檻から出そう」
まるで、俺が脳で考えていたことの続きを遮るかのように、ぺいんとさんはそう言った。
俺もすぐに同意し、ぐちつぼを担いだ。
――
暖かな感覚に、目が覚めた。
いつもの真っ暗な檻の、古びた鉄ではなく、視界に入ったのは真っ青な青空だった。
とうとう死んだか。とも思ったが、横に座っている緑くんが見えたことでその考えは無くなった。
緑の草の上に寝転がって、暖かな日光にあたっている。当たり前かもしれないが、俺はしばらく声を出せないほどにそれを思い締めていた。
「あ、起きた!?よかったぁー……」
「ぁ、……はい、えと……」
緑くんの横に座っていたらしい、ぺいんとさんが安心したような笑顔で近寄った。
動揺と、久しぶりの人との会話で、声が思ったように出ない。
それどころか、視界は滲み、涙が溢れた。
暗い、寒い、あんな所にはもういない。外に出れた、と言う喜び。
ぺいんとさんの笑顔を見た安心感もあったのかもしれない。
「わ、わ、!大丈夫かぐちつぼー!」
「……ッズ、大丈夫…でず……」
たった数ヶ月ぶりの日光は、冷え切った身体をじんわりと、温め続けていた。
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書き溜めていたのはここまでです【土下座】
ちょっとずつ書き進めますが時間かかる可能性しかないです。また、ほかの読み切りを書き進めていたので先にそちらを公開すると思います。
ここまで読んでくださった貴方にご多幸がありますように。
ではまた来年(2027)の春に会いましょう👋
良いお年を!