テラーノベル
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「「「メリークリスマス〜!」」」
かけ声と共にこつんとグラスを突き合わせる乙女が3人。
こさめ、らん、みことはらんの家に集まってクリスマス女子会を開いていた。
部屋は小さなツリーやガーランド、ライトなどで飾り付けられ、テーブルには各々が持ち寄った美味しそうなご飯やスイーツの数々。
ゲームもばっちり準備されており、 インドア派の3人がこれから1日中遊び尽くす用意は整っていた。
「今年もこのメンツだったか〜笑」
「そんなこというんだったらなっちゃん誘えばよかったじゃーん?」
「いやぁ…」
冗談めかして明るく笑うこさめはひまなつに。
「らんらんはいるまくん誘わんくてよかったん?」
「そりゃあ一緒に過ごしてみたかったけど。だって予定あるって言ってるの聞いちゃったし…」
ちょっぴり落ち込んだように小さく笑顔を見せるらんはいるまに。
「みこちゃんもすっちーに言えなかったんでしょ?」
「だってかっこよすぎるんだもん」
軽く顔を赤らめてつぶやくみことはすちに。
3人はクラスメイトの男子3人組にそれぞれ恋をしている。
仲がいいほうなのは自覚しているものの、好きな相手をクリスマスに誘うにはどうしても勇気が足りなかった3人だった。
「ま、今日は3人で楽しもー!」
「結局このメンバーが楽っていうのはあるもんね」
「こさめ、このおっきい苺もーらい!」
「あっ!早い!」
ときどき食べ物をつまみながら、ひとしきりおしゃべりをしたりゲームをしたりしていたものの、午後1時を回ってなんとなく飽きてきたころ。
それぞれが思い思いにのんびりとしていたとき、 突然らんが思いついたように声をあげた。
「ねぇねぇ!いいこと思いついた!」
「お、なんだ」
「もう一回ゲームしよ。で、負けた人は罰ゲームでピン写ストーリーで!…えーと、確かこの辺に…」
クローゼットを開けてなにかを探し出したらんをみて、こさめとみことは顔を見合わせた。
「なんか嫌な予感するんですけど」
「ほんとにそう」
じゃーん、とらんが広げてみせたのはまさにクリスマスの今日にふさわしい、サンタのコスチュームだった。
「らんちゃんってたまにそういうことするよね」
「いいじゃん!絶対似合うから!」
「まっ、こさめはいいよ!なんか楽しそうだし」
嫌な予感がする、と言った割にはノリノリで承諾するこさめ。そんな彼女をみてぎょっとしたのはみことだった。
「えぇっ!?私は嫌やよ!?」
「いーじゃ〜ん?今日くらいなんだし」
「ゲームに勝てばいいんだしね。ねっ、お願い!」
あまりにキラキラした目でふたりに見つめられたみことはため息をつき、諦めるしかなかった。
「…勝てばいいんでしょ、勝てば!」
「はいー!」
「みこちゃぁぁぁあん笑笑」
「もう〜!だから嫌やったのに!」
「じゃ、着てきてくださ〜い笑」
案の定負けて罰ゲームが確定したみことは渋々ながらコスチュームに着替えに行く。
その間、こさめとらんは部屋を整えて写真を撮る準備にとりかかった。
「あ!かわいいー!!」
「やっぱ似合うねみこちゃぁん!」
「もうっほんとに恥ずかしいって…」
「はいっこっち向いてー!」
らんはカシャカシャとみことに向かってシャッターを切り、こさめはそっとみことの髪や裾を整え、ポーズの指示を出す。
みことはされるがまま、言われるがままにモデルを務めた。
「やば、これめっちゃかわいい…!」
「どれどれ?…うわぁ…天才的だ」
「もう…やめてよ//」
明らかに照れるみことを見てくすりと微笑んだふたりはさっそくスマホを開いてストーリーをあげた。
らん
みこちゃんかわいすぎる!!(罰ゲーム)
ゲーム弱すぎなんよな〜?笑
こさめ
罰ゲーム食らってくれてありがとございますっ!
いやぁ、なるべくしてなった感あるよ!
あ、これ見てみこちに惚れた人、正直に名乗り出てな?
「うわっ!」
「急になに?」
「びっくりしたぁ…ひまちゃんどした?」
公園のベンチに腰かけ、冬にも関わらずアイスを食べていたひまなつ、いるま、すち。
ひまなつはたった今見た画面をふたりに見せた。
「…え、//」
「ふーん、すち、ご褒美じゃん」
らんとこさめのストーリーに写るみこと。
サンタのコスチュームを身に着け、すこし恥ずかしそうにはにかむ彼女はいつにも増して可愛らしかった。
「かわい…」
思わず本音を漏らしてしまい、ハッと口を押さえるすち。それをみてひまなつといるまのふたりは揃って吹き出した。
「すち、おまえ…もう隠す気無いのな」
「みことね。いいじゃん。素直だし、いい子だと思うけどね」
さっと顔を赤くするすちを両側からつつくひまなつといるま。
その仕草は決して馬鹿にしたりからかったりするものではなく、あたたかく応援する心が現れたもの。
すち自身もそれをわかっており、目を伏せながらもヘタに否定はしなかった。
「いまは…2時だろ?すち、今からでも誘うか?」
「…え?」
すちは突拍子もないひまなつの提案に目をぱちくりさせる。
「え、でも…ふたりは…」
「言ってなかったけど俺、こさめのこと好きなんだよね」
「え!?」
「あー…// らん、かわいいよな」
「え、そうだったの!?」
いるまは突然のカミングアウトに驚きを隠せないというように口をぱくぱくさせるすちを小突き、電話を催促する。
「ほら、みことにかけてみなって」
「えぇ…俺?」
「他のヤツも同じこと考えてるかもよ」
「かける」
ちょっと煽っただけで迷いなくコールボタンを押すすちを横目に、ちょろ、と笑いを堪えられないひまなつ。いるまはひまなつをちょいちょいと手で誘い、そっとすちのスマホに耳を傾けた。
プルルルルル…
「わあっ!? 」
「びっくりした、誰?」
「あ、私かな?…ってえぇっ!?」
「なになに?!」
「す、すちくん!」
「それはとりあえず出て!」
まさかの発信者に、3人とも動揺を隠せないながらもみことはスマホを耳に当てた。
「…もしもし、すちくん?」
『あ、みこちゃん?急にごめんね?』
「ぜんぜん!どしたの?」
『えと…今、いるまちゃんとひまちゃんといるんだけどさ。よかったらこのあと会えない?らんらんとこさめちゃんも一緒に』
「えっ!?ちょ、ちょっとまってな」
なんだった?と首を傾げるふたりにすちからのお誘いを告げると、ふたりとも目を丸くして驚いた。かろうじて叫ばなかっただけよかっただろうか。
「で、このお誘い…」
「「受けるに決まってる!」」
「そうよね!じゃあ、答える」
みことは賛成の旨を伝え、そのあと軽く待ち合わせの相談をしてからそっと電話を切った。
「どうしよー!」
「なんかあんま飲み込めてないけど…みんな良かったじゃん!」
「とびきりかわいくしてこーね!」
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