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代替恋人
wki . omr
― 1 ―
omr side
代わりでいい、と言ったのは僕の方だった。
正確には、 「今はそれでいいよ」と笑った。
グラス越しに揺れる彼の視線は、 誰かの名前を飲み込んだまま、僕を見ていた。
「やっぱり元貴といると安心する」
その言葉を、何人が信じてきたんだろう。
でもあの夜の僕は、 選ばれたかもしれない側でいたくて、 真実より可能性を選んだ。
終電間際のホーム。
触れた指先は、迷いながらも離れなかった。
それだけで十分だと思った。
誰かの隣が空くまでの、 仮の居場所でも。 彼のスマートフォンは、 いつも伏せられている。 鳴らない通知音に安心して、 鳴るはずのない音に怯える。
ぼくは知っている。 この関係には 名前がないことを。
恋人でもなく友達でもなく、 未来でもない。 ただの代替。 それでも、 彼が笑うたびに胸が熱くなる。
代わりなら、壊れてもいいはずなのに。
どうしてこんなに、 本物みたいに痛いんだろう。
oms side
若井と浮気。心では駄目と分かっていても身体は分かってくれない。
若井の本命の相手とは、女の子で可愛くて…清楚で愛嬌もある。
そろそろ結婚するって言って、指輪を探しているんだって。若井、とっても幸せそうだけどその女の子は、若井が浮気してるってこと、分かってるのかな?
今日も今日とて、若井は「ここが居場所だ」と言わんばかりにズカズカ僕の家に入ってくる。コンビニの袋をぶら下げながら。その袋の中身はどうせまたくだらないものだろう。
「…若井、今日は何買ってきたの?笑」
「ん、元貴が好きなぶどうのアイス」
どうやら若井は僕の大好物のぶどう味の棒アイスを買ってきてくれた。丁度食べたいなと思っていたところだから、ラッキー。
「やった!若井、ありがとう…大好き!」
「…俺も」
照れながら髪を掻きむしる若井。そこが愛くるしくてつい撫でたくなる。少し耳を赤くしてたのは、僕は気づいただろうか。
ぶどう味のフローズンの棒アイスを頬張りながらぼくはリズムを刻むように足を揺らす。
こんなときだけはぼくが「二番目」だってことも忘れさせてくれて、ぼくだけを見ててくれる。そんな感情になって、薬物みたいにしあわせ。
「…それ毎回食べてるけど本当に美味いの?」
「おいしいよ?一口いる…? 」
そこら辺の抹茶とかオレンジのアイスとかより断然美味しいと思う。子供っぽいけど、若井はそうやって子供っぽいところが好きらしい。物好きもいるもんだなって、分からされる。
「…いる、ちょうだい」
「…いるんだ……はい、あーん!」
「いる」と言う単語に少し戸惑ったが、僕が3口ほど食べたアイスを口まで届ける。若井は素直に口を開けてアイスを頰張ると、少し顔を顰める。どうやら冷たいものを突然食べて頭がキーンっとしてしまったのだろうか。かわいいなぁ。
「うーん…まぁ、美味い」
「でしょっ?…ふふ、気に入ってくれたかな」
肩と肩をくっつけて体温を共有するように二人とも手を繋いだ。こうやってしているとたまに若井は僕のもの、とかそういう独占的なものが浮かんできてどこにも行ってほしくなくなる。彼女とかより僕優先にしてほしいよ。
「アイス食べたら、ベッド行こ」
「またぁ…?昨日もしたよ」
「いいの」
昨日は一日中してたのかってぐらい長い時間二人で愛し合った。嬉しいんだけどね。若井はテクニックも上手だしSになるとすんごい僕支配されちゃうし。これだけ相性ぴったりなのに。
アイスを食べ終わるとぽい、とゴミ箱にアイス棒を捨ててから2人でベッドに向かった。ベッドの近くには本を何冊かとティッシュ箱をひとつ。
秘密だけど、ベッドの下には小さなボックスがある。その中には大人のおもちゃとか、いろんなのが入ってる。僕が一人でするときも若井って想像できるようにサイズも若井に合わせた。全部。
「ねぇ、今日すんごい意地悪したい」
若井はそれを言うと同時に僕のことをふかふかシーツに押し倒してきた。首筋に顔を埋めてから数秒後に首を吸う音が聞こえてきて。
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コメント
1件
んん~第1話からすごく重くて、好き……🤍 「代わりでいい」って言ったomrの諦めと、「二番目」って自覚しながらも若井の温もりに溺れてくomsの甘やかさ、どっちの視点も切なくて胸がぎゅってなった。 特にぶどうアイスをあーんしてるところ、一瞬だけ本物の恋人みたいなのに、その直後にベッドに連れてかれる流れがもう、関係性の歪さをそのまま映しててすごい。 「代わりなら壊れてもいいはずなのに、本物みたいに痛い」——ここが全部だと思いました。続き、読みたいです。