テラーノベル
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第33話
夏休みが開けて数週間。
ハンナも、ミヒャエルも完全に疲れが取れた様子で、食堂に来ていた。
……ハンナの実技テストは、毎回ダントツトップ。ミヒャエルは、マリアと同率二位。
俺はその間、ハンナの魔力の中でお昼寝していた。
食堂にいる間は、外に出てるけど。
「……そんで、俺はあれから、何十人と刺客に狙われて、全部気づかなかったと」
「ミヒャエルっ。声が大きいっ」
俺が釘を刺しながら言ったら「すまない」と呟いた。
「でも、真実ですよ。まぁ、気づかなくても、私が処理しますので、気にしなくて大丈夫です」
ハンナは、少し思い詰めた表情をするようになった。別に、疲れているというか……そう言うんじゃない。
現在進行系で、何かに追われている。追われて疲れたんじゃない。
「ハンナ。大丈夫か?」
「あ、うん。大丈夫だよ」
平気な顔して……上手じゃない。
もっと、上手くできないもんなのか? そんなに隠したいんだったら。
「まぁ……俺は少なくとも、二人がいなかった時に、殺されるな」
……こちらさんも、平気な顔が下手だった。
「ま、当分は安全って事だな。出れない時は俺がこっそり、始末すればいいんだし」
「まぁね……元凶も、夏休みの内にとっ捕まえたかったけど……例のギルドの情報収集は、かなり難関だからね……」
そう言えば、裏のギルドの情報収集は教皇様の密偵に頼んでるのか……それも、大体一年前か……
「八歳児にそんな、例のギルドなんて……」
「一応、ミヒャエルさんよりも、黒猫よりも強いです。私にそんな心配するのは早いです」
ハンナは、ため息を吐きながら、リゾットを口に運んだ。
……まともな食事をし始めたのも、一年前だっけな……
はぁ〜……何だか、やっと普通になってきたような気がする。
長かったな……六年目で、そう思えるように……え? いつになったら、ルイスの『この子の常識を世間一般常識に戻して欲しい』っていう、依頼を終えられるのか……
その日の放課後。
ハンナは、直ぐに寝た。夜の九時頃だ。
まぁ、コイツも成長期。だけど、警戒しながら寝てるから、意味があるのか無いのか……謎。
ノックが三回鳴った。扉の奥には教皇様の魔力が見える。
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「夜分遅くにすまない。ハンナか、黒猫はいるか?」
俺は、教皇様の声を聞いてから扉を開けた。
「はい。ハンナは、寝付いています」
「そうか。ハンナが健康診断で、引っかかってる。精密検査を受けてもらう」
……え? どういう……
俺は何拍か呆けたけど、我に戻った。流石にそんな段取りの悪い事をするわけがない。
「……それだけじゃないですよね?」
「まぁ、お見通しだな。それと、ハンナと黒猫、別行動を取ってほしい。他に頼める腕利きの者が見つからなくてな」
そう言って、俺にナニカの紙の束を渡した。
「頼むぞ。黒猫は、ここに残ってもらうから、安心しろ」
「はい」
俺が一礼すると、教皇様は「よい夜を」と言いながら、去っていった。
俺は、部屋で机に紙を広げて見た。
……取り敢えず、ハンナの異常値は、戦闘能力だけじゃなくて、体にも反映されてるらしい。
八歳の平均体重にも、平均身長にも……色々と足りてない。
でも、五感の検査は全部健全。と言うか……平均超え。
問題は、その中に紛れていた『別行動』についての紙だった。
……まぁ、要約すると、俺はここに残ってミヒャエルの護衛をするけど……ハンナは、王城でメイドを務めろって……
「嘘だろっ……」
「ん……? 何が嘘なの……?」
ハンナがいつの間にか、目を開けてベットの上で俺の方を向いていた。
心なしか、顔色が良くない気がする。
「いや……詳しくは、また明日の朝だ。今は寝てろ」
「はーい」
ハンナは、不機嫌そうに頬を膨らませて、また眠りについた。
……明日の朝か……
まぁ、この紙には、来週から……え? 来週から?
俺は、ため息を吐きながら、猫の姿でソファーの上で丸くなった。
すまない。
心の中で呟いて、深い眠りについた。
✵
翌朝。
黒猫に話を聞いたけど……急過ぎる。
精密検査は、面倒だけどまだまし。
来週から、王城でメイド……ん? 本当に何が起こったの?
「……って事なので、よろしくお願いします」
ベランダでミヒャエルさんと黒猫と私で、防音結界を張りながら話している。
「分かった。それはいつまでとか、あるのか?」
「いえ、特にはありません」
「そうか……」
ミヒャエルさんは、そう言ってピョンと、こっちに飛び乗った。
コメント
1件
えぇ〜!!?😭💦 急すぎる展開すぎて心臓バクバクしてる!! 検査で引っかかって別行動って…しかもハンナが王城でメイド!?黒猫と離れるの寂しすぎるよぉ…。でもそれ以上に、密かに思い詰めてたハンナの表情が気になって仕方ない…。不機嫌そうに膨らませた頬が健気で切なすぎるんだが…🥺 続きが気になりすぎて今夜眠れそうにないです!こはる先生、また神回ありがとうございます🌸