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最近、私の一日はすみれを中心に回っている。
朝、教室に入ってまず探すのはすみれの姿。
昼休み、気づくと彼女の隣に座っている。
放課後、彼女が先に帰ってしまうと、
胸の奥が少しだけざらつく。
「……また一緒にいられるね」
そんな何気ない言葉すら、
私にとっては救いみたいに感じてしまう。
誰かと話している彼女を見ると、
胸がちくりと痛む。
笑顔を向ける相手が自分じゃないと、
取り残されたような気持ちになる。
(私だけに見せてくれる笑顔でいてほしい)
そんな願いが、日に日に強くなる。
でも、そんな気持ちは言葉にできない。
“友達”という距離感が、私をぎりぎりのところで留めている。
ある日の夕方、
すみれがふと呟いた。
「ねえ、最近……疲れてない?」
私は思わず、ごまかすように笑った。
「そんなことないよ。むしろ、すみれと一緒にいると落ち着くから」
「……でも、それが全部になったら、ちょっと怖いよ」
すみれは優しく笑ったけれど、
その言葉は、私の心の奥を正確に突いてきた。
全部になったら、怖い。
でも私は、すでにすみれなしじゃいられなくなっている。
「私は……すみれがいないと、ちょっと、苦しいかも」
本音が、こぼれてしまった。
すみれはその言葉を受け止めて、しばらく黙っていた。
そして、かすかに笑ってこう言った。
「じゃあ、今はまだ“ちょっと”なんだね。
そのくらいなら……私もまだ大丈夫」
私はその言葉に救われたふりをした。
けれど心のどこかでは、もう“ちょっと”なんかじゃないことに気づいていた。