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すみれ

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すみれ

12 - 第12話

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2025年06月28日

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ある日を境に、すみれは少しだけ変わった。
昼休み、先に教室を出ていくようになった。

放課後、「今日は寄り道できない」と小さく笑って帰っていくことが増えた。

連絡先を聞こうとすると、軽くはぐらかされた。


「別に、連絡なんてなくても、明日も会えるでしょ」


それはきっと、やさしい言い方だった。

けれど、私は笑えなかった。


(すみれは、少しずつ私の外側に行こうとしてる)


気づいていても、聞けない。

問い詰めたら、終わってしまいそうだから。


でも、ある日の放課後、

どうしても黙っていられなくなった。


すみれが帰り支度をしているとき、

私は思わず声をかけていた。


「最近、避けてる?」


すみれは手を止めて、ゆっくり顔を上げた。

その目は、私の言葉を否定もしないし、肯定もしなかった。


「……依存って、されるとちょっと怖いんだよ」


その一言が、まっすぐ心の奥に刺さった。


「怖いって……私、そんなつもりじゃ」


「うん、わかってる。

 でも、“つもり”じゃなくても、

 相手にとっては重くなることってあるから」


私は、返す言葉を探した。

でも見つからなかった。


その沈黙の中で、すみれがかすかに微笑んだ。


「ねえ、名前も知らない人に、

 全部をあげるのって、少しこわくない?」


私は――言葉が出なかった。

すみれは鞄を肩にかけて、そっと視線を逸らした。


「また、明日ね」


それだけを残して、教室を出ていった。


私はその背中を、呼び止めることができなかった。

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