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カーテンの隙間から、一人の男子生徒がゆっくりと姿を現した。
乱れた制服のシャツ、無造作に跳ねた黒髪。そして、すべてを見透かすような、鋭くも冷めた瞳。
愛梨は息を呑んだ。そこに誰かがいたことよりも、今の自分の「剥き出しの本音」を、よりによって生徒に聞かれた事実に血の気が引いた。
「……もしかして、今の話、聞いてた??」
絞り出した声が震える。生徒はベッドの縁に腰を下ろし、面倒そうに首を回した。
「嫌でも聞こえるんすけど。ここ、防音じゃないんで」
その声は、まだ少年の幼さを残しながらも、驚くほど低くて落ち着いていた。名札には『瀬田』とある。高3の瀬田海里。職員室の座席表で、要注意人物として名前が挙がっていた生徒だ。
「……っ、ごめん。忘れて、今の。お願い」
愛梨は必死に懇願した。教師が初対面の生徒に、自分のスキャンダルの真相をぶちまけるなんて、前代未聞の不祥事だ。
しかし、海里は鼻で笑った。立ち上がった彼は、思ったよりも背が高く、愛梨を見下ろす形になる。
「忘れるって、何を? 先生が元彼にハメられて、可哀想にここまで飛ばされてきたって話?」
「それは……っ」
「……てか、復讐しなくていいんすか、その男に」
唐突な言葉に、愛梨は呆然と彼を見上げた。
「……え?」
「復讐ですよ。どう考えても先生は損しかしてないじゃないですか。そんなに泣くほど嫌な思いして、仕事まで奪われて。なのにお人好しに『仕方ない』で済ますわけ?」
「別に、仕方ないから……。話し合いとはいえ、既婚者の先生と二人でご飯に行ったのは私だし……」
「ふっ。その男もなんなんですかね。自分に自信が無いだけなんじゃないですか? 女の居場所奪って縛り付けるなんて、ガキのすることだ」
海里の言葉は、まるで愛梨の心の傷に直接触れるように、残酷で、そして的確だった。彼は窓際へ歩き、西日に目を細めながら、とんでもないことを口にした。
「俺と組みません?」