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「……組むって、何を?」
愛梨の問いに、海里は窓枠に肘をついたまま、不敵な笑みを浮かべた。
「決まってるでしょ。その元彼に、先生を自由にしたことを後悔させてやるんですよ」
「……馬鹿なこと言わないで。あなたは生徒で、私は教師なのよ? 復讐なんて、そんなドラマみたいなこと……」
「ドラマよりよっぽど酷い目に遭ってるのは、先生の方でしょ」
海里は窓際から離れ、ゆっくりと愛梨に歩み寄った。一歩、踏み込まれるたびに、彼が纏う熱っぽさが伝わってくる。
「いいですか。その男――佐藤でしたっけ。そいつは、先生が今もどこかで泣いて、自分との過去に縛られてると思ってる。だから優越感に浸れる。だったら、その逆を見せつけてやりゃいい」
愛梨は言葉を失った。海里の瞳には、ただの好奇心ではない、何かを見透かしたような知性が宿っている。
「先生が、その男よりも若くて、将来性のある『新しい男』と幸せそうに笑ってたら? ……そいつ、発狂するんじゃないっすか?」
「新しい、男……?」
「そう。例えば、俺みたいな」
心臓がドクンと跳ねた。
「正気なの? あなた、受験生でしょ。こんなことに関わってる暇なんて――」
「退屈なんですよ、この学校。親の言う通りにしてりゃ勝手に卒業。でも、先生みたいな『面白そうな爆弾』が降ってきたなら、話は別だ」
海里は愛梨の目の前で立ち止まった。
「俺が先生の隣にいてやる。復讐のために俺を利用すればいい。……どうせ、もう失うものなんてないんでしょ?」
愛梨は唇を噛んだ。彼の言う通りだ。キャリアも、名誉も、都会での生活も、すべて佑真に奪われた。
けれど、目の前の少年の瞳は、あまりに真っ直ぐで。
「もう終わったことだから……。私はここで、静かに過ごしたいの」
それが、愛梨にできる精一杯の拒絶だった。
「……そうですか」
海里はあっさりと引き下がった。けれど、部屋を出ようとしてドアノブに手をかけた瞬間、彼は振り返らずにこう言った。
「でも、先生。逃げてきたつもりかもしれないけど、ここはあいつの手の届く場所ですよ。……俺なら、追いかけますね。俺の所有物(おもちゃ)が、こんなとこに隠れてたら」
冷たい風が吹き抜けた気がした。