テラーノベル
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瑞百要素有 .
推定 5000文字以上
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十年前、窓を眺めていたら勢いよく病室の扉が開いた。
ダンッていう鈍い音が聞こえて、驚きながら扉の方向に視線をやったら土だらけの服とぐちゃぐちゃの髪をしたこさめが立ってた。
瑞『 らんくん ! 桜付いた枝な 、持って来たんや − !綺麗やろ?! 』
百『 折ったの? 』
瑞『 違うから!?落ちてたの拾って来た !! 』
瑞『 らんくん 桜 直 で見たい言ってたでしょ − ? 』
元気良く俺が寝てるベッドに飛びついて来た。
横たわっている俺にも見えるように一生懸命説明してくれた 。
いつもの花冠も作って持って来てくれた 。
もう花冠がこんなにあるというのに飽きずに毎日持ってくる 。
忙しくて偶にくるママ達に持って行って貰ってる
_『 ちょ 、こさめくん!汚れた服で病院入って来たら駄目 !これ何回目 ? 』
瑞『 ごめんなさ – い!!( 焦 』
瑞『 でもねでもね!?らんくんいっつも嬉しそ − に受け取ってくれるの!!( 笑 』
_『 それはいい事だね、でも迷惑になっちゃうからね 。 』
瑞『 は – い … 。( 落込 』
いいよね 、こさめは元気で 、俺と違って 。
ほんと 、世界は不平等だよ 。
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百『 え 、 』
それから十年後のこの日 、俺は主治医に告げられた 。
_『 ですから 、貴方の病気は進行しており 、余命僅かです 。 』
溜め息を吐いて 、キーボードを指で叩いてデータを打ち込む 。
やっぱり他人事だから 、お医者さんは、病気してないもんね 。
百( 十九年 、頑張って来たのにな … 。 )
産まれてから早十九年 、外に出た事も滅多にない
出たとしても数十分の車椅子を押されるだけの散歩 。
俺の行動範囲は病院の外から移動したことなんてない。
百『 … 有難う御座いました 。 』
そう呟いて病室を出た 。
気持ち悪くて 、目眩や頭痛が止まらない 。
毎日毎日吐いて 、力も段々入らなくなって 。
百「 馬鹿みたい … 。 」
俺は今までなんの為に生きてきたのか、疑問を抱く時かある。
今がその時であること、全部頭では理解している。
でも人としての理性と感情が入り混じる。
百「 ぅ ゛あ … 。( 泣 」
小さく縮こまって静かな声で泣くのは俺の産まれてからの癖だ。
みんな俺を感情的にならない優しい青年だと思っている。
いい子で、静かな少年。
百『 なんでだよ 、… ッ 一回くらい 報われたっていいじゃんか … 。 』
自分の幾度と流れる涙も、汚らしく濁った血を含む嘔吐物も何回も、何百回も見た。
その度に悔しさでいっぱいになる。
俺は何も出来ない人間という事実に心が騒めく。
百『 … … 、 』
手摺りに身体の力を委ねて、ゆっくり歩き続ける。
足取りが重い、少しでも治って欲しいって、今更思っても治る事なんてないのに。
瑞『 らんくん ッ 、っ!! ゛ 』
息を荒くしたこさめが走ってこちらに寄って来た。
こさめは俺と違って走れるんだよね、いいな ぁ … 。
百( 俺も走ってみたいな ぁ … 。 )
走ったり、少しでも早く歩いたら咽せてしまうから、だからゆっくり歩くしかない、どんなに走りたくても 。
俺のことを自由になんてしてくれない。
瑞『 大丈夫なん !? 聞いたけど … 、らんくん ? 』
百『 大丈夫 、今は一人にさせてくれる ? 』
百『 俺は大丈夫だからさ 、それにこさめ今テスト期間じゃん 、早く勉強して来なさい!( 微笑 』
瑞『 そうだけどさ … 、… 連絡頂戴 … 。 』
百『 わかってるよ 。 』
瑞『 、またね 。( 手振 』
百『 うん 、また 。 』
俺は今 、どれ程惨めなのだろうか 。
俺も勉強したいな 、運動したいな 、遊びたいな 。
百「 ふざけんなよ … ッ 。 」
叶いもしない言葉を言って、声を押し殺してベッドに突っ伏しないがら泣いた 。
日差しが窓から指していても、俺に当たることはない。
まるで俺のことを見透かしているかのように 。
百「 ぁ “ ぁ あ … 、ッ !( 泣 」
こんなの不公平だよ 。
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こさめが昔、出会った人はとっても病弱だった 。
初めて会った時は、物心ついている筈なのに声も真面に発することが出来なくて 。
こさめが言葉を教えてあげていた 。
瑞『 すみません 、いつも 来ちゃって … 。 』
十年以上、通い続けた 。だって約束したから 。
ちっちゃなちっちゃな約束だけど 、それはらんくんにとって、とても大きな約束 。
ただ 、一緒に料理を作ろうって 。
美味しい料理を一緒に作ろうって 。
そんなちっちゃな願い事 。
瑞『 … 騒がしいな 。 』
らんくんが居る病室へいつものように向かっていると何処かの病室が騒がしかった 。
でもらんくんの病室へ近付く度、その音は大きくなる 。
瑞( もしかして 、 )
らんくんが暴れたことはなかったから大丈夫だと思っているけど 、昨日の今日だ 。
らんくんだって、本当は辛い。
瑞『 らんくん !! 』
勢いよく病室の扉を開けると近くの物を看護師さんに投げているらんくんが居た 。
顔が見えない 、髪を振り乱して何かを叫んでいる 。
聞いたこともない怒号だ 。
瑞『 らんくん ッ 、落ち着いて ! 大丈夫だから … 。 』
百『 うるさい ッ ッ ! こさめなんかに分かる筈ない っ ! ほっといてよ ッ っ !! 』
その言葉が胸に詰まった 。
こさめは何も知らないよ 。知らないから言えるんだ 。
無謀で誰もが阿呆らしい言うだろう 。
知ったかで御免 、でもこさめには理解のしようがないんだよ 。
瑞『 ごめんね 、でもこさめ達にはなんにも分かんないの 。 』
_『 らんくんがどんなに苦しくても 、慰めることしかできないの 。 』
_『 だってその辛さはらんくんにだけのし掛かってるから 。 』
瑞『 ごめんね 、らんくん 。 』
俯いて 、声を押し殺して涙を手で必死に拭っている 。
今までもこうして自我を殺していたのだろうか 。
どの道 、俺には分かることはないけど 。
百「 なんで 、なんでよ … ゛。( 泣 」
瑞『 らんくん ? 』
小さな手を固く握り締めて 、シーツに拳を打ち付ける 。
呻いて 、落ちた涙がシーツに染み込む 。
百『 なんで … ッ 、゛こさ と 生きられないの 、ぉ ” … ?( 泣 』
_『 ひぐ 、ッ … ゛ぁ 、あ … 。( 泣抱締 』
小さな手 、育ち切っていない小さな手 。
産まれてからずっとこの病棟で暮らしてきたことを表すように、
身体だって、力を入れたらすぐに折れてしまいそうで。
瑞( 俺 が 代わり に なれたらな ぁ … 。 )
そうなれたなら、どれ程楽だっただろうか 。
そんな願望を吐くだけなら 、簡単なんだろうな
_
翌日 、らんくんの元へ行った 。
なにも話してくれなかったけど 、俺の話を聞いてはくれた 。
何度も何度も頷いて 、楽しい話をすれば笑ってくれた 。
手を繋ぐと 、いつも通り繋ぎ返してくれた 。
いつものらんくんなんだって思った 。
いや 、ちょっと違うのだろうか 。
瑞『 らんくん 、余命一年って言われたんやんな 。 』
俺が発した言葉にらんくんはぴくりと肩を揺らして反応した 。
やっとらんくんがこっちを見いてくれた 。
その時の顔は真丸な目を見開いて 、少し悲しげな表情を浮かべてた 。
真っ直ぐ 、俺のことを見てた 。
瑞『 らんくん 、弱っちゃ駄目 。 』
瑞『 俺 が 言うことやないけど 、気持ち を 強く持って 。 』
瑞『 病気 は 気 から っ て いうでしょ? 』
瑞『 どんな治療 を しても 治ること が ないんなら 、これから の 時間 を 楽しく過ごそうや 。 』
瑞『 偶 には 自由 に 生きても文句 は 言われへんのちゃうん 。 』
俯いているらんくんのことを抱き寄せてその頭を撫でた
さっきまで下がっていたらんくんの口角が少し緩んだ 。
俺は純粋にそのことが嬉しかった 。
太陽のような笑顔 、それがらんくんの元々の姿
今は傷だらけの萎れた花のようだ 。
百『 楽しく生きていいの ? 』
瑞『 いい に 決まっとるやん !! 』
瑞『 らんくん は 人生 っていう 時間 を 楽しむ為 に 産まれてきたんやから !! 』
その言葉を聞いて 、らんくんの目に光が灯った
嗚呼 、大好きだよ 、その無垢な顔 。
俺が見てた昔のらんくんは輝いて見えた 。
それが元に戻ったんだ 。
瑞『 二人 で 色んな所 に 行こう ! 色んな物 を 食べよう !色んな経験 を しようよ !! 』
瑞『 だから 、リハビリ 頑張って 、こさめ と 行こう 』
瑞『 人生 最後 の 長旅 。 』
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それから二年の時が経った 。
リハビリは一年程掛かったが 、もう人の手を借りずにも歩くことができている 。
退院した時にこさめ達は籍を入れた 。
指輪に埋め込まれた宝石と同じくらい輝いたらんくんの笑顔があった 。
でも病気は今でもらんくんの身体に蔓延っている
百『 次 、何処行こっか 。 』
瑞『 此処とか !此処 の 食べ物美味しいんだよ ~ !』
百『 そうなの !? じゃあ 行ってみよっか 。 』
時間がある限り 、らんくんと色んな場所に行った
あの陰気臭い病院より 、こっちの方がずっと楽しそうに思えた 。
でもそれは束の間の平穏に過ぎない 。
日々は突然終わりを遂げるんだから 。
_
そのニ年後 、らんくんが倒れた 。
流石にそろそろ身体が無理になってきたらしい 。
身体に点滴を打って 、病院に運ばれた 。
わかってはいたが 、余りにも突然過ぎた 。
こさめはまだ心の準備なんて出来てない 。
_『 今夜 が 峠 に なると思います 。 』
数週間後 、医者にそう言われた 。
まだ微かに暖かみを残している手を握った 。
百「 こさめ … ? 」
瑞『 こさめだよ 、どうしたの ? 』
百「 こさめ … 、俺 が 居なくなっても 罪悪感なんて感じないでね 。 」
百「 それと 、後なんか … 追おうとしないで 。 」
百「 そんなことしたら 俺 、こさめ の こと 、嫌い に なっちゃうよ ? 」
か細く力のない声で俺にそう告げる 。
自分がもう長くないって悟ったのかな 。
なんか 、不思議だな 。
手が震えてきちゃう … 。
百「 こさめ 、そんな泣いちゃ駄目だよ 。 」
百「 こさめらしくないな ぁ … 。( 微笑 」
瑞「 ぃかないで … っ 、らんくん … 。 」
百「 こさめ ? 」
瑞『 … なぁ に ? らんくん 。 』
最後くらい 、優しく見守ってあげよう 。
最後 、くらいは … 。
百『 … この世 には ね 、絶対的 な 幸せ は ないの 。幸せっていうのは いつまでも 続かない 』
百『 でもね 、それを言ったら逆 も そうなんだよ 』
瑞『 ぇ ? 』
百『 絶対的 な 不幸 も ないの 。 』
百『 絶対 、何処 か に 幸せ が あるの 。 』
百『 だから 大丈夫 … 、それに 、俺 は 十分 幸せだったと思ってる 。 』
百『 他 の 人 の 何万倍 も っっ ! … 幸せだった と 思う 。 』
百『 じゃなかったら … 、好きな人 と ずっと一緒 に なんて 居られなかったよ 。 』
頬を優しく撫でるらんくんの力が弱まっていく 。
目も虚になっていく 、怖い 、怖いよ 。
百『 笑って ? 最後くらい … 、笑ってよ … 。 』
瑞『 … うん っっ !( 泣笑 』
らんくんの前では泣かないって決めてたのに 、
かっこいいお婿さんのままでいたかったのにな 。
今は 、昔みたいに普通に笑おう 。
いつも通りに 、幸せそうに 。
百『 … … 。( 笑 』
その日 、らんくん が 空 へ 飛び立った 。
_
瑞『 ~ ♪ ~ ~ ♫♪ 』
瑞『 ぅわ っ !もう行かなきゃ !! 』
瑞『 ぁ っ 、指輪 、つけなきゃ 。 』
らんくんがはめてた指輪 。
いつものように二つ目の指輪を左薬指に通す 。
瑞『 行ってきます 、らんくん 。 』
今 、俺 は 幸せ に 笑えてるよ 。
らんくん 。
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コメント
2件
私がらんらんの立場に立ってたらこんな人生を送りたいな…
人生最後の恋愛はこれがいい