テラーノベル
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今日は滅多に無いオフ。動画撮影や配信も終えて軽く本読みも済んだ。ゆっくり湯船にでも浸かってのんびりするはずだったのに。部屋に鳴り響く着信音。見ると太智からで。
「だいちぃ?どした?」
「佐野さん!」
「ん?」
「出て良かったわ〜吉田さんと呑んでたらこの人潰れてしもて…」
「うわ、珍し…でもなんで俺…?」
「なんか酔った吉田さんがはやと♡はやと♡ってうるさくて!」
「ほんとかよ…!お前自分が面倒なだけだろ!」
「…てへ☆佐野さん今日オフ言うてたし」
「……………とりあえず今から迎えに行くわ」
仁人が酔い潰れたと言うことに軽く焦りはしたものの、明日は仁人も仕事は午後からで太智はそこそこ早かったはずだ。みんなメンバーのスケジュールは大体把握してるから、俺に白羽の矢が立ったのだろう。今日二人は共同チャンネルの撮影をすると言っていたから、撮り終わったあとに呷ったアルコールが普段の疲労から回りすぎたと勝手に推測する。
酔うと俺に甘えてくるあいつに平常心を保てるか不安だ。
「はぁ…まじかよ」
既にメッセージアプリに場所が送られてきていた。どこまでの酔い具合か分からないため、自分の車ではなくタクシーで向かう。店の個室へ案内されるとぽやぽやとした仁人を太智が宥めてた。年下二人のじゃれ合いが可愛くて癒やされる。片方首から下ムキムキだけど。
「太智、仁人、」
「ほら、吉田さん!隼斗迎え来てくれたで!」
「え?はやとぉ?」
「じゃあ後よろしゅう!お会計は吉田さんがしてくれたから帰るだけやで〜」
「はいはい…ほら仁人帰るよ?太智、気をつけて帰れよ〜」
しっかり変装した太智は「二人もな」と足早に個室の扉を潜っていく。相変わらず撤収が早い。
「ほら、仁人立って…」
「はやと、抱っこ」
「だっ…?!じんちゃん、ワガママ言わないの」
「だめ?抱っこ……」
思わず停止する。アルコールのせいで赤く染まった眦。きゅるきゅるの大きな瞳を潤ませ上目遣いで抱っこをせがまれている。これが人の目を気にしなければならない場所であることが悔やまれる。自分の理性を落ち着かせるように肺の中の息を吐き出して、再度息を吸い込んだ。
「立たたないと帰れないでしょ、ね?」
「はやとが抱っこしてくれなきゃ帰んない」
いや、さすがに抱っこは無理だ。
「…………おんぶでいい??」
「おんぶ?ん〜、まぁいいよ、はやとおんぶ!」
「はいはい」
偉そうにしちゃってまぁ。流石に背負えば周りからそこまで顔も見えないし大丈夫だろう。待たせていたタクシーに乗り込むまで背負い、奥に座らせてぐらぐらと揺れる身体に腕を回した。右半身に熱い体温が伝わる。
「俺もはやとの家、帰る」
「………はいはい」
俺の返事に余程ご機嫌なのか仁人は小さく鼻歌を歌いだした。
時折胸元に擦り寄ってくる顔とかギュッと服を握る柔い手に心臓が暴れだしそうになるのを抑えて無心でタクシーのフロントガラス越しに帰路を見詰める。
「ほら着いた。部屋までは歩けそ?」
「うん、歩ける、」
「偉いね〜じんちゃん♡」
部屋まで辿り着き、鍵を開けてよたよたと歩く仁人を押し込める。
「はやと好きぃ〜」
「ぇ、ありがと…?」
「はやとは……?俺のこと、好き…?」
なんこれ、拷問?俺の理性試されてる………?さっきまでへにゃへにゃとしていた仁人は、不安げな表情で大きな瞳を僅かに潤ませ見上げてくる。やばいちょっと理性がぐらついた。俺のバカ。
俺だって仁人に嫌われてないかいつも不安になるし、仁人だって同じかもしれない。
「そんなのじんちゃんが1番知ってるでしょ?俺がメンバーのこと大好きなの!ほら、今日はシャワー後にして寝よ?」
「うん、はやとも…?」
「分かった、分かったから!歯磨きしよ?」
「はぁい」
まじで今日の仁人可愛すぎる。理性を削りながらも、長男モードフル稼働でどうにか寝る準備を終えた。
「はやと、迎えに来てくれてありがと…」
「うん、どういたしまして。じんちゃん素直で偉いでちゅね〜」
「うるさい!寝る!」
「おっと、」
腕を伸ばして飛びついてくる身体を抱き留めて寝室へ向かう。どうせ布団を用意したところで目が覚めれば隣に潜り込んでくるから初めからベッドに転がした。
「わふ、」
「ほらじんちゃん寄った寄った〜」
隣に身体を横たえて背を向ける。もぞもぞと寝心地の良い場所を探す仁人の体温が布団の中で伝わってきた。
昔はべったりくっついても何も言われなかったのに、今は常にカメラを意識しないといけない。周りを気にする仁人はますます神経を過敏にして俺との距離を測っていた。
今の距離感だって心地よいけど、寂しくてたまにあの頃が懐かしく思えたりもしていた矢先。
いきなりこの状況はいささか過剰摂取なのではないでしょうか?
「仁人」
「……」
「ねぇ仁人?仁人さん?!」
「んー」
「じんちゃーん?!」
「んぅ…」
「…じん……」
「ん〜?」
何これ、まじで何。布団に入れば俺の隣に陣取ってくるのはいつものこと。え、仁人寝た?急にめっちゃ反応が薄いけど?いや、起きてるな。それよりも悩むより先にやるべき事はこの体勢をどうにかすることで。この体勢というのは俺の背中にぴったりとくっついて、グリグリと額を押し付けている状況。確かにとっても可愛いし役得よ?それがいつもと違いしがみつく腕の力が少し痛くて、何より押し付けている仁人のもちもち肌の真っ白で綺麗な額が心配だった。
「ん?はやと?どうした〜?」
「どうした?じゃねぇよ…あのね、仁人がくっついてくるのはすっごく可愛いし嬉しいんだよ?でもね、ちょっと離れて欲しいなぁなんて…」
「はぁ?やだ」
「なんで!?俺がくっつくといつも逃げんじゃん!」
「隼斗は嫌?俺にくっつかれるの…」
「もう、じんちゃん今日は甘えんぼさんなの〜?」
しょぼんときゅるきゅるな瞳が眦を伏せて悲しげに見上げられればぎゅんっと俺の心臓を鷲掴みにするのも事実。その所為でさっきから俺の脈拍は異常なまでに乱れていく。
「こんなに力強く抱きつかなくたって…明日も俺は夕方まで仕事休みだし、仁人も出るの昼過ぎでしょ?」
「…………うん、」
「ならそれまでずっと仁人と一緒にいるよ?それともお酒で体調悪いとか?」
「ううん、大丈夫、隼斗こそ、さっきからすっげードクドクしてんね?」
一度緩んだ腕の力が増す。背後から自分とは柔らかさも体温も匂いも違う身体に脈拍は乱れたまま元に戻れないでいる。
「まぁ!それは仕方ないっていうか!それよりも仁人こそ身体熱いよ!まだ、酔ってる?」
「俺はもともとお前に酔ってます〜!だから大丈夫なんだよ!」
「えっ…!?」
肩越しに後ろを振り向けば、可愛らしく頬を染め上げた顔で見つめられ、今度は俺が頬を染める番だった。
「えっと、それって、」
「……………なんだよ」
二人して顔を赤く染めながら見つめ合う。ドクドクと聞こえる心臓の音が俺のか仁人のか判別がつかないくらい身体はぴったりと触れ合っていて、このままくっついて離れなくなってしまえばいいなんて。振り向きざまの肩越しに見える仁人も、俺にメンバー以上の特別な感情を持ってくれているんじゃないかって勘違いを起こしてしまいそう。見つめ合うその視線から感じ取れるのは俺に向ける純粋な好意だけ。それはお互いがまだ大人になりきれていないあの頃から向けられるものとほんとに同じモノなのだろうか?
「ねぇ、はやと、」
これ以上真っ赤になったら逆上せてしまうんじゃないかってくらい白い頬を染めた仁人に袖を引かれる。見つめ合った瞳を不安げに彷徨わせたあと瞼の奥に隠して、小さな頤を上げた。
「……………ッ!もう!」
これは勘違いを起こしたって俺が悪い訳ではない。振り向いて俺より少しだけ小さくて華奢な身体を腕の中に閉じ込める。重ね合わせた唇の温度が、何度も撮影でこなしてきたものとは違い、仁人のものってだけで特別で神聖なものに感じた。このまま融け合ってしまいたい。
「ふは、隼斗、顔必死すぎ!俺のこと、大好きだもんな」
唇を離して視線を合わせた仁人が何時もみたいに笑う。それなのに頬はまだまだ熟れたイチゴみたいに真っ赤で、そのアンバランスさに目眩がした。
「まぁずぅっと前から知ってたけど………ねぇ、もう一回」
上目遣いで再び視線を合せられて告げられた一言。それも酔ってたのは嘘だったのかと疑うほどに確信犯の声で。
俺の悔しい顔が好きな仁人は今、大層ご満悦なことだろう。だって全部その通りで、悔しいのと嬉しいのと恥ずかしいので俺の表情筋はめちゃくちゃだろうから。
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ゆき.
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コメント
1件
読んだよ〜!😳💕 酔った仁人が「抱っこ」ってせがむとことか、隼斗の理性との戦いがたまらなく可愛かった…!「俺はもともとお前に酔ってます」って実質告白じゃん!最後のキスシーン、ドキドキが止まらなかったよ…二人の距離感がじわじわ縮まってく感じがすごく良かったです🫶 続き気になる〜!