こんにちは!この作品は、テノコンのための短編読み切り小説です!ぜひ見ていってください!
____いつからだろう。死ぬことに恐怖を抱かなくなったのは。
「ねぇ?聞いた?未幌さんの話。」
「聞いたよ!未幌さんって、_____
体に薔薇が咲く上に、泣くと花弁が落ちるんでしょ?」
「そうらしいよね、怖いよね~」
蓮「…」
私のこと、何も知らない癖に。
みんな私が怖いんだって。
普通は体から薔薇なんて咲かないし、泣くと水が出るんだって。ちょっとしょっぱいんだって。
私は、みんなの普通を知らない。
ズキン
蓮「ッッッ!!!!」
またかッ!
蓮「せん、せい…!!!!」
「どうしましたか⁉」
蓮「薔薇がッ」
「分かりました。効くかはわかりませんが、痛み止めと花弁を持ってきます。」
蓮「あ、ありがとッございますッ」
私の【奇病】は、小説や漫画で見るような、生易しいものじゃない。
けれど名前は一緒。〝花咲き病〟と〝花落ち病〟。
小説や漫画なら、片思いだとか好きな人だとかで治せるらしい。
でも、私のはそうじゃない。
生まれたときからこの病気たちは発症してて、
それからずっと病院にいるから恋なんて生まれてこのかたしたことない。
というかできない。私を見た男の子なんて逃げてくし。
「ええ、またぁ?未幌さん。気持ちわるぅい」
「しょうがないじゃ~ん!アレやんないと死ぬらしーし~」
「じゃあそのまま死ねばいいのにね~なんで生きてんだろ~!」
__いいなぁ。私も、キラキラした感情が知りたい。
恋をしてみたい。誰かからの愛を感じてみたい。
蓮「ケホッケホッ、…いいなぁ。ボソッ」
どうせ私は死ぬらしい。治療法がないから。
でも__でも、その前に、愛を感じたいと願うのは、罪になるのかな?
蓮「はぁ、」
発作がだんだんひどくなってる気がする。死ぬ方向に向かってる感じがする。
蓮「やだなぁ。」
「ねえねえ!あの男の子の話聞いた⁉」
「聞いたよ!サッカーやってるんでしょ⁉かっこいいよねぇ~!」
新しい男の人?サッカー、嗚呼、あの本に書いてあったスポーツってやつだよね。見たことないしやったこともないけど。
「めちゃくちゃイケメンなんだってー!」
ガラガラ
「えっと、お世話になります。隣の病室になりました、」
「藤幡樹と言います。」
ふじはた、珍しい苗字だな。私が言えたことじゃないんだろうけど。
蓮「初めまして。未幌蓮です。確か、サッカー?をやっていらっしゃるんでしたっけ?」
樹「良く知ってますね!そうなんですよ、練習してたら結構重い怪我しちゃって~!」
蓮「別に、敬語は要りませんよ。面白い競技なんですか?サッカーって」
樹「え?えっと、面白いよ?やったことってある…?」
蓮「あ~、私、小説とかに出てくる奇病ってやつにかかってるの。物心ついた時から、この病室から出たことなんてない。」
樹「じゃあ、今度試合があるらしいんだ!一緒に見ようぜ!」
蓮「え、」
人って、そんな笑顔できるの?明るい笑顔…漫画でしか見たことないような…
樹「俺の部屋、まだテレビ無くてさ~!でも、蓮の部屋あるじゃん?だから一緒に見ようぜ!きっと楽しいし!」
蓮「呼び捨て…」
樹「え⁉嫌だった⁉」
蓮「ううん、されたことなくて。私もサッカー見てみたい。」
樹「ほんとか⁉じゃあ、今6月だろ?7月の真ん中にやるからな!一緒に見よ!約束だぞ!」
約束、
蓮「うん、約束。」
蓮「ケホッ、」
約束したはいいものの、最近症状悪化してるんだよね、
前までこんなペース速くなかったのに。
「未幌さん、検診のお時間ですよ」
蓮「はい、今向かいます。」
向かうとはいっても、おんなじ部屋で外には出ないけど。
「未幌さん、よく聞いてくださいね、未幌さんの体が症状の悪化に追い付いていません。」
蓮「追いついてない?」
「はい。このままですと、二カ月ほどが限界かと。」
蓮「…そう、ですか。」
「ですが、まだ決まったわけではありません。私達と一緒に頑張りましょう!」
頑張るっていっても、どうせ無理に決まってる。治療法無いんでしょ?どうやって治すわけ?
樹「蓮~!検診どうだった~⁉」
蓮「樹!」
ドキ
最近樹と会うと、妙にびっくりする。
蓮「別に、何ともなかったよ。」
樹「ほんと⁉よかった~!」
ズキ
嘘をつくのは何回目だろう。樹の時だけ、胸が痛む。
やだなぁ、死ぬ前に一回、外に出たい。屋上って場所でもいい。外に出てみたい。
蓮「ねぇ?樹、お願いがあるの。」
樹「?どうしたの?俺にできるならいいよ!」
蓮「サッカーの試合を見る前にさ_
私を屋上に連れて行って」
樹「なんだ、それだけでいいの?いいよ!行こう!」
蓮「ありがとう、樹。」
蓮「ゲホッゲホッ、カヒュッ」
「しっかりして下さ~い、大丈夫ですよ!未幌さん、頑張って!」
樹「…蓮?」
蓮、大丈夫じゃないじゃん。こないだの検診は、何ともないって言ってたじゃん。
ただ体に薔薇が咲いて、涙が花弁になって、それがちょっと痛いだけって言ってたじゃん。
屋上に行きたいって。少し外に出てみたいって。一緒にサッカー見ようって。
樹「約束したから、大丈夫だよね…?」
蓮「ハッ、ハッ、ゲホッ、」
立ち上がるのでさえ、しんどくなってきた。サッカーは見れるかな?あと少し。あと少しだけど、やっぱり怖いかも。
樹「蓮~!」
会いたい
樹に会いたい。ただ触れたい。これが、愛なのかな?
蓮「いつき、」
樹「どうしたの?蓮。」
蓮「一緒に屋上行こう?」
樹「別にいいけど…なんで急に?」
蓮「今日、いや、今行かなきゃ、もう行けない気がするの」
歩くのが辛い。でも、何故か昨日ほどじゃ無い。
これぐらいなら、歩ける。
蓮「ここが、屋上…!」
樹「今はちょうどきれいだな!」
これが外か、とってもきれい。窓から見るのとは違う。
グラッ
蓮「…ぁれ?」
樹「なあ蓮!また来ようぜ、え?」
蓮「カヒュッカヒュッ」
樹「蓮⁉取り合えず、先生呼ばなくちゃッ」
蓮「カヒュッいつきッッ、」ヒラヒラ
樹「どうしたのッッ⁉蓮、しっかりッッ」
蓮「いつッき、ゲホッ、だいす、き、ケホッ、連れてきてくれてッカヒュッあり、がとッッガハッ」
樹「俺もッポロ俺も好きッッ初めて会ってからずっとッポロポロ蓮が好きッ」
樹「おれはッ蓮の普通が好きッ!蓮が自分のことを、普通じゃないって思ってもっ!俺は、蓮を全部受け入れるッ!」
蓮「そっか、ゲホッ、そっ、かぁ、」
私は幸せ者だな、
私今、笑えてる?笑えてると思う。
樹はやっぱりすごいなぁ。
蓮「カヒュッ生まれ変わっても、好きで、いてくれる、?ゲホッ、」
樹「やだッ!好きでいる!好きでいるからッそんなこと言わないでッッ」
蓮「樹、ありがと」
あの日、蓮が死んだ日は、蓮の調子が良かったらしい。最後の日に気づける鍵だったらしい。
樹「なんでだよッッ」
樹「なあ蓮、サッカー、見れてねえよッ…」
俺は今、退院して、サッカーを続けている。天国の蓮まで届くように。蓮にサッカーを見てほしいから。
「樹~今日のシュート凄かったな~!」
「退院してからもっと強くなったんじゃねえか~?」
樹「あははっありがとな~」
俺は今日も、蓮のところに通う。
蓮、俺、サッカーで日本代表として出るんだぜ。すげえだろ。
樹「蓮にも、見てほしいなあ。」
『大丈夫だよ!樹。私、樹のサッカー、ずっと見てるよ。』
『愛してる』
樹「蓮?」
振り返っても、蓮はいない。分かりきったことなのに、期待してしまう。
でも俺は、蓮にとって、誇れる人間でありたいから。
樹「行ってくるわ!蓮。」
『行ってらっしゃい!樹!』
『がんばれ、!』