最近は夢を見る。なのに、夢の内容は覚えていない。けど、誰かが叫んで手を伸ばしてるような夢。俺はこの夢を、俺が助けを求めている夢であって欲しいと望んでいた。
「!!〜〜!!」
誰かが叫ぶ。暗闇に紛れる黒い服装をした、一人の少年が。叫び叫び、そして、こちらへ手を伸ばす。助けて。そう言うように。
でも違ったんだ。
「セラー?どうかしたの?いつもより顔が暗いけど」
そう言ったのは、カフェでのんびりとくつろぐ奏斗だった。
「なんでもないよ?」
「嘘こけ。いつもより格段に顔色悪いし、悲しい顔してるよ?」
そんなにも気づかれやすいのか。
「、、、最近夢を見るんだよ。暗闇に紛れるような服装をした、俺よりも小さい小さい少年が、叫びながら手を伸ばすんだ。まるで、助けを求めるように。暗闇では、少年の赤い瞳だけが輝いてる。そんな夢。言ってることまでは覚えてなくて、そんなただの夢」
「ただの夢の割には、落ち込んでるんだね」
「そうなのかな」
「当ててあげようか?セラは嫌な思いになるかもだけど」
「いいよ。言って欲しい」
「多分ね、その夢は。セラの過去の自分だよ。」
「、、、」
「過去のセラは、幸せになる権利なんてない。そう思ってたからこそ、僕たちと逃げることに抵抗があったわけじゃん。そんなセラからの叫びじゃないのかな。例えばね?
『お前には幸せになる権利なんかない!』
そう訴えてるんじゃないのかな」
否定したい。違うんだよって。なのに、事実だと思う心の方が強いから。奏斗の言葉を否定することができない。
「でもね。僕は、違うと思うよ。セラには幸せになる権利があるんだよ。全員にあるんだよ。幸せになる権利は。それを使うか使わないかで幸せかが決まると僕は思う。それにね。セラは、罪を放り投げてるわけでもないし、なんならさ、苦しめられてるんだよ。赤く染まった鎖に繋がれている、可哀想な鳥。
罪を認めて、償おうとしてるなら、幸せになっても良くない?僕ら結局地獄で罪を償うんだから。人生を賭けて、罪を償うんだから。
だから、次その夢見たら言ってやりなよ!」
そう奏斗はニコッと笑った。
その日、俺はまた夢を見た。
「お前がなんでそっちにいる?お前はどうあがいたって奏斗や雲雀、アキラのようになれないんだよ!重ねた罪の数が違いすぎるんだよ!手を見てみろ!こびりついているだろう?赤く見慣れた血が!」
俺が手を伸ばしながら叫ぶ。
「ほら。戻ってこいよ。お前の居場所はここなんだから!!」
彼その言葉は意外にも震えていて、苦しんでいるようだった。
「俺の居場所はそこじゃないよ。奏斗が言ってたよ。お前の居場所はここだって。奏斗だって凪ちゃんだって、雲雀だって、表を堂々と歩けるような人間じゃないんだよ。そんな俺らが、頑張って作った居場所だよ。俺の居場所はここだ。でもお前の居場所だっていつかはそこじゃなくてここになる。表よりかは暗い場所だけどさ、うるさくて、元気で、騒がしいから、楽しいよ。そこにいるよりか明るい場所だから。いつかそこから引っ張り出してくれる人がやってきてくれるから。
楽しみに待っていなよ!!」
俺は満面の笑みでそういった。
すると、俺は、暗闇の中にうっすらと消え、最後にこういった。
「お前が向かう先は地獄だからな」
と。
「そんなの知ってるよ。でも、多分想像よりもずっと騒がしくなるよ」
俺は俺に対して、そう言って目が覚めた。
太陽の光がカーテンから差し込んできた。
「おはよう」
昔の俺に挨拶を一つしてから俺は、立ち上がった。
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