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シーカー達が空を飛ぶ。飛び立った無人の星を、焦りの顔で振り返る。
「どうする!?」
「どうするったって、アレは俺達だけじゃ無理だ! 他と合流しないと!」
発見したドルナ・ノシュワールを討伐するのは無理だと判断したシーカー達は、慌てて星を離れていた。
紐が複雑に絡まったような形状の星には、生物は残っていない。だが、振り返ったシーカーの顔色が変わった。
「チッ、追ってくるぞ!」
「くそっ、総長の所には連れていけねー!」
「あの子もいるし、町も近いからね!」
あの子とは、もちろんアリエッタの事である。ドルナとの戦闘が予想される仕事に、通信の為とはいえ子供を連れてくる。その条件が、総長の護衛だという事は全員理解している。そんな場所に危険因子を持って行くわけにはいかない。
しかも近くの町を破壊されでもしたら、転移の塔も使えなくなるかもしれないのだ。
「総長と連絡して、他の連中と合流出来るようにしてもらえないか?」
「それだ! 次の星でなんとか連絡してみる!」
方針を決めたシーカー達は、目の前に迫った球体の表面に無数の棘状の岩がある星へと向き直り、着地体制に入るのだった。
慌てて飛んで来たシーカー達が地面に降り立ち、一瞬戸惑った後、口を開く。
「ピアーニャちゃん! ウル班が見つけたって!?」
「ピアーニャちゃんいうな! なんなんだドイツもコイツも!」
司令部のある星には、続々とシーカー達が集まってきた。中にはロンデルの班もいる。ウル班からの通信が切れてからは、ネフテリアが他の班に呼びかけて、一旦集まってもらったのだ。
そして帰ってくる度に、ネフテリアの腕の中にいるピアーニャが揶揄われている。
「よし、ウル班以外は揃ったわね。それじゃあこっちからウル班に連絡してみるわ」
総長の代わりにネフテリアが指揮をとっている。ピアーニャは不満そうに抱かれているが、その手際には文句のつけどころが無いので、口を挟めないのだ。
一旦全員に集まってもらったのは、逃げたウル班の場所が特定出来ないからで、シーカー達が集まっている間も、通信が来ないかと待っていた。全部の班がバラバラに散っていたので、一度集めた方が都合が良いというのもあるが。
ピコピコピコ
「おおぅ! ビックリした……」
「ぐえ……」
いざ連絡を…と思って動いた瞬間に、着信音が鳴った。まさかのタイミングに、ネフテリアが驚いてピアーニャを締め上げている。
「! ぴあーにゃ! てりあ、めっ!」
「ああ、ごめんねー。はいどうぞ。で、コールフォンお願いね」
「むー、はい!」
「ちょっとまて、わちはモノじゃない……」
ネフテリアはコールフォンの受信と引き換えに、ピアーニャを手渡した。当然周りからは『プッ…』という、笑いを我慢しようとする音が聞こえてくる。
「こち──」
『ウルだ! 今ノシュワールに追われている! 現在トゲトゲな星にいる! 手短に支持を頼む!』
「っと、分かったわ! ロンデル!」
「向かった先から察するに、おそらくイリクガ星でしょう。隣のウメビス星へ飛んでください、我々もそちらに向かいます!」
『了解……いやちょっと待て! ヤツがどこかへ向かうようだ』
どうやら向こう側で、予想外の事が起こっているようだ。
しばらくはネフテリアの指示で、通信を繋げたまま経緯を見守る事にした。
こちらはウル班のいるイリクガ星。
大きな棘岩から姿を現し、4人のシーカーが空を見上げている。
「どこに向かってるんだ?」
「あっちは……あの星は……ウメビス星か?」
「うーん、少し逸れそう」
遥か遠くに見える∞の形をした星は、ロンデルから言われたウメビス星。シーカー達を追っていたドルナ・ノシュワールは、どこかに向かって進んでいるという。
『では目標を追って星を移動してください。通過する星から行き先を割り出します』
「わかった、じゃあ次はウメビス星だ」
シーカー達は、今度はドルナ・ノシュワールを追って、空へと飛び立った。
司令部に集まったシーカー達が騒然としている頃。アリエッタは紙を折って色を塗るという、いわゆるペーパークラフトを楽しんでいた。
(板とかでも出来るからってやってみたら、やっぱり出来ちゃったよ……ママの能力凄いなぁ)
「えぇ……カミがういてる……」
「なんか可愛いのよ。アリエッタ凄いのよー」
パフィは指で光るそれを突いた。すると、それは光を失い、地面に落ちた。
「あら? ごめんなのよアリエッタ……」
「はいっ、にひひ~」(もうしょうがないなぁ、ぱひー)
アリエッタは落ちたそれをパフィから受け取り、空中に置いた。すると淡く発光し、その場に留まる。
「綺麗ねー。夜に見ると空の星みたいに見えるんじゃない?」
「なぜカミで、このようなサマザマなモノをつくれるのだ……」
作ったのは、星のペーパークラフト。色を塗った効果で、空中に浮かび、発光するようになったのだ。それが7個、それぞれ違う色でアリエッタ達の周囲に浮かんでいる。
アリエッタが触れていない時に動かすと、やはり効果が無くなるようで、パフィが触れた時のように地面に落ちるのだ。
「ぴあーにゃ、ぴあーにゃ」
「お、おう、すごいぞ。すごすぎるぞ」
期待を込めた目で見られ、ピアーニャは思わず首を縦に振った。アリエッタは大満足。
離れた場所から見ているシーカー達の男性陣は、驚きつつも、アリエッタが作る可愛い空間を見て、全力で顔を緩ませていた。
「アンタら、気持ち悪いわよ」
『ひでぇっ!』
そのせいで、女性陣からゴミ虫を見るような目で見られている。が、女性陣もアリエッタとピアーニャを見てクネクネ悶えているので、人の事はあまり言えないようだ。
「……いつでも動けるようにはしておいてくださいよ?」
ロンデルは心配そうにチラ見しているが、情報を元に作戦を立てるまでは気を張り過ぎない事も大事だと、今は放置している。
「次はムウアクリア星……移動速度がかなり速いですね」
「星間移動程じゃないけど、エテナ=ネプトのドルナだから、自由に動けるのかしら?」
これまでは、そのリージョンの生物のドルナではなかった事もあり、原生生物のドルナは初めてである。
「エテナ=ネプトの生物は、星間を走って移動できるからでしょう」
「それにしたって、速すぎよ。飛ぶ速度の半分程じゃない」
「ええ。ノシュワールは小さいながらも、人の走る速度と同じ程度。これは異常です」
「やっぱりスラッタルと同じように、何か別の物になってるのかしら……」
ヨークスフィルンで討伐したドルナ・スラッタルは、樹の体を持っていた。となると、今回のドルナ・ノシュワールも何かに変化しているのでは?と、ネフテリアは考えている。
この辺りの事も、ドルネフィラーに聞いてはいるが……
『いやなんか、他の力が混ざったせいか、どーも夢達を支配出来ないんだよ。そもそも現実の物体と同化だなんて、意味が分からないよ』
と、有力な情報は何も得られなかった。しかも、同じような事例は今の所発生していない。
(もしかしたら、スラッタルが変化したのは、偶然何かをしたから? 魔王ギアンはそういう素振りすらも無かったし。他のドルナ討伐者からの報告も、大きくなったとかいうのは無かったし。わけわかんないわ)
考えている間に、ロンデルが目の前の立体図に印をつけていく。
エテナ=ネプトは上下左右の全方位に向かって広がっている為、塔を中心とした立方体の天体図のようなものが作られている。かなり広い範囲が確認可能で、今回はその範囲内の調査をしていたのだ。
移動しない星は点で記され、移動する星はルートが決まっていれば線で記され、決まっていなければ発見された場所に記され、注意書きが書かれている。
そんな天体図内に、専用のペンで空中に書くように印をつけているので、アリエッタと同じ事をしているように見えるが、密度の薄い水玉のような物体に手を突っ込んで、好きな場所に書いているだけである。
「これはまさか……この方向は!」
印をつけていて何かに気付いたロンデルが、顔色を変えた。
その時、コールフォンからも慌てた声が聞こえてきた。
『おい! 全員気をつけろ!』
「ドルナ・ノシュワールの向かっている方向に、この星があります!」
『!?』
天体図では、ウル班が通った星に印をつけている。その位置から進行方向を割り出していたのだが、その先には司令部のある星と転移の塔のある星が、丁度直線状に並んでいた。
「うわぁ、迎え撃たなきゃダメじゃん」
「全員戦闘準備! アリエッタさん達は進行方向以外の安全な星へ退避!」
『おう!』
「アリエッタ、おいでー。お片付けは後でいいからねー」
この星が危険となれば、保護対象のアリエッタは避難あるのみである。
戦力的にピアーニャにも残ってほしかったが、王女や最年少シーカーであるミューゼもいる手前、凄く言いづらい様子。そもそも今回のピアーニャはアリエッタの護衛である。
「おまえら、きをつけろよ。あのホシからみてるからな」
さらに、離れた場所から総長に見られるという、頑張らなければならない状況になってしまった。情けない所は見せられない。
そんなプレッシャーに顔をしかめるシーカー達に見送られ、アリエッタ、ピアーニャ、ミューゼ、パフィ、ネフテリア、そしてマンドレイクちゃんは、隣の星へと飛んでいった。パフィの悲鳴を残して。
「いやああああああああ!!」
「あいかわらずパフィはうるさ……ん?」
飛んでいる最中、ピアーニャがうるさいパフィを睨もうとして、何かをみつけた。ピアーニャの様子に気付いたアリエッタもその方向を見つめる。
(なんだアレ? リス?)
「ん~? あれはノシュワールか?」
もっとじっくり見ていたかったが、丁度着地前だった為、一旦目の前の星に注意を向けた。
そして着地後、へたり込むパフィを無視して、先程見えたものの方を見た。
「アレがノシュワールよね? 巨大化したって言ってたけど」
「えっと……」
「うむ……」
(おお、流石異世界!)
落ち着いて改めて見た事で、ミューゼ達は目を疑った。事情を知らないアリエッタだけは楽しそうである。
「どうしよっか」
「わちにきかれても……」
茫然とする後ろで、パフィは愛おしそうに地面を抱きしめていた。
「よっしゃ間に合った!」
その頃、ウル班が司令部に到着。小さな星にシーカー全員が揃った。
「いやいやなんだよアレ! おかしいだろ!」
「俺に言われてもしらん!」
「来るぞっ!」
すぐさま全員が臨戦態勢に入る。そして空を見上げた。
そこには、司令部がおかれた小さな星をボールのように前足で掴もうとする、尻尾の大きな巨大生物『ドルナ・ノシュワール』の顔があった。
「ぷ?」
『いやデケェとかそういう問題じゃねえええええ!!』