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「リカちゃんがそんな服着てるの珍しいね。いつもジャージなのに」
「あー、今から街コン行くんですよ」
「街コン?」
「知りません? 街ぐるみで行われる大型の合コンイベントのこと」
「え……行くの?」
「はい」
「誰が?」
「私が」
「なんで?」
「なんでって……。で、出会いを求めて?」
航太は黙る。
しん、と気まずい空気が流れた。
別に悪いことはしていないのに悪いことをしている気になり、リカは思わず目をそらす。
そんな気持ちになる自分もよくわからない。
「行くなよ」
「……なんでですか」
「なんでって、俺がリカちゃんを好きだからに決まってるだろ」
「先輩は私のこと好きかもしれないけど私は――」
言いかけてリカは口ごもる。
よく考えたら航太に告白されてキスまでしたのに、返事はしていないのだった。
「俺のこと好きじゃなくてもいいよ」
「え?」
「でも答えが欲しい。リカちゃんの口から。フッてくれたら潔くあきらめるから」
急に真剣な眼差しにリカは一歩後ずさる。
「わ、わたし……」
航太のことを好きか嫌いかで考えれば好きだ。
けれどそれは恋愛の好きなのかわからない。
キスをしてしまったから意識しているだけなのかもしれない。
どっちつかずの感情はリカの心を揺さぶり続ける。
街コンに行かないのは簡単だ。
でも魚月との約束も大事だと思える。
魚月は親友で高校の時の友達とは違う、本音で語り合える唯一の友達だから。
それを今天秤にかけることはできないと思うのだ。
「リカちゃん」
ずずいと攻め寄られ、リカの心臓はバックンバックンと音を立て始めた。
上手い言葉がでてこない。
かわし方がわからない。
なぜ航太は今返事を求めてくるのか意味が分からない。
こんな誰が来るともわからない場所で、そんな――。