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生徒会長、奥出早紀。今どこにいるんだ。いくら探しても見つからない。授業終わりに毎回あいつのクラスに行っても、いつも席を外している。
「あいつ、本当にどこに行ったんだ」
「生徒会長を探しているのかい?」
「ああ、友人よ、お前は知らないのか?」
「僕が知るはずもない。僕は生徒会長と何の接点もないのだから」
それはそうだった。俺が必死に関わらせないようにしたんだった。嘘までついて頑張った結果がここで仇となるとは。
「もしかしたら俺だけに合わないようにしているのかもしれない。お前が代わりに行ってきてくれないか?」
「でも、どの時間帯でもいないんだろう? 僕だって生徒だからそこまで自由には動けないよ。それは向こうも一緒だろうけどね」
「はあ、打つ手なしか。仕方ない、放課後なら生徒会室にいるだろうから、そこに突撃するしかない」
「果たしてそんな簡単に会えるのかな?」
「なんだよ、じゃあ、少しは手伝ってくれてもいいじゃないか」
「さっきも言ったように接点なしだからね。もう一度言うけど難しいよ」
こいつは本当に力になる気があるのか。せめてどういう風に手伝ってくれるかだけでも教えてくれるとありがたいんだが。
「あいつから話を聞かない限り、この事件はどんどん複雑化していくだけだ」
「いい加減、僕に本当のことを話してくれてもいいんじゃないかい?」
確かにそれはそうかもしれない。というか、もう全て知っているように思えるのだが、あえて俺から喋らせようとしているのか?
「お前の力なら簡単に真実を突き止めることが出来るんじゃないのか。俺から聞かなくとも、俺と生徒会長の関係性なんてもうとっくにお見通しだろ」
「君から聞くことで価値が生まれるんじゃないか。しかも、僕はただの高校生だ。エスパーじゃないんだぞ」
意地でも認めないらしい。
「分かった。生徒会長は……この事件の犯人だ」
「そうかい」
「ほら、知ってたんじゃないか」
「いやいや、驚かなかっただけさ。それとも、大袈裟に驚いたほうが良かったかい?」
「それはそれで嘘くさいからやめてくれ。まあ、そういうことでいいよ」
「君も疑い深い奴だ」
俺は生徒会長との関係と、ゲームのことも全て話すことにした。
「満足したか?」
「まあ、一応はね」
明らかに納得していない顔をしている。
「言っておくが、嘘はついてないからな」
「知っているとも。あの時話してくれたことがおおよそ嘘なのだから、今更嘘をついたところでごまかせないことは、君も十分に分かっているだろうからね」
やっぱり分かってたんじゃねえか。
「ああ、今思いだすと恥ずかしいよ。あんな嘘でお前を騙せるはずがなかったのに」
「そもそも君がつく嘘は誰も騙すことができないから安心してくれ」
「それは逆に安心できないんだが」
絶対ばかにしている。こんな状況でも友人は余裕ぶって、俺をばかにするんだ。そういえば、生徒会長と友人はどこか似ているような気がする。同じ天才はやっぱり似るのだろうか。
「生徒会長もきっと、君の嘘を簡単に見破るさ」
「なあ、思ったんだが、接点はないとしても、何かしら情報は持ってるんじゃないのか。生徒会長、奥出早紀の素性を」
「うーん、知っていると言っても、奥出家は色々と厳しいってことぐらいかな。家柄に関しての情報は持ち合わせていても、彼女自身の情報はこれっぽっちも持っていない」
「そうか。どこか似ていると思ったんだがな」
「それは雰囲気の話かい?」
「いや、言動や行動が」
てっきりまた親戚か何かかと思っていた。世間は狭いと言うが、そこまであからさまに狭くもないということか。
「そんなの偶然に過ぎないよ。僕と君だって同じ意見を持っていることだってあるし、もちろんそれは、他の誰かでも当てはまるものだ」
「それもそうだな。確かにそうだ。じゃあ、俺はお前になりえるのか?」
「それはどうだろうね。元は違うから」
「じゃあ、近づくことは出来るか?」
「どうしたんだい急に。そんな必死になられても困るよ。君だって気づいているだろうけど、人間は全く同じにはなれない。それは双子でも三つ子でも何つ子でも一緒さ」
友人の『優しさ』は大体顔に出ている。何があろうとも笑顔で俺を諭してくるのだ。友人が怒っているところなど見たことがないし見たくもない。そんな時が来れば、きっと世界の終わりがやってくるだろう。
「ああ、少しムキになっていたみたいだ。もう忘れるよ」
「それがいい。僕は誰かになりたいと思ったことはないけれど、やっぱり誰かに憧れることはあってね。でも結局、僕は僕以上にも以下にもなれなかったんだ」
「以下になる必要はないんじゃないか? 不利になるだけだろ」
「それは、望んだものにしか分からないよ。多分、君には一生分からないことさ」
なんかムカつく言い方だ。ばかにされているのとはまた違う、なんとも言えない気持ちだ。
貝塚拓斗の知らないところで、また悪意は動き出していた。
「会長、お昼一緒にどうですか」
「一年生が毎時間、三年生に会いに来るものじゃないわよ」
「仕方ないじゃないですか、生徒会の仕事は山積みなんですから」
拓斗の代わりに奥出に会っていたのは生徒会の後輩だった。拓斗が謹慎処分を受けて以来、こうして休み時間のたびに三年生の教室に現れている。
「今回は仕事関連ではなく、ただ昼食を誘っているだけに見えるのだけれど」
「もちろん、仕事の話もありますよ。あ、会長が嫌なのであれば遠慮いたしますが」
「嫌ではないわ。仕方ないわね、生徒会室に行きましょうか」
その後、教室を訪れた拓斗は当然会えずじまいで、肩を落として戻っていくのだった。
放課後になり、俺はすぐに三年生の全教室を確認した。
「どこにもいない、やっぱり生徒会室か」
「やあ、拓斗。熱心に何か探しているようだね」
「知ってるだろ、生徒会長を探してるんだよ」
「そういえば、職員室で見かけたような気がするなあ」
おお、たまには役に立つ。
「そうか、それじゃ早速行ってみるよ」
「ああ、頑張ってくれ」
やけにあっさりしているな。この後部活があるのだろうか。
「いや、待て。なんで引き留めておいてくれなかったんだよ」
「すまない、忘れていたんだ。あと少し、用事を思い出してね」
「はあ、分かった分かった。今回は見逃してやるから、部活でも何でも行って来いよ」
「本当に、すまないね」
俺たちは逆方向に歩き出した。職員室に着いたものの、生徒会長の姿は見えない。
「貝塚、お前ここで何してるんだ」
「あ、いや、少し用事が……」
よりにもよって担任と出くわすなんてツイてない。
「また問題を起こしたんじゃないだろうな。本当、いい加減に真面目に勉強したらどうだ。先生の授業なんていつも寝てばかりじゃないか」
そりゃそうだ。大嫌いな数学の授業、俺を犯人扱いして勝手に見損なっている教師、何が楽しくて真面目になれと。
「黙ってないで何とか言ったらどうなんだ」
「……俺、今忙しいんで」
「何なんだその態度は! お前どうせまたくだらないことしてるんだろ。あの生意気な奴と一緒にな」
友人は関係ないだろ。どこまで腐った教師なんだ。少なくともお前よりかは頼りになるんだぞ、俺の友人をばかにして痛い目見るのはお前のほうなんだからな。
「その目は何だ」
「俺は何も悪いことはしていない。それだけです」
「ちょっと来い、分かるまで叩き込んでやる」
睨んだから何だというんだ。このパワハラ教師が。俺は無理やり生徒指導室に連れていかれ、一時間ほど説教を受ける羽目になったのだった。