ちわーっす
へびまるです
wesvanって書いてありますが、逆でも大丈夫です。
悪魔の羽に心臓を掴まれ、勢いのままに書いた小説でございます。
検索避け諦めました。
→彼とか貴方とか使って誤魔化してます。
→ところどころ誤魔化し切れずに名前出てきます。
vanとwesしか出てきません。
では、どうぞ。
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van.side
「明日の夜、デート行きません?」
それだけを言って、彼は返事も聞かずに立ち去った。
だが、それはこの誘いに私が必ず乗ることを知っているからこその行いであろう。
それだけ長い付き合いだ。
今日、空を飛ぶ能力を市長にもらった、と自慢してきた彼のことだ。
生身の飛行デートと洒落込むつもりなのは目に見えている。
次の日の夜、やはり彼は自慢の翼で私の家まで迎えに来てくれた。
何故か犯罪用カバンを持っている。
「なんだ?その鞄は。能力を犯罪に使うのは…」
「ふふ、内緒。犯罪はしないから安心して、楽しみにしててよ」
「わかった」
彼は八重歯を覗かせてにやっと笑った。
そして、私に手を差し伸べる。
尖った爪を持つ、強そうな手を。
「さ、いきましょ」
特に準備はいらないだろうと思い、何をするともなく彼を待っていた私はすぐにその手を取った。
腕が引っ張られ、彼に抱きかかえられる。
俗に言う、お姫様抱っこ、だ。
この抱き方は距離が近いから好きだ。
遠くに星が見えた。
私が彼の首に手を回したことを確認すると、彼は飛び立った。
「高いところに行くから、寒かったらごめん」
「ウェスがあったかいから大丈夫」
急に、彼のことが酷く遠いと感じた。
昔はいつも私の背を見ていた彼は、いつの間にか強い力を、仲間を、かっこいい羽を、強靭な肉体を、持っている。
彼は星だと思った。
ここは高度が高く、星がよく見える。
でも、こんなに高いのに距離は遠いまま。
遥か彼方で光を放つ、満点の星空を眺めていた。
すると突然彼が口を開いた。
「ねぇヴァンさん。私ね、見せたい景色があるんです」
彼はそう言って私を片手で抱え直し、空いたもう片方の手で鞄から何かを取り出した。
ひとつひとつの動作がゆったりと流れるようで美しく、つい見惚れてしまう。
ボッと音がして取り出した何かに火が付く。
炎を出すのも、恐らく彼の能力の一つだろう。
そして、蝋燭のように火が付いたそれを、空に放り投げた。
小さな火は弧を描いて街の方へと吸い込まれていく。
数秒後。
大きな音がして眼下に光の花が咲いた。
予想外の轟音に驚き、一瞬思考が止まってしまう。
花火だった。
それは、私たち2人を色とりどりに照らし、やがて小さな火花となって消えていく。
彼は続けて何度も花火玉を投げた。
人生は花火のようだ、という話を聞いたことがある。
自分ではない誰かによって打ち上げられ、意味もわからずに咲き、空に音を響かせて輝き、それぞれ異なる色を放ち、人々の目に焼きついて離れなくて、でも、やがて、消えるから。
それは人生だ、と。
まさに彼の生きる道はこれなのだろう。
きっとこんな人生が正解だと言われるのだろう。
私は、不正解な私は、彼の隣を歩けるだろうか。
つん、と鼻が痛み、目頭が熱くなる。
花火が滲んでいく。
気付かれないようにと顔を背け、泣き声を出さないように我慢していたが、つい鼻を啜る音が漏れてしまった。
「ッうぉ、ど、ヴァンさん?どしたの?」
「ん゛、ぐすっ……ゔれじなぎ」
「うれ?…嬉し泣きね、もぉ、驚かせないでくださいってば。ほら、折角の花火が見れないですよ」
「ゔ〜〜、…」
「私はここにいます。どこにも行きません」
あんなに遠くにいると思っていた貴方。
貴方は間違いなく私の隣にいて、闇を纏ってなお、光を放っている。
花火のように燦然と輝いている。
その姿は、私の脳裏に焼きついて、消そうにも消せない。
目を閉じても溢れてくる。
貴方は言った。
「私が、どこまでも、着いて行くんですから」
例えば、
貴方がもし、不幸を呼ぶ悪魔なら、私はそれを喜んで受け入れるだろう。
もし吸血鬼なら、喜んで血を差し出すし、
貴方が、神を名乗る悪役でも、世界を揺るがすウイルスでも、喜んで献身する。
でも、きっとそれは、貴方も同じなのでしょう?
貴方の首へ回した腕に、力が籠る。
「ありがとう」
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no.side
赤い彼は花火だ。彼にはどこか、光がある。
他を牽引する、力の籠った背中。火球のような勢いと明るさと鮮やかさ。
その光は悪魔になっても変わらずに放たれている。
しかし、花火は昼には打ち上がらないから。
彼の全てを包み込む、濃い闇があってこそ輝くものが、花火と言えるのだろう。
対する黒い彼は、夜の暗闇。
暗い過去を持ち、愛を知らぬまま街に来た、闇の底に佇むような人。
ただ暗い闇にいるだけではなく、強さ、包容力、得体の知れない魅力を持つ人。
それが他を惹きつけ、夢中にさせる。
彼の手中の輝きが光れば光るほど、黒く濃く美しく、魅力が増していくのだ。
夜が暗ければ暗いほど、花火は映え、
花火が眩ければ眩いほどに闇夜は濃くなっていく。
fin.
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