テラーノベル
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「……ところで、アナランハドはどこだ?」
アマリジョがそう聞く。
「今はブラックといっしょに学校の敷地探検に行ってるはずだよ?君も行く?」
アマリジョは少し考えた後
「……命令なら」
と答えたのでMr.すまないは頭を抱えてしまった。
「ねぇ、アマリジョ」
そう呼ばれてアマリジョは少し肩を強張らせた。今目の前に居るのは“あの方”では無い。それでも、自分を呼ぶその声が“あの方”によく似ていて____
「____ジョ、アマリジョ!」
ハッ
「……Mr.すまない……?」
「どうしたの?大丈夫?」
「あ、ああ……大丈夫だ、すまない……」
(……何故だ……昔は恐ろしいと思っていたあの声も、今では恐ろしく無いのに……)
Mr.すまないの方をチラリと見る。
(……この男……“あの方”を恐ろしいと思っていたころと同じ感覚がする……)
「アマリジョ、大丈夫」
頭を撫でる。優しく、包み込むように。
(……この手……知ってる……“あの方”が撫でてくれた時と……同じ手だ……)
「大丈夫、大丈夫。ここには痛い事も怖い事もする人は居ないからね。自由で良いんだ」
「……はい……」
アマリジョはその優しい声にまた“あの方”と同じ感覚を憶えながら頷いた。
「アマリジョに頼めば、作ってくれると思う。料理好きそうだったから」
「そうですか。でしたら今度頼んでみます」
アナランハドとブラックは食事を終え、次の場所に向かった。
「ここは別館図書室です。第一校舎にも図書館はありますが普段あまり使わない書類などはこちらに保管されています。こちらにある書類も校舎内の図書館にある物と同様、手続きをすれば借りられます」
「……本……」
アナランハドはそっと本に触れる。
「本に触れるのは……いつぶりだろうな……」
そう呟くアナランハドを見てブラックはまた違和感を覚えた。
(……アナランハドは、ドール化される前は一体……何処でどんな生活を送っていたのでしょうか……?)
もちろんそんな事は口が裂けても聞いてはいけない事くらい分かっているが。
ガチャ
「やっぱりここに居た!」
その声に振り向くとMr.すまないとアマリジョが立っていた。
「もう随分と仲良くなったようだね?」
と言ってクスクスと笑うMr.すまないを見てアナランハドはふと見覚えを感じた。
『そこなかなか仲良しじゃないか』
(ああ、そうか……“あの方”に、とても似ているんだ……)
もう何年も見ていない姿。何年も聞いていないあの優しげな笑い声。恐ろしい人だったが同時にとても優しい人だった。
「どうしたの?」
Mr.すまないがそう優しく問う。その声ですら“あの方”にそっくりで思わず涙がこぼれそうになる。
「え、え!?ちょっ、どうしたの!?」
アタフタしている姿もやはり似ている。
「いえ……」
(ただ、どうしても……)
((優しかった頃の“あの方”に
そっくりで……))
コメント
1件
すまない先生が”あの方”に似ている……?一体どういう事なんだろう… ドールになる前はどんな生活をしていたのかもすごく気になる所ですけど… 彼らの事が本当に気になります!!