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あれからも俺たちは変わらない日々を過ごした
毎朝ジントの見よう見真似で神に祈りを捧げて
傷はすっかり癒え、薪割りも出来る
掃除や庭の手入れをして過ごす
ここから出て行こう、なんて気持ちは起きなくなって
ジントが赦す限り、ここに居ようと思っていた
ある日
唇を噛んでしまい、チクりとした痛さと血で濡れる感覚があった
独特の味がする
ジントがそれに気付き
じっと見つめたかと思うと
俺の唇を舐めた
「キスなら普通にしてくれていいのに」
なんて軽口が出て自分でも驚いたが
「そんなんじゃありません!」
俺以上に自分でも信じられないと言わんばかりのジントは慌てた様子で走って離れて行った
あの日以来、うなされているのか隣の部屋から叫ぶような声と荒い息づかいが聞こえる時がある
ジントの部屋に入ることは叶わず、何も出来ずただ聞いているしかない
この時間が何より辛かった
やっぱり、俺はここに居てはいけないのだろうか
何かが起こりそうな胸のざわめきを感じていた
翌日、青白い顔をしたジントは、いつもとかわりなく柔らかく微笑むのだ
その微笑みが痛かった
いよいよ俺と反するようにジントの顔色が悪くなってきて、座っているのがやっとの様子だった
生きている人間とは思えなかった
「ジント、体調が…?」
「…大丈夫です…」
案の定、実際には無理をしているのを隠せていないのに平気な顔を繕って言う
「…ジントの苦しみを、俺は引き取れないかな?」
気付いたら俺の目から一粒涙がこぼれた
「…お願い、俺の前から居なくならないで、これ以上、大切な人を、失いたくない…」
いくつもいくつも流れるのは、小さな頃から我慢していた感情そのものだった
ジントが消えてしまいそうで怖かった
「…僕にも、懺悔をさせてくれますか」
俺を見ていたジントはゆっくりと懺悔室に向かった
「あなたがここに倒れていた日、僕の命はもう尽きようとしていた」
「僕は…いわゆる吸血鬼と呼ばれる者で、人や動物の血を食事としています」
「僕も、例に漏れず…人の血をもらって生きながらえました」
「限界が近付く度、街に出ては…隠れるように、ここに戻って」
「ある時、…もう、やめようと思って」
「隠れなくては、隠さなければいけないようなことをするのを」
「ある程度の年齢までは普通の食事でもなんとか生きることは出来るのですが、その後は血を摂らなければ、死ぬだけです」
「でも倒れたあなたを見て、最期に救える命ならば救いたいと思った」
「救えるのは、僕しかいないから」
「だから、あなたの血を舐めたんです」
「あれは僕の生きたいという本能だったのか、今まで、怖くて見てこなかった、殺してしまった人もいるかもしれない僕の、罪滅ぼしなのか」
「…あなたを、救いたいと思ったのか」
「聞いてくださってありがとうございます。…僕は、そろそろ逝きます」
「…僕には、あなたの方がよっぽど天使だ」
「心がきれいで」
「…人を手にかけた、僕は…あなたにふさわしくありません」
神様
居るんだろ
これ以上、俺の大事な人を奪わないで
…奪われてたまるか
コメント
2件

えええまさかの展開すぎます... じんとクンにそんな事実があるとは思ってなくてビックリしました😶お願いだからいなくなるのだけはやめてほしいなぁぁ🥲