テラーノベル
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年齢操作だったり、変な時空です。
🩵nk×Kr💛 💙Kn×Kr💛要素を多く含みます。
それでも良い方はスクロール⤵︎
ぜひ、楽しんでってください〜!
「大きくなったら、おれとけっこんして!」
至極、真面目な告白。でも、6歳の小学一年生に言われても困っちゃうよね。
「…う〜ん、大きくなったらね…?でも、俺今中2だよ?君が成人したら、俺25歳なんだけど…」
お花をたくさん摘んで、花束にしたものをグイグイ足の傍に押し付けられる。キラキラと嬉しげにこちらを見る彼の目は純粋で、俺の心は折れそうだ。俺もまだ小さな頃から、ずっと色んな人に頼られるように生きてきた。まぁ、そういうところが裏目に出ているんだろうけど…。こういう状況に慣れているからか、こういう時の対処法はよおく分かっている。
「じゃあ、結婚しよう?なかむくんが、大人になる時まで覚えてたらね」
「うん!!やくそく!」
彼の前にそっと小指を差し出せばにこにこしながら指を絡めた。どうせすぐ忘れるだろう。幼い頃の思い出なんて、自分のものでさえ何も覚えてない。…俺も昔、他の人にこんなこと言ってたのかなぁ。
「じゃあ、俺もう行かなくちゃ」
そう言ってひらひらと手を振った後に足を動かすも、俺の足に引っ付いてきて叶わない。
さて困ったなと、年上であるにも関わらず苦笑いを浮かべる。彼も側から見ても分かる通りかなり力がつよい。足もあまり動かせないし、このままだと体勢がおかしくなってしまいそうだ。
どうしたものかと考えつつ、身体を捻って手を広げてあげると、すかさず抱きつかれたので軽々と彼を持ち上げて肩のところまで持ってくる。小学一年生の頃、近所のお兄さんに愛の告白をしたなんて、そんなのすぐに忘れて思い出話になるだけだろう。実際、こんな約束をして叶うような話は漫画や小説の中にしかないのだ。全部夢物語。
まぁ、夢見がちな彼にとっては違うのかもしれないが。
「なんで俺と結婚したいの?」
「ん?やさしくて、おおきくて、だいすきだから!」
なんの迷いもない、純粋な声が降り注ぐ。俺は笑ってそっかと応えた。嘘だとしても、嬉しいことには変わりない。
幼い子供は大人みたいなロマンチックな言葉を言わない。全部本心で、薄っぺらいくさい台詞なんて存在しない。だから、信用はできるものだけれど…。
ふわふわと揺れる頭は可愛らしいもので、自然と指通りのいい髪を撫でつけた。肩に抱きつきながら同じように俺の腰あたりの布をぎゅっと握りしめる手が微笑ましい。
この子が、俺に告白したことをいつまで覚えていてくれるかな。
10年後。
この10年間、何も変わらずにまた春を向かえた。滞ることなく流れる桜を見ながら、温かい風が吹いて頬を掠めていく。全ての始まりとも言えるこの季節は、どうしても好きなれない。出会いと別れを象徴するこの時期ほど嫌いだなと思うところはないだろう。
見慣れてしまったこの街も全く変わることなく、あの公園も、母校の中学校だって同じまま。変わってしまったものと言えば自分の年ぐらいだろう。
ふらりと立ち寄った公園のベンチに腰かけて満開を迎えている桃色の桜を見上げる。暖かな春の日差しがしんしんと肌にしみてそっと目を瞑った。
「久しぶりですね、きりやんさん」
あの日と同じように、間延びした幼い声がした。柔らかで優しい声に耳を疑うも、この優しくて甘い声音を聞いたことは一度もないはずなのに直感的に分かってしまう。
変わらず頭の中に残る彼の記憶は綺麗なまま何一つ変わっていなかった。唯一変わった箇所を挙げるとすれば……何故だろうか、声変わりしたことによってかなり声が低くなってしまったことだけだ。ふるりと目を開けて目の前に立っている彼と目を合わせる。
座っているのも影響しているのだろうが目線が高くなったことに驚きが隠せない。…それでも、あの時から変わらないふわりとした髪の毛は何一つ変わっていなくて少しだけ安心した。
「…大きくなったね〜、なかむくん。」
「わ、名前覚えてるんですね。じゃ、結婚しましょ?きりやんさん」
俺の話に愛おしそうに目を細めた後、自信満々といった表情で間髪入れずに告げてくる。さすがに俺は苦笑いを浮かべた。俺の言っている意味を何一つ分かっていないらしい。
この調子では、出会った頃の話だって忘れてくれているだろうに……。そう高を括っていたのだが、忘れられていたのは俺だけだったらしい。幼い頃の何気ない記憶を覚えられているとなると俺が変に勘ぐってしまいそうだが、それはきっと彼の性格が故だろう。
彼は昔から、人懐っこく誰とでも仲良くなれるような子だった。年の割によく出来ていて、柔くなんでもこなせるような人間だったのを今でも覚えている。
……そんな彼が、俺みたいな人付き合いが苦手な人間に好意を寄せていただなんて、きっと何か裏があるに違いないと勘ぐってしまう。
でも、彼は俺の考えなんて露知らず、ただ純粋な気持ちで俺のことが好きらしい。その好きは、俺が彼に抱いている好きとは違う。
俺は彼のことを愛しているけれど、彼は俺のことを家族や友人に向けるような感情で見ている面しかない気がする。近所に住んでいた彼が知らぬ間にここまで成長していたことに微笑ましさを感じるくらい。恋愛感情はまったくとしてないのだ。
「…10年前の約束とか、覚えてることあるんだね〜…尊敬しちゃうわ」
「覚えてるに決まってるじゃないですか!一日たりとも忘れたことないですよ」
ふふんっと胸を張ると誇らしげにドヤ顔までしてきた。これが本場のどや顔か、成程これは少しうざい。
「……でも、約束守るつもりないでしょ」
俺が言いたいことなどお見通しなのだろう、余裕そうに笑みをこぼす彼を見ていると何も言えなくなる。自分を色恋沙汰に疎い自覚はあるのだが、彼はそれ以上にこういった恋愛面に関して敏感な方であるような気がする。年下の子供にからかわれているという苛立ちは不思議と感じられないのが逆に恐怖でもある。
10年も前のことなんて、何となくしか覚えていないに決まっているだろう。ぼんやりと記憶に霧がかっていて告白されたことしか覚えていない。ま、正直昔を思ってもあまり変わらないし。
「約束守るつもりしかないですよ。まだ俺成人してないので残りの2年間はいちゃラブお付き合いしましょうね。」
「えぇ…?いやだよ…、なに?いちゃラブお付き合いって。」
足元を見ながら断った俺の隣で腰を掛け、にこにこと機嫌良さそうにほほ笑む。このベンチは彼の特等席だから邪魔者がいない今でなければ座ることが出来ない、何てことまで考えていそうだ。
……10年経っても彼の性格は変わっていないらしい。
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