テラーノベル
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打ち合わせ前 〇〇side
楽屋。
最終回の台本がテーブルに置かれている。
〇〇 「……最終回か」
壁ドン。お姫様抱っこ。キスシーン。
物語の集大成。
静かに台本を閉じる。
〇〇 「全部、演技」
北斗とは不仲。それは事実。
でも芝居だけは、ずっと全力でぶつかってきた。
コンコン、とノック。
マネージャー 「入るぞ」
〇〇 「どーぞ」
マネージャー 「顔、固すぎ」
〇〇 「別に」
マネージャー 「嘘つけ。緊張してんだろ」
〇〇 「してない!」
マネージャー 「最終回だぞ?そりゃ多少はあるだろ」
〇〇 「……最後までちゃんとやりたいだけ」
マネージャー 「北斗と?」
〇〇 「ライバルだから」
マネージャー 「ほんとそれだけか?」
〇〇 「それだけ」
きっぱり。
マネージャー 「ま、いいけどな。中途半端だけはやめろよ」
〇〇 「するわけない」
マネージャー 「よし。行くぞ」
〇〇 「うん!!」
――――――――――
打ち合わせ前 北斗side
別の楽屋。
北斗はキスシーンのページで指を止める。
北斗 「……」
仕事。
ただの仕事。
そう言い聞かせる。
〇〇は何とも思っていない。
戦友。ライバル。
それ以上ではない。
北斗 「最後くらい、完璧に」
深呼吸して立ち上がる。
――――――――――
【打ち合わせ】
会議室。
監督 「最終回、細かく詰める」
プロデューサー 「SNSも盛り上がってる。不仲コンビの結末、頼むぞ」
〇〇と北斗は向かい合う。
視線は交わらない。
監督 「まず壁ドン」
助監督 「北斗の感情が爆発する場面」
北斗 「はい」
監督 「〇〇は揺れながら受け止める」
〇〇 「このセリフ、間を少し長くしてもいいですか?」
監督 「理由は?」
〇〇 「迷いを強く出したい」
監督 「いいな。それでいこう」
北斗 「じゃあ俺、声トーン落とします」
監督 「うん、それだ」
自然と噛み合う二人。
不仲なのに、芝居は合う。
監督 「次、キス」
空気がわずかに張る。
助監督 「北斗が近づいて、〇〇が目を伏せる」
〇〇 「目は半分閉じる感じで?」
監督 「そう」
北斗 「わかりました」
監督 「緊張してるか?」
北斗 「してないです」
〇〇 「してる顔笑笑」
北斗 「してない」
小さく笑いが起きる。
監督 「お姫様抱っこは廊下までワンカット。北斗、持てるな?」
北斗 「持てます」
〇〇 「落としたら終わりだからな?」
北斗 「重くなければ笑」
〇〇 「は?」
スタッフが笑う。
監督 「よし。これでいこう。悔い残すな」
――――――――――
打ち合わせ後 〇〇side
廊下を歩く。
マネージャー 「どうだった?」
〇〇 「普通」
マネージャー 「キスシーンあるけど平気か?」
〇〇 「仕事」
マネージャー 「北斗と最後だぞ」
〇〇 「ライバルとしてはね」
少し立ち止まる。
〇〇 「負けたくないだけ」
マネージャー 「お前ほんとそればっかだな」
〇〇 「それでここまで来たし」
マネージャー 「まあな。でも最後なんだから、ちゃんとぶつかってこい」
〇〇 「言われなくても」
マネージャー 「よし。その顔なら大丈夫だ」
〇〇は小さく笑う。
感情はシンプル。
北斗は越えたい相手。
――――――――――
打ち合わせ後 北斗side
エレベーター前。
監督 「お前ら、不仲なのに一番合うな」
北斗 「事実なんで」
監督 「信頼してるだろ?」
北斗 「芝居は」
監督 「それで十分だ」
扉が閉まる。
一人になる。
北斗 「十分、か」
胸の奥は全然足りない。
でもそれは言えない。
〇〇にとってはただのライバル。
北斗 「最後、完璧にやる」
気持ちを押し込める。
物語は終わる。
自分の片想いは、まだ終われないまま。