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キッカケは、いつだって単純で。それに付きまとう結果も何時もバカバカしく救いようが無いのである。
これは今は亡き短命種の人生から得た経験であり、自戒である。
『あ!また吸ってる!体に悪いって言ったでしょう?2人してそんな隅っこで隠れるように吸うだなんて。ダメな事だってわかってるんじゃないの?』
X年前。亡所にて。
鏡流と応星は肺を汚し寿命を縮めることで有名な“煙草”を吸っては歓談していた。そこに現れた人影。人と言うべきなのだろうか、正確には孤族、その名を“白珠”。どうやら嗅覚が優れているらしい。そんな言葉で茶化しては頬を膨らませ、「笑い事じゃないですよ」と、この短き命を持つ者だろうと関係なく身を心配する。実に健気で、̶愛̶ら̶し̶い̶。̶
『ちょっと、2人とも聞いてる?私は真剣なの。煙草は体に悪いって何回も言ってるでしょ?寿命を縮めるって。短命種どころか“超”短命種になっちゃうよ!いいの!?あ、ちなみに“良い”なんて言わせないから。私は良くないの!!!』
注意されたふたりは笑みを零し、火を消す。毎日という程でもないが、お決まりの流れだ。
この穏やかな空気に毒されて、永遠に続くと錯覚し。まるで目を潰された獣の様だ。
『何故、生き返らせた。』
“生き返らせた”?冗談にも程がある。あれは生き返らせたなんてものではない。一生罪を背負い、代価を払う、その時まで。永遠と諦めることなぞない。これは当てつけではない。これは行き場の無い感情の発散ではない。これは払うべき代価を得るまで終わらない復讐の物語、行動だ。
再び、煙草を手にした時は身体は変貌し復讐への道へと踏み出した時すぐだった。理由は特にない。これで寿命が縮むものならやってみろ、なんて自暴自棄になり流れるように手に取ったものだった。そんな些細な理由でこの習慣は彼女のお陰でいつの間にか離れていた事も忘れて。
『ねぇ、煙くてゲームに集中出来ないから離れたところで吸ってくれる?』
次第に、あの集まりで隣を歩くようになってすぐ言われた言葉だ。鼻は衰えたのか。それのも慣れなのか。暗闇に街の光がぽつぽつとついては小雨が降る少し寒い夜の中、火をつけた。
赤い瞳に火が映る。見慣れた光景。だが、今回は違った。
あの姿が、見えたのだ。脳裏によぎった、と言った方が正しいかもしれない。だがそんなことはどうだっていい。確かに居て、こちらを見て、『身体に悪いよ』と口を動かしていた。
「…チッ」
─── 某所にて。
1人、煙を巻く者が。その儚い記憶によって消えた瞬間である。