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「っ、やっぱり……きちゃった……」右京は部屋の片隅で膝を抱えていた。額には汗、頬はほんのり赤く、目の奥にいつもの穏やかさと違う不安が揺れている。
周期は遅れることもあるのに、今回に限って予兆なしで来たヒート。
「右京……大丈夫か?」
静かに扉が開いて、龍水が姿を現す。
その声を聞くだけで、右京の身体はびくんと震えた。
「龍水……来ないで……僕、今は……」
右京はそう言って視線を伏せたが、龍水はゆっくりとしゃがみこみ、同じ目線に降りてきた。
「無理をするな。俺は、貴様の頼れるαだ。違うか?」
その声音は、いつものように余裕があって、でも優しさが滲んでいた。
⸻
龍水は右京の頬にそっと触れた。熱を持った肌は、まるで火照った花のように柔らかく、指先を吸い寄せるようだった。
「苦しいか?」
「……少しだけ。でも、きみの顔を見たら……ほっとして、余計に……」
右京はそう呟きながら、目尻に涙をにじませる。
「右京……泣いてるのか?」
「わかんない……僕、わがままだ。きみのこと、頼ってばっかりで……」
⸻
龍水はそっと右京の身体を抱きしめる。
触れるだけで、右京の呼吸は乱れ、肩がふるふると揺れた。
「俺は……貴様が望むことなら、何だってしてやりたい」
「龍水……」
「だから、安心して委ねろ。俺が、貴様を包んでやろう」
そのまま、静かに唇が重なった。
発情期の熱にうかされた右京の身体を、龍水は焦らず、優しくあやすように触れ、確かめていった。
右京の細い手が龍水の背にまわり、少しだけ力強く握る。
「……きみがいてくれて、よかった」
「可愛いぞ、右京。もっと……欲しくなる」
⸻
夜は、ただ甘く、静かに深まっていった。
焦らず、優しく、愛を注ぐように。
右京はただ、龍水に身を任せ、心ごと包まれていた。
【後日談】
数日後、スイカが部屋の前で言う。
「右京ー! 元気になったー? あ、なんか部屋からいい匂いしてたんだよ!」
「……っ、き、気のせいだよ……」
右京は顔を真っ赤にして、扉の陰に隠れた。
背後から龍水が笑いを堪えながら、
「ハッハー、香水のせいだ。違うか?」
と耳元で囁いた。