テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
※転生現パロ
※イチとウロロが双子、反世界が二人の一回り上の兄
※近親相姦
今日は日曜日、要するに休日だったので朝から一人気ままに買い物に出掛けた。適当な服屋に入って一人ゲームセンターを彷徨いて、帰り際に見かけたキッチンカーで普段なら買わないであろう、甘ったるいクリームが乗ったなんとかフラペチーノ、みたいなのを買った。もしかしたら今日はこれくらいの甘い物を飲まないとやってられない様な出来事が起こるのではという予感があったのかもしれない。喉にまで残る甘いそれを飲みながら家に帰って、一応ただいまとだけ言いにリビングに入ったら、自分より一回り上の兄がウロロの双子の弟を押し倒していた。うわぁ修羅場、と思いながら最後の一口を喉に流し込んだ。ただゴミ箱はリビングを突っ切らねばならず、どうしたもんかねと思いながら突っ立っていると。
「ウロロ」
兄がひっくい声で名前を呼んだ。名前だけだが意味は分かる。邪魔するなよ、だ。もしくは邪魔をしたら殺す、かもしれない。そんな兄の下で覆い被さられ、手首を押さえ付けられている弟、もといイチは青い顔で、泣きそうにその整った顔を歪めていた。こんな顔するんだなぁと呑気に思った。
ウロロの家族は双子の弟であるイチと、それからもう一人、一回り年上の兄の二人だ。9歳の頃までは両親も祖父母も居たが、三人とも事故で逝ってしまった。以来兄に男手一つで育てられている。変わった境遇ではあるが決して不幸では無い。とんでもなく優秀で人間味のあまり無い兄と、クソ餓鬼の弟──弟はウロロを底意地が悪い兄だと呼んでいる──と人間として、家族として暮らすのにはもう慣れていた。おかしな言い方をしたのは、ウロロには所謂前世というものがあるからだ。
それを思い出したのは6歳の頃、朝目が覚めてふと、そういえば俺は前は人間では無かったなぁと、隣で眠る弟の間抜け面を見ながら思い出したのだ。ウロロは人間では無く魔法で、数千年、もしくは数万年生きていたかもしれなかった。それが隣の、今は双子の弟になっている餓鬼に習得され。まぁ色々な事が、それはもう沢山起きて、最後は。と、一回り上の兄を思い浮かべた。共に潰えて死んだからか、おかしな縁が付いたのかもしれない。こうして双子として、兄弟として、人間に生まれ変わってしまう程度のおかしな縁が。前を思い出しているのはウロロだけで無く兄もだった様で、顔を見るなり察したのだろう、特に何かを言われた事は無いが、この時からあまり弟扱いはされなくなった。互いに魔法だったな、と思う程度で。
長い長い間魔法として生きた記憶と、十数年人間として生きて来た記憶。それらが混ざり合う、なんて事も無く、魔法の無い平和な今の世で、人間として生きていく上での倫理観程度は身に付けているつもりだった。それは恐らく兄もだろうが、結局、それはそれとして、というやつなんだろう。思えばこの男は前でもイチに執着していた。それもそうかとは思う。長い間孤独だった魔法に、真っ直ぐにぶつかって、共に潰えてくれる相手。そりゃあ執着もする。仕方ない話だ。
人間には三大禁忌というものがあるらしい。諸説あるが、殺人、食人、そして近親相姦。人間は血の繋がった者に対してそういう欲求は抱かない様出来ているらしいが、それが機能していないのはやっぱり元々人では無かったからだろうか。それとも単純に執着の大きさだろうか。魔法として生きて来た期間と人として生きて来た期間。長いのは当然前者で。思い出せば混ざらずとも引っ張られるに決まっていた。
「うろろ、」
考えに浸っていると、また名前を呼ばれた。今度は兄では無くイチの声だった。これも意味は分かる。助けを求めているのだ。恐怖で揺れている声だった。顔を見るとさっきよりも青ざめて、目には涙が溜まっている。そりゃ怖いだろう、血の繋がった兄にそういった意図で組み敷かれているのだから。とんでもない恐怖に決まっている。ところでこの弟の目には自分はどう映っているんだろうか。普通ならあり得ない光景に呆然と立ち尽くしている様に見えてるんだろうか。違うんだよなぁとウロロは思わず笑いそうになった。やっぱり自分は元々人では無いものだから。前の事を思い出してしまっているものだから。イチのあの顔を見ても、声を聞いても、弟を助けなければなんて少しも思わなかった。前はそんな顔見なかったが、なかなかに良い顔をする、とだけ、思った。
ウロロはいつもみたいにリビングに足を踏み入れて、ゴミ箱に空になったカップを捨てて。
「なぁ、反世界・・・。なんか手伝う事はあるか?」
ウロロの言葉にイチは目を見開いて体をぎく、と固めた。兄は──反世界は少しだけ驚いた様に瞬きをして、すぐに普段の表情に戻って。
「俺の部屋に拘束具がある」
「うわぁ。持って来りゃ良いんだな?」
「あぁ」
「……なん、で」
呆然とした、ショックを受けた様な、様なというか実際受けてるんだろうな、みたいな声がする。イチの目から涙が落ちているのが見えて、ウロロはそこでようやく、口角を上げた。
「悪いな弟」
近付いて、頰を撫でる。理解出来ないものに対峙した恐怖で固まる姿は、生まれて初めて愛おしいと思えた。ウロロは鼻歌を歌いながら反世界の部屋へ向かう。
人としての道理も倫理も禁忌も関係無い。お天道様や神が見ている訳でもあるまいし。バレなければどうという事は無い。
自分も、兄も。人でなかったものが、人として生きられる訳が無かったのだ。
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!